※陽介女体化


セーターからちらちら覗く華奢な指を見て一言。
「…萌え袖?」
我ながらになんて頭の弱そうな発言だろうか。言霊遣い級の伝達力と生き字引級の語彙力をどこにやったのかと聞きたいくらいに。
「は?」
「そそるね、それ」
「…リアルに変態っぽいぞお前」
「陽介にならいいよ」
「いや良くねえよ!」
ごもっともで。しかし男という生き物は単純なもので、先程から見えたり見えなかったりの繰り返しがいやに心をくすぐってくる。こういうのを多分浪漫っていうんだろうなあ、なんて呆けていたら陽介は呆れを交えた視線でこちらを見る。うん、ちょっと困ってるようなその顔もいいね可愛い。
「今すぐ鏡で自分の顔を見ることを俺はおすすめするぜ」
「ん、大体予想はつく」
「あっそう…」
だらしないくらい緩んでいるだろう表情筋はそのままに、若干引き気味な陽介が逃げないようにと保険をかけてその華奢な手のひらを掴む。片手であっさりと覆い尽くせてしまうほど小さい、いかにも女らしいといった手はテレビの中ではそこに鋭利な刃物を滑らし軽やかに振りかざす。そのアンバランスさが追い討ちをかけるかのごとく俺に陽介を意識させた。事件が最初に起こった当時は痛々しげな血豆も多数存在していた。それを勲章だといって笑って見せた陽介は、今思えばとても不安定だったのかもしれない。
耐えることに慣れてしまった彼女の傷を見つけ出すのには、随分と時間がかかった。
「綺麗になくなってる。よかった」
「なんでお前が安心すんだよ」
「嫁入り前の大事な体に傷つけたらいかんでしょ」
「いや考え過ぎだろ」
「でも大丈夫、傷物になっても俺がちゃんと責任とってお嫁に貰うから」
「いやいやいや、話かみ合ってなくね?」
「結構オールマイティにそつなくこなせるよ?お徳だと思う」
「自分で言っちゃうんだー…」
「いらない?」
最後の一押しとばかりに言ってみれば、それはずるいと返されてしまった。卑怯なのは重々承知の上だけど、生憎とどんなことにも全力投球な思考なもので、手に入るんだったら遠慮なんてしない。そこら辺そろそろ気づいてもらえてると思っていたんだけど、やっぱり大事な事は伝えなくちゃ意味がないかと改めて思う。
「…でもお高いんでしょう?」
「今なら陽介限定でタダ」
「月の無い夜が怖いなこりゃ…」
「それなら一生一緒にいればいいと思うよ」
「そうする」
「うん、それがいいよ」


(:20111111)
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