疑問系でもなければはっきりとした肯定でもない言葉を吐き出した。最後の方にしたがって小さく小さくなっていく音をはたして相手は受け取れたのだろうか。そこまで考えたけど、別に聞かれなくても一向に構わない内容だったため気にしないことにしよう。問題は、こんな姿を無様に晒しているという、絶対に消えてはくれない事実だ。
夜はあまり、好きではない。この空気も、何もかもが全部。自分のテリトリーに奴がずかずかと足を踏み入れるのは決まってこの時だから。いっそ死んでくれとまでも願った、奴のおかげで俺のアイデンティティーはずたぼろだ。
「それは愚問だな、折原」
「俺はお前が今も呼吸をしていること自体が、煩わしくて仕方がないよ九十九屋」
「人間だからな、そりゃ生命活動を維持するためには息だってするさ」
自分は人間だと平然といいのける姿がどうしても気に食わない。あの化け物とは違う次元での嫌悪感は終息という言葉を知らない。目の前に立つ奴がしてきたことをもし人間のジャンルに収めて考えるなら、とっくの昔に人類はまた違う生き物へと名前を変えていただろう。それほどまでに、九十九屋真一は奇怪な存在である。ヒトだなんて、絶対に認めてなんかやるものか。
「追いかけっこは得意じゃないんだがな」
「言ってろ。それに俺は、お前を追ってるつもりもなければお前に追われてるつもりもない」
「じゃあさしずめかくれんぼ、といったところか」
「俺とお前を同一の枠の中で考えるな、気色悪い」
本望だ。こんな得体の知れない未確認生命体とも等しい不可解な存在と自分を同じように考えられるなど、まるでお前も化け物だとでも言われているみたいではないか、気分が悪い。
「いっそ死んでくれ」
死に晒せ、化け物。


(:20110515)
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