※同い年パロ
「なんか久しぶりに可哀想な子を見たかも」
「臨也さんちょっと黙っててくれませんか?」
人が気にしていることをあっけらかんと言ってみせるこの悪魔の正体は間違いなく自分の同級生であり、さらに付け加えればご近所さんでもある男だった。お互いに運命を感じていたと思っていた長い(と言ってもまだほんの三ヶ月ほど)恋愛がたった今終わりを告げられた。唐突すぎて驚きの声さえあげられない自分に、先程まで彼女だった人間はなんと言ったか、皆さんはご想像がつくだろうか。
『だって飽きちゃったんだもん』
それだけ。
「ちくしょおおおおおおお」
「潔いよね、その子もその子で」
「ええ、あまりの良さに目玉が飛び出るくらいでした…」
「やめてよ気持ち悪い」
傷心した友人に慰めのなの字もない同級生をじとりと睨み付けてはみるが、あっさりと受け流されてしまった。余計に虚しくなる、今日はもう帰りたい帰って泣いてしまいたい。女々しいのは流石に自分でもどうかと思うので、人前で泣くことだけは我慢してやろう、これはなけなしのプライドを総動員してのことだ。
「で、どうするの?」
「もう一生恋なんてしねえ…」
「なんかそれ、通算で5回くらい聞いたことがあるんだけど俺の聞き間違いかな?」
「ほっといてください…」
「だからやめとけって言ったのに、君って本当残念だねえ」
「臨也さんしゃらっぷ!!」
追い討ちをかけるように次から次へと放たれる言葉の矢がぐさぐさと心臓を直撃して、そろそろ内側から爆発するんじゃないかってぐらいには痛い。確かに自分でも懲りないなあと反省はしているが、なにもそこまで言わなくてもいいだろう、いや忠告を無視して付き合いを始めたのは自分の方だから自分に否があるのだが。
ちなみに臨也さんの忠告というのは、付き合っていた彼女のこれまでの恋愛経験による推測だ。具体的には、彼女は交際三ヶ月を過ぎた途端急に熱が冷め、新しい相手へと乗り移るというもので、つまり簡潔に言えば男をとっかえひっかえやらかしているというものだ。見事に大当たりだった。
「ここで悔しいとかむかつくとか言わない辺り、少なくとも正臣くんは男だよ、うん」
「…慰めてくれてるんすか…」
「まあ馬鹿だけど」
「一言!!あんた一言余計!!」
毒舌にまみれた発言にも多少は愛があると信じたい、でなければこの人と接しているうちに心が折れて砕けてしまう。残念ながらそこまでいくともう修復は不可能だ。
「まあ、頑張れ正臣くん。俺は懲りずにアタックしては玉砕するそんな正臣くんを応援してる」
「一回は成功するとか思ってくれないんですか」
「え、うん」
「即答とかもう泣いていいですか」
前言撤回。愛なんて、これっぽっちもあるはずがなかった。
(:20110509)