夕日の燃えるているような赤に車内は照らされてる。休日の帰宅ラッシュか、家族連れやカップルが多かった先程までの風景は、いつの間にか窓の向こう側だけを透かして見せているだけだった。だんだん見えてきた海の端っこ。特に大きな荷物もなにも持たないまま飛び出してきたけれど、いざここまで来るとどうしようかと今更になって悩んだ。
「臨也」
隣から落ちてきた言葉の破片を受け取って振り向く。
「なあに、シズちゃん」
「これからどうすんだ」
「んー……特に考えてない」
「そうか」
「うん」
眩しいほどに染め上げられた金髪は日に照らされきらきらと輝いて幻想的。電車に揺らていたせいで眠いのか、少しだけうつらうつらと船を漕ぎ始めている姿に苦笑する。今日は思えば朝から特に何も考えず好きなように外をほっつき歩いていた。まずは池袋を探索し、次に小腹を空かせた俺たちは電車を乗り継いで巷で話題のランチを食べに。私服だったからなのかは分からないがなんだか年がちょっとだけ若返ったようで、食べた料理はいつもと違う美味しさだったのを覚えている。そこからまた食後の運動と外へ繰り出す。今まで見たことのなかった風景の数々に目を輝かせていた数時間前が、まるで数年前の自分たちに戻ったかのようだった。
「シズちゃん」
「んー」
「今日、楽しかったね」
「おう」
「晴れてよかったね」
「おう」
「ご飯、美味しかった?」
「まあまあ」
「なにそれ」
「手前の次の次くらいには」
「……褒めてんの?デレてんの?」
「素直になってんだよ」
「そっか」
急に凭れ掛かってきた彼の体温になんだか自分まで眠りを誘われて、ゆっくりと美しい風景を目蓋の裏に焼き付けて閉じた。
「これからもよろしく、シズちゃん」
「ああ」
彼と出会って9年後のある日の話だった。


(:20120210 加筆修正)
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