▼2014.01.12(Sun) あつすぎる(セトハイ)
噛み千切られたかのような痛みに顔を歪めれば、荒い吐息が首筋にかかった。
冷たい室内に響く呼吸音はどちらも忙しなく、艶に染まっていた。繋がれた下半身の熱はいまだに冷めなくずくりと疼く。粟立つ背中には全身を抱きすくめるように回された手が怪しい動きを見せている。それさえも情事の熱を煽ってくるようで、もう何もかもから目を背けてしまいたかった。
鈍い痛みはまだ痛覚を揺らしていた。首筋を何かが伝っていった感じがする。噛み付かれた痕から零れ落ちた自分の血液か目の前で獣の瞳をぎらつかせる奴の唾液か、それともその両方か。薄暗い部屋では例え掬って見たとしてもよく分からない。
ただ、奴の口元を艶めかしくてらつかせるものが自分の体液かと思うと、浅ましくも酷く興奮した。
きゅっと、下腹部の筋肉が収縮する。はっきりと形の分かるそれは脈を打ち先程よりも明らかに肥大した。情けなく上擦った声をあげれば、獲物を得た野獣のような勢いでもって襲い掛かられる。
「せ、とっ……!」
宥めるような、もっとと強請るような、どっちつかずな声音で呼ぶのは身体を揺さぶってくる相手の名。必死な思いで右手を伸ばせば手首を掴まれ、そのまま距離をこれでもかとつめられる。より深く入り込んだセトの熱に堪えきれず涙が溢れた。
甲高い喘ぎ声が自分のものだというのは信じたくない事実で、耳を塞いで逃げたくとも迫りくる快感がそれを許さない。ぐしゃぐしゃになっているであろう顔面も、もはや気にしていられるほど余裕はない。絶頂がすぐ近くで燻っている。
吐き出したいと暴れ狂う欲の終わりが見えなくて、荒々しく塞がれた唇の柔らかさに身を委ねた。

自分をおかしくするこの男の熱だけは、いつまで経っても好きにはなれない。

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