自分の恋人がいつもそっけないと

かまってもらいたくなる

だから、

追っかけてみた。(byロニ)



【追いかけっこ】



時は昼。
カイル達は家(デュナミス孤児院)へ帰ってきていた。

孤児院はジューダスには居心地が良いものではなく、外でヤギ達と戯れていた。

…半ば呆けているようにも見えるが。


「ジューダス」
「…なんだロニか。何の用だ」


振り返る事なく話を進めさせるジューダス。
そんなジューダスの態度はいつものことなのか、ロニは気にすることなくある提案をした。


「追いかけっこしようぜ」
「………は?」


何故この年で20オーバーしているお前などと追いかけっこなぞせねばならんのだ、と顔に明記したような表情でロニに向いた。


「暇なら孤児院の子供と遊べばいいだろう」
「俺とお前だけがいいんだ」


にっ、と笑うロニ。

ジューダスは一気に呆れ顔になり、再びヤギに向く。


「ジューダス?」
「やらん。走りたいならランニングでもしてこい」
「いいじゃねぇか。どうせお前もここに居るだけなんだろ?」
「やらん」


とにかく「やらん」の一点張りなジューダスに業を煮やしたのか、ロニは勝手に進めていくことにした。


「俺が30数えるまでに逃げろよー」
「な…、やらないと…「夕暮れまでに俺に捕まったら好きなことをさせろ!よし。いーち、にーい」
「ちょっ…!?」


さーん


「ぼ…、僕はやらな…っ」


ジューダス少し慌て気味にロニを見る。しかしロニは止まらない。

ごーぉ


「……っιι」


ジューダス少し顔色が悪くなってきた。

ろーく


「ロ…ロニ…?ι」


ロニは止まらない。

はーち

もうすぐ3分の1が数え終わる。
ジューダスが声をかけてもロニは止まらない。

ふとロニが数えながら、にや、笑った。
何か企んでいる、と感じたジューダスは…


「――――ッッ!!ιι」


逃げ出した。





「よっし。ジューダスはどこかなっと」


我ながら名演技+と自画自賛しつつ、辺りを見回す。

範囲を指定し忘れたので、ラグナ遺跡までは逃げてしまえる。

日没まで…三時間程度だろうか。


「さぁーて、気張って行きますかぁ!」



その頃のジューダス。


「な…っ、ななな、なんだったんだあの笑みは…」


いつも自分に悪ふざけするときの悪戯気な笑顔ではなく、まさに襲いかかる(※夜にする事)ときの笑顔だった。

つまり、


「つ…捕まったらヤられる…っ」


こんなのどかなところで。

それは何が何でも嫌だ。

ジューダスはラグナ遺跡に逃げることにした。



ロニSide.


「ん゛―、村には居ねぇのかな…」


追いかけっこ開始からかなり経った。
村を回りきったロニは、ラグナ遺跡へと向かうところだった。


「…遺跡は見つかりやすいからな…こっそり行くか」



そしてラグナ遺跡。ジューダスSide.


「………」


ここに居る間気を張り詰めていたせいか…ヤケに眠い。
目をこすりながら、辺りを見回すジューダス。


…………しかし物音ひとつしない。
ジューダスはあたりに罠を張り、自分も隠れて寝ることにした。

…これではかくれんぼだな、と内心軽く笑いつつ。



ロニSide.


(居ねえなぁ…どこだ)


丁寧に木の隙間などを調べながら、音にも耳を澄ましてさがす。

なんせあのジューダスだ。
ここから逃げる音を聞き逃したら、夕暮れまでに見つけることはできない。


「…………」


がさがさとさがし続け、もう残るは最深部のみ。
リアラと出会ったところだけ…になる。

「………」

ガサゴソとしげみなどを探す。
居ない。

どこだよ…と軽く困惑しながら、巨大レンズのあった場所へ足を運ぶと…

「………発見」

寝こけているジューダスを見つけた。

しかしロニの声に目を覚ましたらしく、ロニを見るなり顔色を蒼白にし、

ロニと木の間をかいくぐって逃げ出した。

「あっ!待てこのやろっ!」



ラグナ遺跡を走り回る2人。

土地勘はロニの方が強いが、ジューダスがしかけた罠に何度かひっかかり、間は縮まらず広がらず。


「ジューダスー!!!!」
「くっ…、来るなっ!!ιι」


猛ダッシュで逃げるジューダスと全速力で追いかけるロニ。
速さが異常であるため、はたから見たら追いかけっこに見えない。

そんな異様な追いかけっこも終盤に入った。


「………っ、」


ジューダスが道を間違え、逃げ道をロニが塞いだ。

ジューダスは後ずさるが、もう後ろがない。


「く…来るな」
「近付かねえとタッチできねーだろうが」


夕暮れはかなり近付いているのに…

負けてしまうのか、とジューダスは諦めた。





「……で、何をしたいんだお前は」
「へっへー♪よくぞ聞いてくれました♪」


言葉通り、嬉しそうな顔をして言うロニ。

ジューダスをびし!と指し、


「俺にキスしろ!」


と一言。
…ジューダスはすっころんだ。


「そ…そんなことのために…追いかけっこを…?」
「そんなことのためにだ。
さv」
「い…っ、嫌だ」
「なんだよ。俺が嫌いになったか?」
「そっ…そんなことなど…っ」


…あるはずないだろう、と顔を赤くしてぼそぼそと呟くジューダス。


「いーじゃねえか。ほら、早くv」


んーvと言いながらキスをねだる男を目の前に、ジューダスは心底殴りとばしてやりたかったが…やめて、軽く触れるだけのキスをした。


「…なんだよ、愛が籠もってねえなぁ…」
「し…したものはしたんだ。帰るぞ」


ぷい、と顔を逸らし、立ち上がろうとするジューダス。しかしロニはジューダスを抱きしめ、その場に留める。

ジューダスは顔を向けることなく、ロニに訊ねる。


「…なんだ」
「俺からお返しv」
「んっ…」


顔を向けさせられたかと思うと、いきなりロニの唇が重なる。

しかも、すぐには解放してはくれない。

「んっ…んん、」

舌が侵入してくる。

ジューダスは反抗することもできず、そのままされるがままになっていた。

…やがて2人が離れ、ジューダスは顔を真っ赤にして俯いた。

「さv帰るぞジューダス」
「…先に帰れ」
「やだね。一緒に帰る」
「………馬鹿者」

バカで悪かったな、と言いつつジューダスの頬へキスするロニ。

今度こそ殴られたのは…

言うまでもないだろうか。




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あとがき