#3:…なんつーの?幸せみたいな、な?
 
「へェ…、こりゃまた立派な部屋で。さっすが幕府の御犬様は待遇が俺等とは違ェな。」
真弓を抱えたままホテルのフロントに向かって部屋を用意してもらった。
まぁ、その、…不審がられたのは認める。
ぐったり意識を無くした女を連れた男が突然現れたら、そりゃ俺だって通報するわ。
とりあえず真弓が持ってた身分証で真選組だと分からせて、ツケもそこの副長宛でっつー事で今に至る。
どういう気遣いなのか、やたらでけェ部屋でベッドはキングサイズがひとつ。
今はそのベッドに真弓を降ろして着物を緩めてやったところだ。
(何か犯罪くせェな、この状況。)
さすがに全部脱がすわけにもいかず、袷だけ大きめに開く。
汗ばんだ首筋とか鎖骨とか、触りてェ舐めてェと思うのは不可抗力。
…さすがに、やらねェけどさァ。
最初は病院に運ぼうと思ったが、真弓がぶっ倒れるまで体調を隠していた理由があるなら、俺が勝手に連れていく訳にはいかなかった。
部屋のタオルを水で濡らし真弓の額に置く。

「…ちょっと、携帯借りるな?」
以前に聞いた話だと、すぐ消えたり事件に突進する真弓を管理する為に、真選組から携帯が支給されたらしい。
それすら無頓着な真弓の携帯はロックも掛かってなければ、電話しか使った形跡が無い。
電話帳も登録件数が一桁とかあまりにシンプルだ。
俺はその中から目当ての番号に掛ける。

『…もしもし、真弓?お前から掛けてくるなんて珍しいじゃねェか。…万事屋と何かあったか?』
「おー、今その万事屋とホテルにいンだよ、これが。」
『ッ!?テメ、万事屋!何のつもりだ…!!』
オイオイ、真弓に対してと俺に対してじゃ声色全然違うじゃねェか!
「残念ながら想像してるような事にはなってねェよ。…あ?なァ、今"真弓から掛けてくるの珍しい"っつったか?今日一度掛けただろ?」
『はァ!?喧嘩売ってンのかテメェ…!真弓がお前といて違う奴に意識が向くとでも思うか?』
……なるほど。
電話を口実に席を立たなきゃいけねーくらい、あの時が限界だったわけか。
俺がもっとしっかり真弓を見てやれてれば、倒れずに済んだのかもな。
「あー…、真弓を今日一日預かるって話だが無理になった。ちょっとコイツ熱出しちまってっから、治るまで預からせてもらうわ。つー訳で明日は仕事させねェから、隊務欠席で頼まァ。」
『何勝手に決めてンだコラ!!……。…はぁ、…ああもう分かった。真弓の体調に関してはこっちにも思うとこがあるしな。…つーか、真弓を休ませンのは真弓の為か?それとも、テメェの為か?』
「……何言ってンの、"お前等の為"だろ?預かったものは預かった時の状態で返すのがマナーだろが。」
『……チッ、真弓は本当にめんどくせェ男に惚れちまったもんだな。』
溜め息を吐く土方には、本当の事は結局筒抜けなんだと思う。
聞くと、真弓の体調に関しては予兆はあったらしい。
激務から突然解放されて緊張の糸が切れて疲労が表に出たんじゃねェかって事だった。
用件を伝え終わって電話を切ろうとしたら、それを土方が制した。
『…なァ。もし、もし真弓が真選組を辞めたらテメェは、』
「あのさァ、勝手に真弓の大切にしてるもの奪ってくれンなよ。らしくねェこと言ってっと、マジに借りパクすっからな?」
『…………明日、そっちに迎え寄越すからきっちり返してもらう。』
「は?」
『真弓の隊士手帳にだけGPSが付いてンだよ。警察のものをそう簡単に盗れると思うなよ、万事屋ァ…!』
オイオイ、マジですか。
溺愛してンだか、ストーカーなんだかもう分かンねェよそれェェェ!!
特に返事も返さず通話を切った。
ま、これでアイツ等も無駄に心配せずに済むだろう。

「…ぎんときさん?」
「お、…起きたか。ったく、心配掛けやがって。ほれ、とりあえず水飲め。熱も出てっから脱水症状も、」
「ぎ、銀時さんが、私を心配ッ!?嬉しい!もうこの夢が覚めなきゃ良いのに…!!」
「コラ聞けェェェ!!俺の存在を勝手に夢にすンな!!…真弓はいつも無茶ばっかすっから銀さんの心臓に悪ィんだけど?銀さん死んだら責任取れよ?」
「……っ、」
「ま、それは置いといて。お前ンとこの副長には話通してあるから、今日はゆっくり休む事に専念しろ。明日になったら過保護な隊士どもが迎えに来てくれるってよ。」
真弓がゆっくりと体を起こすと、緩めた着物からさらに肌がのぞく。
これに気付かねェし興味もねェってフリは、割りとキツイ。
「必要な物があれば今のうちに言っとけ、揃えてやっから。もしかしたら風邪かもしンねーけど、まだ熱だけだし水分摂って寝たら治らァ。病気っつーよりは疲労だしな。」
「銀時さん。」
「ん?」
「銀時さん。」
「おぅ、…だから何?」
「…必要なもの言えって言ったから…。銀時さん、やだ、帰らないで…。」
何なのこの子!!
いつからそんな可愛いこと言えるようになったの!?
人間、熱出したり苦しい時ってなァ、弱気になりやすい。
真弓も例外じゃねェって事か。
「バカヤロー、帰らねェよ。ちゃんと看病しねーと切腹強要させられそうだかンな。」
「…ごめんなさい。ご迷惑を、」
「ンなの今に始まった事じゃねェだろうが。つーかお前、自分が行きたい所じゃなくて俺に合わせたろ?食欲無ェくせに食べ放題とか。お前の休みなんだから俺なんか気にせず買い物でも映画でも行きゃ良かったのに。…いや、そもそも普通に休めよ。」
そう言うと、真弓は熱でぼんやりしてるのか力無く笑う。
「休んでなんかいられないですよ。銀時さんが居てくれるだけで最高のお休みですもん。あと手合わせもして頂けたし!やっぱり私、まだまだなんだなぁ…。銀時さん補充出来たから、これで当分休み無しでも頑張れます!!」
真弓が退院してから、実は休み無しだったのは何となく知っていた。
土方が言っていた"思うとこがある"はこれの事だろう。
ゴリラ達は認めなかったみてェだが、自分を責めるような辛そうな真弓を見るのが忍びなくて軽めの仕事から回していたらしい。

「…なァ、真弓。俺が居て満足なら、それはどっか出掛けず何もしねェだらだらするだけの休みでもアリなのか?」
「大アリですよ!!銀時さんと一緒に居られる以上に満足な事なんて無いですもん!!全力でだらだらします!!」
「ちょ、全力でだらだらっておかしくない!!??」
コイツの愚直さは本当にすげェな。
感心するっつーか、照れるっつーか…、嬉しくないわけがねェ。
「分かった。よし、お前これから週一で万事屋に来い。ただし、勤務途中じゃなくてオフの日な?」
「えっ、お休みの日だったら万事屋行っても良いんですか?銀時さん、昔、万事屋内はビザが無いと入れないって…。」
「お、おぉ…言ったっけ…?まァ、あれだ、銀さんが休みの日の正しい休み方ってのを教えてやる。…だから少なくとも働き詰めはやめろ、特別に遊んでやっから。」
「もっ、弄ぶなんて銀時さんったら!!キャッ、堪らないです!!鼻血出そう!!」
あー、そういやコイツ馬鹿だったわ。
こっちは最初から弄びたいの我慢してやってンの!
男所帯に慣れすぎて警戒心ってのが旅に出たまま戻って来ないらしい。
そりゃ確かにこんな猪闘牛娘、普通の男じゃ組み敷けねーか。
「…お望みなら、真弓がどろどろに溶けちまうくれェ愛してやりますけどォ?」
「! へ?え、あ、…えっと。っ、」
言ったら言ったで、すぐ動揺するし、つーか肩触っただけで失神すンだから、マジ生殺しだわコレ。
着物の袖口で顔を隠した真弓の困ったように下がった眉だけが見える。
きっとその顔は真っ赤だろうとすぐに想像が着いた。
こうなっちまうと俺のドSスイッチが入る。
いやぁ、頭じゃ分かってンだよォ??
絶対に真弓に手は出さねェ、…少なくとも曖昧にしてある今の関係のままでは、絶対。
でも可愛らしい反応されちまうと虐めたくなるのはどうしようもねェわ。
「何、銀さんとやらしー事してンのでも想像した?」
ベッドに手を着いて真弓に顔を近付けると、スプリングがギシリと鳴った。
自分の吐いた言葉の熱とこの状況を改めて認識するとヤベェ、…止めらンねェかも。
「っゃ、…ち、ちが…。あっ、どうしよう…、銀時さん、我慢出来なかった…。と、止めらんない…。」
「は!?…え、どうした真弓?」
ただならぬ様子の真弓に焦って、顔を覆っている手を退かしてその表情を確認する。
「……………おま、」
「ど、どうしよ、銀時さ…。」
「……とりあえず鼻にティッシュ突っ込んどけ!!」
ムードも何もあったもんじゃねーな、オイ。
確かに真弓の顔は赤かった、…鼻血で。

「はぁ…。」
「ご、ごめんなさい!引かないで銀時さん!ちょっと情熱が溢れちゃっただけなんです!!」
これは呆れた溜め息なんかじゃなくて安堵の息だ。
詰まるところ、俺は真弓の鼻血に助けられた訳だ。
(もうこれ次は我慢してやれねェかもな…。)
真弓にボックスティッシュを投げてやると素直に鼻に詰め始めた。
「み、見ないでくらひゃい…。」
「人並みに恥ずかしがるんじゃありませーん。普段のお前の言動の方がよっぽど恥ずかしいかンな!?」
うー…と不服そうに唸るも、真弓は鼻血を止めるのが先だと思ったのか反論はしてこなかった。
俺は洗面所まで行って、タオルを微温めのお湯に浸して真弓に差し出した。
「ほれ、手も血塗れだぞ。あと浴衣持って来てやるから着替えろ。あ、その前に汗拭くタオルが要ンのか…。」
「…ふふっ。」
濡らしたタオルで手を拭きながら真弓が笑う。
「銀時さん、お母さんみたい。」
「! 俺はそれじゃ納得できねェけどな。」
それじゃお父さん?、と聞かれてしまえば何だか俺ばっかり真弓の事が好きみてェで釈然としねェ。
(まぁ、全部俺が悪いんですけどォ?)
真弓に対して気のないフリを続けて、好きだとバラしてからもそういう態度は敢えて取ってこなかった。
だから、真弓が想像してる好きと、俺が持ってる本当の好きには、かなりでけェ誤差がある。
その誤差を俺は自身を制止する為の理由にしてる訳だが。
…簡単に言えば、俺の好きは正しく伝わってねェし、今は伝える時期でもねェなってこと。
真弓が生きてて笑ってンなら充分幸せですよ、銀さんは。

「浴衣ここに置くぞ?…後ろ向いててやっから着替え終わったら言えよ。」
「……っと、…はい。」
見てなくても衣擦れの音とか、真弓の熱を孕んだ呼吸の音が耳に毒だ。
見えねェ分、想像しちまうわマジで。
「こ、こうですか?」
不安そうな真弓の声を合図に振り返ると、…うん?浴衣ってこんな堅苦しい服だったか??
「おま、全体的に締めすぎ!!もっと適当に着るもんなの、コレは!」
ただでさえしんどい体で流石にこれはねーよ、可哀想だわ真弓が!
いや、これ着たの本人だけどォォォ!!
どうにも分かってねェ真弓の浴衣に手を伸ばす。
「つーかオイ、袷が逆になってンぞォ。これじゃ死人、……!」
浴衣越しに触れた柔らかい感触に一瞬頭が真っ白になる。
いや、さっき散々見たろって話なんだがそうじゃなくて!
「真弓チャン?もしかしてサラシ、」
「苦しかったんで取りました。汗でベタベタなのも気持ち悪かったですし…。」
何て事だ!!オイオイ、じゃあ今ノーブラなんだな?ノーブラなんだよな!?
お、おおお落ち着け、俺ェェェ!!!
「っあー…、ちょ、むこう向いて目ェ瞑るから浴衣着直させるぞ!?くそっ!!」
「え、銀時さん何かイライラしてます!?お、女なのに浴衣もまともに着れないからですか!?」
「だあぁッ!落ち着け!怒ってねェから血塗れのティッシュぼろぼろ落とすンじゃねェェェ!!」
鼻からティッシュを外して平気なら、どうやら止血が終わったらしい。
とりあえず真弓が屯所で浴衣を着ねェのは理解出来た。
コイツの場合、浴衣なんて着ようもんなら朝は浴衣が脱げてほとんど裸だろうし、色んな部分を晒しながら屯所内を闊歩する事になンだろうから浴衣はもう薦められねェな。

「…ほらよ、着心地はどうだ?」
「これは快適ですね。屯所でも着てみ、」
「やめなさい、お前ェに浴衣はまだ早ェわ。……つか、普段何着て寝てンの?」
「や、やだ!銀時さん、私の寝間着に興味あるんですか!?キャッ、今度万事屋に寝間着持って泊まりに行きますね!?あっ、でも憧れの彼シャツならぬ彼着流しも、」
「却下しまーす。どうせ突然の襲撃に備えてとか、シャツとズボンとか色気の無ェ服で寝てンだろうが。」
「! な、なんで分かるんですか!?」
「うるせー!想像に難くねー程、お前の事見てきてンだよ、こっちは。」
言いながら真弓の肩を押すと、その身体は簡単にベッドに沈んだ。
高ェベッドなんだろうが、適度に鳴るスプリングと、倒れた時に漏れた真弓の吐息に試されている気がしてならねェ。
「じゃあ、俺はその辺に居てやっから何かあったら遠慮しなくていいから呼べよ?……おやすみ。」
ベッドから離れようとした俺の袖が引かれて、今朝の事を思い出す。
「……なに。」
そう問う俺は意地が悪いンだと改めて思う。
真弓の顔に、全部答えが書いてあるのに。
「ぎ、銀時さんもベッドで寝て良いですよ!お、お腹一杯で眠いだろうし、運動して疲れて眠いだろうし、いつも眠そうな目してますもんね!」
もっともらしい事を並べ上げながら真弓はしどろもどろ言う。
「いや、別に腹一杯だけど眠くねェし、そこまで疲れてねェし、いつも輝くような目ェしてっからね?銀さんは。」
「……、」
真弓のテンションの起伏がいつもに増して激しいのが体調のせいだとするならば、やっぱり今は騒いでる方が無理をしているんだろう。
普段その高ェテンションで俺と接してるから、そっちに合わせようとしてるに違いねェ。
「お前ね、そういうとこは何で愚直じゃなくなンだよ。言いたいことがあンだろ?」
「…もうちょっと、ここに居てください…。」
熱のせいで頬が赤いのも手伝って、その言葉は会心の一撃。
わざとらしく溜め息を吐くのは、自分を落ち着かせる為だ。
「しゃーねェなァ…。ま、どこにでも着いてってやるって言ったしな。夢の入り口までは付き合ってやるよ。」
「っ、…。や、やだもう銀時さんったらキザっていうか相変わらず、っ」
言葉を続けようとする真弓の横に手を着き、その口を反対の手で塞いだ。
「はいはい黙る黙る。…弱ってる時は弱ってるらしくしてろ。いつも通りでいようなんて無理すンな。元気になったらマシンガントークでも、馬鹿みてェに高いテンションにも付き合ってやっからよ。…な?」
「……ひとつだけ言っても良いですか?」
「なら30字以内で頼まァ。」
熱で潤んでいる真弓の瞳一杯に自分が映っているのが分かって、その逆も然りかと思うと、お互いを想うのに言葉はいらねェんじゃねーかって気がする。
だけど、真弓が"それ"を言葉にしたいなら有り難く頂戴すっけどね。
ゆっくりとその口が開いて、予想通りの言葉が紡がれる。
「……おう。…っし、添い寝してやっから、とっとと休め。」
自分の体をどさりとベッドに投げ出せば、真弓の時よりギシリと鳴る。
その反動で少し体が飛び上がった真弓は子供みてェに笑った。


「………。」
やはり限界だったのか真弓は割りと早い段階で眠りに落ちた。
背中に当たる真弓の頭の感触が何だかやたらくすぐってェのは心持ちのせいか?
「夢の中まで付き合ってやるとは言ってねェんだけど、延長料金貰っちゃうよー?……なんてな。」
それにしたって好きな男が隣にいて、こんなに熟睡出来るもんなんかねェ?
手ェ出される事は無ェと思ってンのか、それとも信頼されてンのか…。
向かい合うと真弓の言動が止まらねーからと背中を向けてみたら、そのまま着流しを掴まれて今の体勢に落ち着いた。
(賑やかなのも悪かねェけど、こうやって穏やかに時間が過ぎるのも、…なんつーの?幸せみたいな、な?)
背後から聞こえる規則正しい寝息は、少しずつ俺の眠気も誘う。
(起きたらちっとは優しくしてやっかな…。)


いつか真弓が言った。
自分は徒花だと。
剣術が、刀が全てだと。
戦いに生きて、戦いに死ぬ。
咲いて、実を結ばずに散って、それで終わり。
その実が何なのかは人によって違うンだろうが、それが全ての人に当てはまるわけじゃない。
そもそも咲かねェ花なのかもしれねェし、散らねェ花なのかもしれねェ。
実もどんなものを付けるのか、それが望んだ通りのものなのかなんて本人にも分からねーかもしれねェ。
「真弓…。」
それでもお前が自分が徒花だというのなら、俺は散ったそれを全て集めて押し花にでも何でもしてやって肌身離さず持っててやるよ。
…まァ、まだ蕾なら大切に育ててやるし、咲いたならただでは散らさせねェ。
俺は身を捩って真弓の手から逃れると、真弓に向き直ってそのまま抱き締めた。


「御用改めである!!真弓は一度病院に連れてくから早く返せ、万事屋ァ!」
「ちょ、おい!何ドア破壊して入って来てンの!?朝っぱらからやかましいわ!!」
「おーい真弓ー。二日も仕事サボるなんて許しやせんぜ?とっとと治して俺の補佐に戻りなせェ。」
「う…、副長に隊長…?おはようございま、」
「ギャアアァァァ!!真弓、その格好どうしたァァァ!?よ、万事屋!俺達の真弓に何した!?正直ムラムラします!!」
「局長…?…ひゃあぁ!?ゆ、浴衣が…!まさか銀時さんと既成事実!?やだ勿体無い覚えてない!!」
「違うからね!?予想通りの寝相の悪さだよオメーは!!!」

真弓の周りはいつも賑やかで、これからもそうであれば良いと願うばかりだ。
こんなに愛されてる徒花なら、もう簡単に散ったりはしねェんだろう。
(縁ありて花開き、恩ありて実を結ぶ…ってか。)
俺は一足先に客室から出て、真弓に声を掛ける。
「…じゃ、約束忘れンなよ?」
「っ!はいっ!必ず伺います!!」

こうやって、未来に少しずつ約束していければいい。
そして、剣術としか向き合ってこなかった真弓の世界が広がればいい。

賑やかなのか煩いのか分からないような声を聞きながら、俺は一人笑った。


end

 
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