【手紙と青空】
 
片想いの賞味期限は、大体1年らしい。
もちろん、もっと長く片想いしている人もいれば、1年経たずに諦める人もいる。
報われないと知っている私の片想いは、とうの昔に賞味期限切れ。
なのに、まだ捨てられないままでいる。

幼馴染みだった。
そんな彼が異性なんだと改めて思い知らされたのは高校に入ってから。
「いい加減にしてくれやせんかねィ…。」
盛大な溜め息の原因は、両手いっぱいのそれ。
「またラブレター?総悟、急にモテ始めたね。これが高校デビューってやつかぁ…。」
「俺にとっちゃ、ラブレターも不幸の手紙も果たし状も変わりゃしねェし。呼び出しが無い分、不幸の手紙が一番親切かもな。」
そう言いながら、総悟はバサバサと玄関に置いてあるゴミ箱に手紙を捨てていく。
「えっ!?読まずに捨てちゃうの!?…それは、ちょっと酷くない?」
「読んだところで最後は捨てちまうんだから同じことだろ。」
「でも…。」
「…あー、はいはい。ワカリマシタ。」
納得いかないというような顔をしながら、総悟は今捨てた手紙を拾った。
「だって…。一生懸命書いたのに、そんなの可哀想だよ。」
「何でお前がそんな顔すんだよ。」
結局、不服そうな顔をしながら総悟は拾った手紙全部をぐしゃりと鞄に突っ込んだ。
「何でって…。」
そんなの、自分と重ねちゃうからに決まってる。
総悟の事を想う気持ちは、大小違えど手紙の子達と変わらない。
なのに、勇気を出して伝えようとした気持ちを受け取って貰えないまま捨てられるなんて悲しすぎる。
(もし私が手紙を書いても、総悟は読まずに捨ててしまうのかな。)
「あ、もしかして妬いてんの?」
「!」
「心配しなくても、いつか真弓にもモテ期が来らァ。そしたら、ちったァこの煩わしさも分かんだろ。」
「…別に、モテ期なんていらないもん。」
本当に好きな人に好きになってもらえないなら、意味ないじゃん。

転機は何度もあったはずだった。
小学校、中学校、もしかしたら、それよりももっと前。
卒業したら言う、入学したら言う、進級したら言う、卒業したら言うと先延ばしを繰り返して。
そうして気付けば、総悟は私より背が高くなって、男の人になってしまった。
それでも毎朝一緒に登校するのは、家が隣で、生まれた頃からの本当の幼馴染みだからだ。
大人に近づく度に、総悟といる時間は減ってきた。
休み時間もお昼ご飯も、部活も下校も、私は総悟と一緒ではない。
朝だけ、学校までの短い時間だけど、私は総悟と二人きり。
もちろん、総悟の部活の朝練が無ければ、だけど。
(いつからなのかもう分からないくらい、総悟が好き。)
横顔を見上げながら、そう思う。
けれど、それを伝えたら、きっとこの関係は終わる。
想像の中の総悟は、告白して喜んでくれるより、拒絶してくる事の方が圧倒的に多かった。
私は、"総悟の幼馴染みの娘"から、"総悟の事が好きなその他大勢の女"になってしまう事が怖い。
だから私は、孵らないと分かっている卵を温め続けるしかなかった。


だけど、それだって永遠に続けられるわけはない。
「真弓、三年の風紀委員の先輩知ってる?女の。」
登校中、ふいに総悟がそう言った。
思い当たる人物は一人しかいない。
「知ってる。確かモデルもやってる先輩でしょ?すごい美人の。」
話ながら、嫌な予感はしてた。
だって、総悟が女の人に興味を示すなんて滅多にないから。
「昨日の放課後に手紙貰って、返事はすぐじゃなくて良いって言われて。」
「そうなんだ…。」
先輩はとても美人だ。
それに勉強も出来て、運動も出来るという話。
全部が普通の私とは何もかもが違う。
総悟は格好良くなったし、一年なのにもう剣道部で活躍してるし、頭だって良い方だと思う。
むしろ、今だって横にいるべきは私じゃない、先輩みたいな人だ。
せっかく総悟と登校出来てるのに、何でこんなに悲しい気持ちにならなきゃいけないんだろう。
「その手紙ってどうしたの?」
「あ?…部屋の机の引き出しにしまってる。」
いつも直接的に物を言う総悟が言いにくそうに答えた言葉は、私の心臓を握り潰すのに充分過ぎた。
(あんなに鬱陶しがってた手紙を大事にしまってあるなんて…。)
意外だった。
総悟が手紙を受け取った事も、その場で返事をしてない事も、…私に相談してきたのも。
(分かりたくなかった。総悟は相談したかったんじゃない、私に今のままでいられなくなった事を伝えたいんだ。)
先輩と付き合ったら、関係の無い私が総悟の横にいるわけにはいかない。
もしかしたら、これが総悟と一緒に登校する最後になるかもしれない。
辛くないと言えば嘘になる。
でも。
(でも、総悟が幸せになる事を、幼馴染みの私が喜んであげられなくてどうするの。)
私はとびきりの笑顔を準備して総悟の方を向いて言う。
「良かったね、総悟!先輩みたいな人から告白されるなんて今後無いかもしれないよ!?おめでとう!私の事は気にしなくても大丈夫だから!総悟いなくても登校出来るし!あははは。」
「…何それ、応援してくれるって事?」
じと、と私を見て総悟は言葉を続ける。
「本当に一人で学校行けんのか?途中で迷子になったりすんなよ?俺が取られたからって拗ねんじゃねェぞ。」
「拗ねないよ…。」
私がグズグズしていた結果なんだから、拗ねたって仕方ない。
悪いのは私なんだから。
「何だよ、少しは拗ねろよ。…今日、返事するわ。」
私はもう曖昧に笑う事しか出来ない。
気まずい空気のまま、私達は学校へと急いだ。


「なァ、総悟の"アレ"噂になってっけど、事実か?」
「…分かんない。事実なんじゃない?」
私の席にふらりと立ち寄って質問を投げてきたのは、土方十四郎君ことトシ君。
トシ君は総悟の友達で、私は中学からの知り合いだった。
(あれから、まだ二日、か…。)
あの日から、本当に総悟と一緒に登校しなくなった。
元々帰りは別々だったし、クラスも違う。
そうなると本当に学校では数回見掛けるのがせいぜいで、会話なんてする余地もない。
(総悟と話さない日がくるなんて、現実感が無いや…。)
総悟が返事をすると言った翌日、校内では総悟と先輩が付き合っているという噂が一気に広まった。
いや、噂ではない。
あの日、二人は両想いになったんだ。
それを周りが祝福したから広まった、それだけの事。
私もいい加減、総悟離れしなきゃいけないのかもしれない。
(孵らない卵だって分かってたじゃない。もう温めるのはやめなきゃいけないんだって。)
トシ君は何か言いたそうな顔をしたけど、チャイムが鳴ってしまったからそのまま自分の席へ戻っていった。


それからさらに日にちは過ぎて、気付いたら一週間経っていた。
夏休みを除けば、それだけの期間総悟と話さなかった事なんて無いんじゃないかな。
(もうすっかり遠い人だ…。)
学校の外でも総悟と先輩が一緒にいるの見た人もいるらしい。
(総悟の事を好きだった子達は今どういう気持ちなんだろう。悲しいのかな、それとも、先輩には敵わないから諦めがついてる?)
私は…どうなんだろう…。
そんな事を考えていたら、一時間目の授業は終わっていた。
「真弓、元気ねェな。体調でも悪いか?」
「ううん。」
私に声を掛けてくれたのは、トシ君だった。
彼は少し厳しそうな見た目に反して、他人の事を気遣える優しい人だ。
そんな彼に心配そうな顔をさせてしまうくらいには普段と違うのかな、私。
窓の外では重い雲が広がっていて、既に細い雨が降り始めていた。
「……あれ?」
何の予兆もなく涙が零れた。
トシ君は驚いた顔をしていたけど、私も驚いた。
「オイオイ、大丈夫かよ。」
「…大丈夫、何でもないから。」
「女の言う"何でもない"程、信用出来ねーもんはねェんだよ。無理すんな、ちょっと休んでこい。」
私の言葉も聞かず、トシ君が私の腕を掴んで立たせる。
確かに、授業中に今みたいな事になったら恥ずかしいし、一度冷静になるべきなのかもしれない。
トシ君の歩く方向から、保健室に連れていこうとしてくれているのが分かった。
(最近眠りが浅いから情緒不安定になってるのかも…。寝たら落ち着くかな…。)
こうやって私の手を引いてくれるのは、いつも総悟だった。
遅刻しそうな時、足を怪我した時、私が落ち込んでいる時。
いつも、そばにいてくれたのは総悟だったのに。
(我慢してた、応援してるなんて強がりだった。だって私は総悟の事がまだ…。)
色々思い出してしまうと、また視界が滲んだ。
きっとトシ君はそれに気付いていたけど、振り返って詮索する事はなかった。

「トシー!」
保健室に着く直前で、後ろから大声で名前を呼びながら駆け寄ってくる人物が現れた。
「近藤さん…?」
「総悟を見てないか!?」
「っ、総悟がどうかしたの!?」
「おぉ、真弓さんだったか。トシが女連れだったから30mくらい様子見しながら歩いてしまったが、もっと早く声を掛ければ良かったな!」
「いらねー気を使うんじゃねェよ。そういうとこだぞ、ストーカーって言われンの。」
トシ君と軽快に会話を繰り広げているのは、近藤勲君こと勲ちゃん。
総悟やトシ君と同じ剣道部で、クラスは総悟と同じだ。
「ね、勲ちゃん。総悟がどうしたの!?」
この慌てぶりはただ事じゃないと思った。
「今朝、ホームルームが始まる前に三年生達が総悟を連れていってから、アイツ戻ってこないんだよ。」
「三年生…?どうして…。」
「…あー、何でも、昨日総悟が…。いや、付き合ってるなら、そりゃ当人達の問題なんだが…。」
言いにくいことなのか、勲ちゃんの口調がどんどん弱くなる。
勲ちゃんが言いにくそうなのは、私が傷付く内容だと理解しているから。
それでも。
「言って、お願い…。」
「総悟が…、無理矢理先輩を襲ったそうだ。ギリギリのところで通りかかった三年生が止めに入ったから、未遂で済んだらしいが…。」
「うそ…。」
「総悟は"ヤれねェなら用はない"って吐き捨てて、その時、先輩にビンタされたらしい。今朝、総悟の頬すげー腫れてたから…。あの先輩、親衛隊いるだろ?多分、その話を聞き付けて報復で総悟を連れていったんだ。」
くらりと目眩がした。
私が倒れなかったのは、トシ君が私の腕を掴んでいてくれたからだ。
「話は大体分かった。俺らは総悟には会ってねェし、居場所も知らねェ。…何か分かったら連絡するから、近藤さんも総悟が戻ったら教えてくれ。」
「頼む。」
勲ちゃんは私に心配そうな目を一度だけ向け、自分の教室に戻っていった。

辿り着いた保健室は施錠されてなかったし、電気も点いていなかった。
「月詠先生、留守みてェだな…。まぁ、ベッド借りるだけだし、問題ねェだろ。授業終わったらまた様子見にくるから、それまでゆっくり寝てな。」
私が横になるのを見届けてから、トシ君は保健室の戸に手を掛けて私に言った。
「あー、そうだ、真弓。俺が告白したらお前付き合ってくれる?」
「…えぇ!?ト、トシ君…突然どうしたの…!?」
「俺じゃダメか?」
私に向けられているトシ君の瞳は真っ直ぐで、心臓が跳ねる。
「っ、ダメっていうか…。トシ君、優しいし格好良いし、ダメなところなんてないけど、…でも、あの、」
しどろもどろ答えていると、トシ君はハッキリした声で言った。
「本気にすンな、冗談だ。」
「じ、冗談!?」
「どんな奴に告白されようが、お前らみてェに既に気になってる奴が居ンなら普通は靡かねェんだよ。…んじゃ、ごゆっくり。」
(お前ら…?お前、じゃなくて…?)
トシ君は私を振り回すだけ振り回して、今度こそ保健室から出ていった。

それを見送って、私は上履きを脱いでベッドに潜り込む。
目を閉じてしまうとさっきのトシ君の表情や声を繰返し思い出して、ただただ恥ずかしくなった。
(冗談って言われたけどドキドキした…。熱出そうだ…。)
「ビックリしたぁ…。」
「俺も。」
「!? っ、もっとビックリしたじゃない!心臓止まるかと思った…!」
いつの間にか私のベッドの横にいたのは総悟だった。
こんなに近くで総悟の顔を見て話すのが久しぶりで必要以上に緊張する。
「いつからいたの!?」
「ずっと。…親衛隊の三年生のしてから、教室戻んの面倒になって。もう噂になってるらしいしな?」
そう言って自分の左頬を指差した。
確か、先輩にビンタされたっていう総悟の頬は赤く腫れていた。
自分の頬をゆるりと撫でながら、総悟は不敵に笑った。
「俺が"あんな事した"のに、先輩は俺をフラねェんだってさ。本当お優しいことで。」
「総悟…。」
「さっき土方に告白されてたな、お前。満更でもなさそうだったし、俺が予行演習してやろうか?」
ギシリとベッドが軋んだのは、総悟が私に覆い被さるように乗ってきたからだ。
電気の点いていない保健室、外は雨雲で暗い。
ドキドキしないわけがないんだけど、今はそれに浸る訳にはいかない。
勲ちゃんから話を聞いて感じた事、トシ君に言われて思った事、何度も反芻したそれを総悟に問う。
「総悟… 。本当は先輩に何をしたの?」
「! は?それさっき近藤さんから聞いてただろ?」
確証はない、これは私が直感したことだから。
一番近くで総悟を見てきた私だから、感じた事。
「先輩の事が好きだったら、総悟は絶対大切にする。絶対に無理矢理酷い事なんてしたりしない。…ねぇ、本当は総悟、"何もしてない"んじゃない?」
真っ直ぐ総悟の目を見つめながら言うと、総悟は冷たい目を私に向けた。
「じゃあ、好きでもねェのにヤリモクで付き合ってたって考えねェの?先輩、美人だしな。」
「考えない。総悟は相手の気持ちを考えられるから、そんな最低の理由で誰かと付き合ったりしない。…学校中が噂を信じても、私は絶対に信じないから!」
強めに言い切ると、総悟は目を伏せ、私の肩口に額を擦り付けた。
「んだよ、それ…。真弓のクセに格好良すぎだろ。」
私は、力無く笑う総悟の背中をゆっくりと撫でた。

総悟はひとつ深い息を吐いてから、話してくれた。
「本当は、そもそも付き合ってなんかねェ。あの日、俺はちゃんと断ったんだ。」
返事をすると言ったあの日、総悟は先輩に付き合えないと伝えたけど、先輩が納得しなかったらしい。
『私をフるとか有り得ないんだけど!』
『フるも何も。先輩、俺の事好きじゃねェでしょう?手紙受け取った時に違和感ありやしたけど、成る程、そこにいる男共と同じで、俺を侍らせたいだけじゃねェですかィ。俺、アンタのハーレムに入るつもりないんで。』
『手紙持ち帰って、返事も保留にしたクセに。私の事、本当は気になってるんでしょ?』
『生憎、中身も見ずに手紙を捨てると怒る奴がいるんでね。それ以上でも以下でもありやせん。』
『……後で後悔すると良いわ。』
だけど次の日には、例の付き合ってるという噂が流れた。
もちろん、総悟は抗議しに行ったらしい。
『沖田君と仲良くなりたくて色々調べちゃったわ。アナタ、幼馴染みの女の子がいるんですってね。』
『…ハッ、驚きやした。アンタ、俺より嫌な奴だったんですねィ。』
そこから総悟は私を巻き込まない為に、私と距離を取るようになったらしい。
「あの女だったら、マジに真弓に危害加えんだろうなって思ったんでィ。…だから、とりあえず様子見で形だけ付き合ってるみてェになったけど。」
(まさか私の知らないところでそんな事になってたなんて…。)
「夜に突然呼び出されたり、何なら剣道部を辞めろとまで言ってきやがった。さすがに我慢の限界。もうお前なんかに従わねェって言ったら、ビンタされた。」
そして今日学校に来たら、事実とは全く違う例の噂が広まっていたらしい。
一頻り話し終えた総悟は、私の横にゆっくり寝転がった。
「何か…、本当の事を知れてほっとしたかも。最近、総悟が遠い人になった感じしてたから。」
「ククッ、なんでィ。やっぱ拗ねてたんじゃねェか。」
「総悟こそ、手紙捨てないでってお願いを私がいなくても守ってくれてるんだね。」
そう言い合って、久々に二人で笑った。

それから、総悟が少し真剣な声で私に言った。
「アイツに背中押されんのは癪だが、また今度また今度と先延ばしにしてこうなっちまったのもあるし、もう観念する。…真弓、幼馴染みより先に進みやせんか?」
「総、」
「なァー、沖田くん、いるー?」
恐らく私と総悟の関係が進展するはずの、とてもとても大事なタイミングで誰かが保健室に入ってきた。
(だ、だれ…!?)
その声を聞いて、総悟は心底嫌そうな顔をしながら言った。
「ちったァ空気読んでくれやせんかねィ、国語教師。」
「そういうのは土方に言って。ここ教えたのアイツだから。…っていうか、お前ら今どういう状態なの。暗い保健室に男女でベッドに寝転がってるとか。」
入ってきたのは、三年生の現国を担当している坂田先生だった。
私はあまり接点が無いけど、剣道部の幽霊顧問らしい。
「まー、最近この学校ちょっと風紀乱れ気味みてェだしな。…土方もだけど近藤も煩かったから、お前の彼女に会って話してきた。伝言頼まれたから言うわ。"別れたい、もう近付かないで"だってさ。ププー、沖田くんフラれちゃって可哀想だねェ。」
あんなに総悟に執着してた先輩を、坂田先生は説得?したみたいだった。
「…どんな手を使ったらそうなるんでさァ。頼んでねェから、礼は言いやせんぜ。」
「坂田先生、総悟の為にありがとうございました。」
ベッドの上だけど、私は正座をしてそのまま頭を下げた。
総悟は複雑そうな顔をした後、小さく頭を下げた。
そんな私達を見て、坂田先生は悪戯っぽく笑う。
「どーいたしまして。つか、沖田にちゃんと部活出てもらわねェと俺が他の先生に怒られンの。…んじゃ、程々に教室戻れよ。」
総悟がよく"死んだ魚の目"って言ってた坂田先生の目はあたたかかった。
坂田先生を見送った後、私と総悟は顔を見合わせて笑った。
「総悟。…これからも、よろしくね。」
「よろしくしてやりまさァ。」


総悟と先輩の噂は、意外にも数日後には話題にすら出なくなっていた。
私達の関係はというと、変わったようで変わってない気がする。
でも、それが私達らしいのかもしれない。
「おはよ、総悟。…ねぇ、お手紙書いてみたんだけど、読んでくれる?」
一緒に登校する為に家の前で待っていてくれた総悟に手紙を差し出すと、総悟は珍しく照れたような表情をした。
「仕方ねェな、誤字が無いか見てやるか。」
「うん、お願い。」
どちらともなく繋いだ手から伝わる体温を感じながら、雲ひとつ無い空の下を二人で歩いた。


end

 
×
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -