【溺惑カレシ】
 
あれから、どれくらい経ったのだろう。
即効性の薬を飲ませてから一時間は経つ。
「真弓、我慢すンなよ…。顔色悪ィぜ…?」
「……っ…、晋助、…お願い、許して…、無理なの…本当に…。」
震える声で俺にそう答える真弓は、気力だけで現状維持をしている。

湯を張らない明け方の浴室に二人。
俺は浴槽の縁に腰を掛け、全裸でタイルに座る真弓を見下ろしている。
気紛れに触れてみた真弓の肌は完全に冷えきっていた。
「…晋助っ…、トイレ……もう、…ッ。」
「だから、ここですれば良いじゃねェか。何度も言わせンな。」
薬の効果で我慢出来ないのか、真弓は瞳いっぱいに涙を溜めている。
真弓はどんな顔も俺の心を掴んで離さないが、こうやって気丈に耐える顔が堪らなく良い。
ああもうこのまま犯してしまいたい。
…が、それは今じゃねェとこちらも我慢している。
「っぅ、…うぅ…、晋助ぇ……、やだよ……、」
ついには真弓は泣き出してしまったが、その表情にすら欲情する。
「……泣くな。…手伝ってやる。」
「ぇ…?」
俺は立ち上がり真弓の横に移動した。
そして、そのまま手を真弓の腹に宛てる。
「! ぅ、うそ!嫌だ、いや!晋助っ、晋助ぇっ…!!」
「心配するな、…ちゃんと見ててやる。」
「っや、…ぁ!」
ゆっくりと臍の下を強く押していくと、真弓はガクガクと震え、その震えが治まった頃には座り込んだタイルに水溜まりが出来ていた。

【溺惑カレシ】

「…怒るなよ。ただの生理現象じゃねェか。」
「………。」
あの後は、ちゃんとシャワーで体を流してやって、今は二人で向かい合うように湯船に浸かっている。
真弓は体を丸めて口元を湯に沈め、ぶくぶくと抗議してきた。
「ンだよ。優しくするだけじゃ飽きるだろうから、たまには趣向変えてみようと思っただけだろうが。…あ。それとも、こないだ生理中に自慰させたのまだ根に持ってンのかよ。」
「…やだって言ったのに、その後、生で六回もされた…。晋助は私をどうしたいのか、本当に分からない。」
「そう言われると俺にも分かンねェな。ただ、色んな真弓が見てェし、その全部を愛してやりてェとは思ってるがな。」
「っ、それにしたって…。」
唇を尖らせながら真弓は湯から上がり、振り返らずに脱衣所の扉に手を掛ける。
「晋助、…私は、」
真弓は背を向けたまま何かを呟き、そのまま風呂場を出ていった。


思えば、俺は真弓を試すような事ばかりしていた。
自分でも笑えるほど、真弓の事を大切にしていたのに。
大切にしすぎて、壊したくなる。
(いや、壊すつもりは毛頭無ェがな。…きっとあの夢を見始めてからだ。)
いつから見始めたのか思い出せない程に繰り返される、真弓が俺の前から消えてしまう恐ろしい夢。
そういう夢を見た日は何かを確かめたくて、敢えて真弓が傷付く事がしたくなる。
俺が何をしても、俺から離れていかない事を試したくなる。

例えばヤリたくもないのに、真弓の反応が見たい為だけに吉原に降りて花魁を抱いた。
…つまらない女だった。
やはり俺は真弓以外に興味が無いのだと知る。

「真弓。」
「っ、お帰りなさい、晋助。…遊郭行ったの?…着替え用意するからお風呂、」
「…悪かねェな、その顔も。嫉妬、動揺、悲愴。俺が他の女を抱いたのがそんなに辛いか?」
自分でも分かるくらい女の香水の匂いが染み付いた着物を、真弓の顔に押し付けるようにして抱き締めた。
「……晋助のそういうとこ、歪んでる。」
ぽつりと忌々しそうに言う真弓を見て、込み上げて来るのは罪悪感じゃなくて優越感。
「素直に妬いたって言えば可愛げもあるンだがなァ。…口答えするようになったのは成長か?」
「! そんなんじゃ、」
「まぁ、いい。…白状してやるよ。俺は真弓以外じゃもう勃たねェ。真弓の事を考えながら、別の女を抱いた。」
「!!」
耳元にそう囁き込んでやれば、真弓は顔を真っ赤にしている。
同時に緊張が走ったように硬くなる身体と涙目で震えている理由は、俺には分からなかった。
「…なァ、真弓。俺にも感じさせてくれよ。…嫉妬と動揺と、悲愴。」
「? 何を、言っ」
俺は素早く真弓の着物を剥ぎ取ると後ろに控えさせていた男に投げるように突き渡す。
真弓の華奢な身体はか弱くよろめいて男の腕の中に収まった。
「ば、万斉さん…っ?」
「…すまぬ。少しの間、我慢するでござるよ。」
「っ、…ゃだ、…ぁ、どうして…っ!」
上着を脱ぎ落とした万斉は、そのまま真弓に覆い被さって乱暴に組み敷いた。
いくら真弓が暴れようとも、ただの女である真弓に万斉を振り切る事は出来ない。
「ぁ、んん、…万斉さ、やめて…!っ、…晋、助!…たす、て…ぁ、あ、」
「………晋助、」
「構わねェ、続けろ。」
一瞬、万斉が躊躇ったような顔をこちらに向けたがそれを一蹴する。
(俺の前で違う男に犯される真弓、か…。)
本来なら相手の男は万死に値するが、犯されながらも縋るように俺の名を呼ぶ真弓は、極上だった。
万斉もこの役回りは満更でもないのだろう。
真弓の肌にいくつも赤い痕を残し、その手は下半身へと伸びていく。
「…、はぁ、ぁ、…っ、ん、」
俺は壁に背中を預けてその様子を傍観する。
指だけであんな風になるとは、我ながら調教の才があるのかもしれない。
いや、それとも真弓が天性の淫乱なのかもしれないが。
しかしあの嬌声、真弓はもうすぐイキそうだな。
「…万斉、入れてやれ。」
「! ゃ…、やだ、晋助おねが、っあ、ぁあっ、」
拒絶するかのように仰け反っても、万斉に押さえ込まれた腰は熱を受け入れる他ない。
「ふぁ、あ、ぁあっ、…ぁん、…もう、イっ…!」
快感の涙を両の目から溢れさせる真弓は厭らしくて、綺麗だ。
嫉妬も動揺も悲愴も無い。
何故なら真弓はどう足掻いても俺の物だからだ。
俺は知っている。
どんな目に合わせても、真弓は必ず俺のもとに戻る。
その優越感を他の感情が越えることは無い。
「っく、」
「や、ぁああっ!…は、あっ、」
ビクビクと身体を痙攣させながら真弓は絶頂を迎え、同じく万斉も自身を引き抜き、真弓の腹の上に白濁を溢した。

「…大丈夫でござるか?」
「ん……、」
真弓をそんな状態にしたのは万斉本人だが、良心の呵責、というやつだろうか。
自身の身なりを整えた後、真弓に吐き出した欲や汗を優しく拭っていく。
「…お主達の魂のリズムは似ているようで違う。無理に、似せずとも…。」
「……うん、…うん…。」
真弓の声が弱々しい。
万斉と何やら話しているようだが、少し離れた俺の耳には届かない。
「お主は、」
「…真弓。万斉さん、私は真弓だよ…。ちゃんと、名前で呼んで…。」
「真弓…。無理矢理抱いてすまない…。」
万斉はぐしゃりと真弓の頭を撫でて、すっと立ち上がる。
「晋助、あんまり苛めてやるな。…彼女はお主から逃げたりはせぬよ。」
「てめェに口出しされる事じゃあるめェよ。真弓の全部は俺の所有だ。」
やけに挑発的な万斉の言葉に、敢えて口角を上げて言い返したのは図星を突かれたからだったかもしれない。
真弓が永遠に俺と共にいる確証に焦がれていたのは事実だ。
何故なら、俺は真弓無しなど考えられないのだから。

役目を終えた万斉を追い払って、部屋には俺と真弓の二人だけ。
「お前は別の男に抱かれても随分気持ち良さそうに啼くンだな、あ?」
「……、ごめんなさい…。」
未だに横たわったまま身体を起こさない真弓を見下ろしながら吐き捨てるように言う。
欲をぶつけられて翻弄された後の顔は、それだけで抜けそうなほど厭らしい。
けしかけたのは自分だが、あんなものを見せられて煽られない方がどうかしている。
「ククッ、普通じゃつまンねェよなァ?真弓はもっと激しく犯されるくらいが調度良いもんなァ…?」
抵抗出来ない真弓に馬乗りになり、その胸を鷲掴むと小さい悲鳴が上がった。
「今日はどうして欲しい?緊縛か?スパンキングか?…ああ、まだ開発してねェ所もあるな。」
想像しただけで高揚して、自身が昂るのが分かる。
「…晋助………。」
「っ、」
そう呼ぶ声があまりにも儚くて、一瞬言葉に詰まる。
勘違いを起こしてはいけない。
結局、俺が真弓に無茶出来るのも、それを受け入れてくれる事が大前提であって、真弓に嫌われてしまっては意味が無い。
「…チッ、流石にさっきのは堪えたか。…もうやらねェよ。」
犯される真弓を見るのも悪くないが、真弓を犯して良いのは俺だけだ。
放心したままの真弓の頬に手を添え、そのまま口付ける。
ぬるりと舌を差し入れてみると、ん、とくぐもった声と共に口腔に迎え入れられた。
油断している真弓の舌に自分のそれを絡めて夢中で口腔を犯す。
「ん、はっ、…晋、…」
鼻に掛かった甘い声。
真弓の唇からはどちらとも分からない唾液が伝って落ちた。
それを舐め取ってから、俺は真弓を抱き上げてベッドへと運ぶ。
小さい手が俺の着流しを掴むのを愛しいと思う。
庇護と破壊の矛盾を抱かせる存在は、真弓だけだ。
「ほら、休め。」
裸のままの真弓をベッドに寝かせてシーツを掛けてやる。
「晋助…、しないの…?」
「…して欲しいのかよ。あんな抱かれ方したくせに足りねェとか、とんだ淫乱だな。…悪かったな、休めよ。」
「ふふっ、晋助の飴と鞭は極端だよね…。」
さらりと真弓の髪を梳く。
指の隙間からさらさらと流れ落ちるそれを見ながら、言い知れない不安になるのは何故なのか。
真弓はここにいるのに、両の手から溢れ落ちそうなこの恐怖は、松陽先生を失った恐怖にも近い。
「…晋助、好きだよ。」
突然の言葉に我に返ると、真弓は穏やかに笑っていた。
何だかんだ言っても、笑顔が一番似合っているし、可愛いんだと思い知らされる。
「とんだマゾヒストだな、お前は。」
皮肉めかせて答えたものの、少し驚く。
真弓が俺のすること全てを許したとしても、文句は今までも言ってきたし、どうやら機嫌を取る為の台詞でもない。
「晋助、覚えてる?半年前、船艦に天人が襲撃してきたの。」
「…あんな悲惨なのを思い出したいなんざ、酔狂な奴だな。巻き込まれて死にかけたろ、お前は。…ったく、声も掠れてンな。何か飲み物持ってきてやるよ、待ってろ。」
「…ん。……普段だったら"俺の唾液でも飲め"って言うのに。」
「馬鹿か。そうして欲しいならきちんと"お願い"しやがれ。…そうじゃねェなら大人しくしてろ。」
そう言うと困ったように笑う真弓を見て、似合わない程の温かい気持ちを胸に感じながら俺は部屋を出た。

少し歩いた先の廊下で、また子とすれ違った。
いつものハイテンションではなく、雰囲気から察するに、先程の真弓と万斉の件を知ったようだ。
「…晋助様、もう半年になるっス。武市先輩も心配してるっスよ。…それに、羨ましいを通り越して、もう見てらんないっス。」
「? 何の話だ。」
「……辛いのは分かるっス、でも。…晋助様が愛しているのは真弓ですか?それとも、あの女ですか?」
「は…?」
また子が何を言っているのかよく分からない。
真弓?あの女?
半年前、…さっきも半年前の話が出たばかりだ。
「晋助様、半年前…。あの日…、」


全身に繋がれる管。
元々白い肌は血の気が失せてさらに青白い。
船医が言うには臓器の破損、血液の不足で助かる可能性はほぼ無いと言い切られた女。
奇跡的に数日持ち堪え、いよいよいつその時が来てもおかしくないと告げられたその日、真弓は久しぶりに俺の名を呼んだ。
『し、ん…すけ…、』
『っ!喋るな!傷に障る…!』
握りしめた掌は俺より一回り以上小さく、氷のように冷たかった。
『真弓っ、しっかりして!』
俺の斜め後ろで真弓の名前を呼ぶのは、コイツの姉だ。
この姉妹は奴隷船に乗せられていて、たまたま捨て駒補充にと襲った船艦がまさにそれだった。
…一目惚れだった。
すぐに自分の女にして、真弓の願いで他の奴隷共への待遇も見直すことになった。
そのくらい、俺は真弓に本気だった。
真弓は奴隷船から救い出した形になった俺に感謝していて、無理強いせずとも俺と一緒になる事を快く承諾した。
…そんな時だった、天人の襲撃が起きたのは。
俺と万斉が別件で一瞬船艦を離れた隙だった。
駆け付けた時には、真弓はこの有り様で。
奴等は真弓が俺にとってどんな存在なのか知っていたのだと思う。
そうじゃなきゃ、こんな事には…。
『晋助…、ありが、と…。出逢えて、良かっ……、……、…、』
微かにしか聞き取れない声で真弓がそう言ったのを最後に、心電図が波形を作るのをやめた。
それは、真弓の心臓が止まった事を意味していて、船医を脅しながら心肺蘇生を試みたが結局何も変わらなかった。

真弓の手を握りしめ、半日動かずに居た俺に声を掛けてきたのは、泣き腫らして目を真っ赤にした真弓の姉だった。
『…恐れながら晋助様、真弓はもう、』
『なァ…、どうしたら真弓と一緒にいられる…?』
『ッ、晋助様…!?』
虚ろな目のまま、ゆらりと立ち上がって真弓の手を離すと、俺は女の肩を掴み詰め寄った。
『真弓とずっと一緒にいるにはどうしたら良い…?その身体を朽ちないように樹脂で固めて俺の部屋に飾れば良いのか?それとも、火葬して常に傍に居られるように骨にすれば良いのか?なァ、答えろよ。…、っははは、ああそうか…!このまま真弓の血肉を残らず喰らえば一緒になれるのか!?そうなんだろ!!?答えろッ!!』
ギリギリと指先に力が入ると、女は歯を食いしばって痛みを受け流そうとしている。
『…痛、…し、晋助、様…ッ、』
『晋助!お主何を…!?』
このまま肩を握り潰しそうだと思っていた時、万斉が俺から女を引き剥がした。
その時の事はあまり良く覚えてはいない。
気付いたら何十人掛かりで部屋に軟禁されていたような気がする。

『晋助様、失礼致します…。遺品の件で、』
『…真弓?』
『…っ、"妹"の遺品なのですが、』
数日後、部屋に現れた女は真弓だった。
あぁ、やっぱりそうだ、あれは夢だった。
思わず俺は真弓に駆け寄り抱き締めた。
『真弓…。勝手に俺の前から居なくなンじゃねェよ。』
『ゃ、晋助様、お気を確かに…。私は真弓では…、』
『…。何言ってンだ、死んだのはお前の姉だろ?真弓は今、こうやって俺の前にいるじゃねェか…。』
『し、晋助様…?一体…、…んん、…ッ、は、』
その存在を確かめるように乱暴に口付けを何度も繰り返す。
温かい、真弓はちゃんと生きている。
『急に敬語なんて使うな。いつもみたいに俺の名前を呼んでくれ。』
顔を背けられないように顎を掬い上げて、その瞳の奥を覗く。
『しんすけ、さま…ぁ…、』
『違う。』
『…っ、…晋、助……。』
『そうだ。もっと俺を求めろ、俺の名を呼べ。』
『晋助…、っしんすけ、……晋助…、ごめんなさい…。生き残ったのが…っ、私で、…本当にごめんなさい……っ。』
何故泣く?
何故お前は俺に謝る?
震えるその身体を抱き締めて考えた。

(俺には理解できない、だって真弓は今こうやって目の前にいるのに、目の前の真弓は真弓が死んだとか言うし、そうだ何で真弓は泣いているんだ、何で俺に謝ってるんだ、それにしても真弓は柔らかいし温かいし、これを失うとしたら俺は立ち直れないし認められないし許せない、あぁああぁ、真弓が俺の前から消える可能性があるとしたら、)


また子の話を聞きながら、記憶に無いことが脳内で再生されていく。
「真弓っ…!!!」
「晋助様!?」
突然悲しそうに笑う真弓を思い出して、俺はまた子を振り切って元来た道を引き返す。
俺は、どうして気付かなかったんだろう。
どうして忘れていたんだろう。

飲み物も持たずに息を切らせて部屋に戻ってきた俺を見て、真弓は目を丸くしている。
「ど、どうしたの…、晋助…?」
「また子が何度も言うんだ、真弓は死んだと。」
「! 思い、出したの…?」
無言で頷けば、真弓はベッドから降りてシーツを体に巻き付けて、俺の前に忠誠を誓うように跪いた。
そして、揺れる瞳で俺を真っ直ぐ見つめて凛とした声で言う。
「私達は所詮奴隷船の拾われた命。晋助様が望んで下さる限り、絶対に離れないと誓いました。」
そう言って、少し言葉を探すように真弓の声が震え始める。
「…ですが、私は半年前のあの日から、事情はどうあれ、晋助様を偽っております。いつか思い出す日が来るならば、妹ではない私を殺したくなる日がきっと来るとも覚悟は出来ています。」
「……。」
「それでも、晋助様と過ごした半年。私にはかけがえの無いものでした。晋助様、ありがとうございました。出逢えて良かっ、」
『晋助…、ありが、と…。出逢えて、良かっ……、……、…、』
聞き覚えのある言葉に、頭の中が殴られたような感覚になる。
「……お前は、」


「お前は、俺の枷になりたくなかったんだな?だから自分を死んだ事にしたんだ。…全ては俺の為に、自分の存在を殺してまで。」


ああ、愛しい。
真弓は俺の為に死ねるんだ、自分を殺せるんだ。
これはきっと"究極の愛の形"。
「っ、晋助様…?」
「…考えてみりゃ簡単なことだ。真弓が生きていると知られりゃ、また狙われる可能性だってあるんだからなァ。」
「あ、あなたが…あなたが愛しているモノは一体、何なのですか…?」
同じ目線にしゃがみ込んで、その小さい肩を両手でゆっくりと押し倒す。
「愚問だろ。俺が愛しているのは、"お前"だよ、"真弓"。」
「……っ。…その心の傷が少しでも浅くなるなら、"真弓"の代わりに"私自身"を殺しましょう。…晋助様…。」
虚空にそう呟いた真弓の声は俺に届くが、その真意を俺に理解させる程の強さを感じさせない、まさに独り言だった。
「ん、真弓…。」
「…ゃ、あっ、…"晋助"、堕ちる時は一緒だよ…。っふ、あぁ、…っ、」
俺に全てを委ねる真弓に何度も口付けをしながら、その肌を撫でていく。

真弓が俺から離れていくなんて認めない。
真弓が俺から離れていくなんて許せない。

だから俺は今日も、狂ったように 真弓 を愛す。


end

 
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