空契 | ナノ
53.オコサマ御遊戯 (1/5)

   


───ぅ、ひっく、ぐす、
───うぇ、あ……、


昔………あれは、どれくらい昔だろうか。
五百年より、多分、前の昔話。


そこでその“子供”は生まれた。


ぐすぐすと、泣いていたそのポケモンは、元は人形だった。
持ち主に捨てられたばかりのその人形は、長い時を経て、周囲から流れてくる感情を吸い取り、やがて感情を持ち始めた。
意志を持ち始めた。
そうした人形は、まず、疑問を持つ。

なんで自分は、こんなに“かなしい”のだろう、と。

周囲から受け取った感情は全て、そういった暗い感情ばかりで、その膨大な子供も悲しさで呆然とした。

涙というものを知らないまま、涙を流していた。


どれくらい泣いていただろうか。
そんな子供の前に、ひとりのポケモンと、男が、現れた。



そのポケモンは、優しく、
『ひとりじゃないよ』と言った。

『一緒にあそぼう』とも言った。



男は、
薄い金の髪をした、その男は、

「泣かないでくれ」

そう言って、───俺に手を伸ばした。




あれ?

なんで、俺に、?


真っ直ぐとこちらに手を伸ばしきた、彼を見上げた。
薄い金の髪は、伸ばしっぱなしで、目までその髪に隠れている。だから俺は、彼の両目を確認することはできなかった。

気になった、のだろうか。

ただ、不思議そうに見上げてる俺の、目線に合わすように屈む彼。
その、口角がゆぅるく、持ち上がっていて、
優しそうだとなんの根拠もなく、
思って、感じて、

無意識だったか。
俺は、ぴくり、手を持ち上げると、
ゆっくり、その白い手に、触れ───、









「レオ?」

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