「君は、我が儘な人みたいだね」
うるさい。
「それほど恵まれてる環境にいるのに、
愛されたがり屋で、」
うるさい。
「自分を見てほしくて、」
うるさい。
「人一倍劣等感を抱いてるから、」
うるさい。
「自分を隠して笑って相手を見下す…………そんなひねくれた人なようだね。君は、」
うるさい。うるさい。うるさい。
「黙れッ!」
その会話を彼と交わしたのは、もう2年以上前の話。
チャンピオンとは、地方にある7つのジムを制覇し、
ポケモンリーグを勝ち抜いた強者の事。
僕も、各地方に1人ずついる強者の内の1人だった。
────しかし、チャンピオンは、こんなにも暇なものだっただろうか。
そもそも、僕がポケモンバトルを始めたのは趣味のため。
好きな石を捜す為に洞窟を進むのだが、当然、ポケモンも出て来る。
大体の野生のポケモンは大人しいものが多いが、極稀に人間や侵入者に対して容赦なく襲いかかってくるポケモンが存在する。
それを退けるため、僕は幼い頃から共に居るポケモン(家族)と、バトルを望む事となった。
最初の家族はダンバル。
鋼鉄と名付け、家族同然に過ごし………それから僕は鋼タイプの虜になった訳だが………。
チャンピオンを目指した理由は、親の持つ理想から反するため。
父は、ツワブキコンポレーションの社長だ。
息子は僕一人だけ。
つまり僕は、俗に言う――――御曹司、なのである。
ただそれだけの肩書きのせいで、僕は嫌って程苦しめられた。
御曹司に近付く者は欲に塗れた醜い奴ら。
そういう考えが僕の中で根付いたのは、まだ幼い頃。
僕はその頃から、若干捻くれた。
それでも自分自身は悪くない、と、まだ信じてて、
周囲の期待をどうにかして裏切りたくて、
それがきっかけで僕を見放してほしくて、
ポケモンバトルと石散策という世界に、僕は迷わず身を投じた。
そして、数年でチャンピオンの座に辿り着いた。
しかし、周囲は何も変わらない。
その現実が僕を深い闇へと溺れさせていく。
蟻地獄のようだ。
────唯一気が休めたのは、親しい友人の存在だ。
約2年前、
石探しの為訪れた鋼鉄島で出会ったゲンも、その一人。
彼は、波動使いだといい、ルカリオを連れ─────何故か無人島で生活している物好きな変わり者だ。
何だか、近寄りがたいオーラを放っていたのが印象的だった。
彼は人の心を読むのに長けていて、僕も読まれた。
それに対して、反発もおきたりもしたが………正直、今はもう、思い出したくはない苦い記憶だ。割愛する。
それから2年も時間が過ぎた最近の僕等の仲は、おそらく良好である。多分。
……なんてたって、相手はあのゲンなのだから。
自信がある訳ではない。が、多分、良好。
造られた世界で出会う
(ただし、)(最悪な出会いだった)