クリスマス・正月企画 2018 | ナノ
正月の宴



1月1日元旦。正月ということもあって、俺の本丸でパーティーを開催していた。


「お師匠様、明けましておめでとう御座います!」

「あけましておめっとーごじゃます!」

「あけおめことよろ。今年もいい年になれば良いな?」

「天月さん、明けましておめでとうございます!」

『小鳥遊もラメも葉月も明けましておめでとう。今年もよろしくな? 飛燕も、挨拶は略すなよ。ラメやリルが真似するだろ?』

「あ、そこなの?」

『当たり前だろ? 礼儀はしっかりした方が良いしな』


龍神としてってのもあるが、そこはチビどもの見本になる方がでかいし、大きくなってからなってなかったら困るしな。


「はっはっはっ、挨拶は省略することはあまりなれないが、礼儀をしっかりしていれば良いと思うよ? リル、ラメや。じーじが今年もお年玉をやろう。小鳥遊さんもな」

「じーじありがと!」

「ありがと!」

「わあ! ありがとうございます!!」


三日月みたいにほけほけと笑う菊一さん。今年も良いじいちゃんになってる。

確かに、言葉は省略しても礼儀をきっちりこなしていれば良いのかもしれねえ。実際に神社出身者がやってるし。


『さて、ラメ、小鳥遊。俺からもお年玉だ』

「せんせ、ありがと!」

「ありがとうございます! お姉ちゃん大好きです!」

「ラメも!」

『おっと』


まだ渡してなかったお年玉をラメと小鳥遊に渡せば、満面の笑みを浮かべて抱きついてくる小鳥遊と、小鳥遊を真似するラメ。小鳥遊はそんなに変わりはないが、さすが幼児だけあって成長が早いようで重みが増している。重みが増しているといっても、健康的な重みだがな。


「主! みんな! 宴の準備、整ったよ!」

「みんなの本丸から持って来てもらった御節やお餅もあるからね!」

「おせちっ!」

「おもちっ!」


俺のところの光忠と、ラメのところの光忠が声をかければ御節と餅に反応するチビ2人。この2人の正月一番の楽しみはお年玉よりも餅と御節らしく、リルは伊達巻と蒲鉾、数の子と枝豆の宝漬けが一番のお気に入りで、ラメは磯辺餅がお気に入り(ラメの光忠談)らしい。


『よーし、みんな待っていることだし、広間に行くか』

「「あい!」」

「「わかりました!」」

「今日はどんな酒を用意してんだ?」

『大物主神さまからもらった酒を薄めた奴と、大物主神さまから造り方を教わって俺が作った酒だ』

「ほう? それは楽しみだな?」


大物主神さまの酒と聞いて、飛燕や菊一さんは目を光らせる。去年の正月ん時に大物主神様の酒が美味かったこともあって、2人とも楽しみにしてたんだろう。


『お前ら待たせたな』

「主さん、みんな待ってたよ!」

「腹減った〜、早く御節食おうぜ!」

「主のお酒、早く飲みた〜い!」


やいのやいのと広間全体から声が上がる。みんな楽しみに待ってたんだな。なら、これ以上待たせるわけにはいかねえな。


『じゃあ、新年明けましておめでとう。今年もよろしく頼む。ということで、宴を始めようぜ!』


挨拶を簡単に済ませて宴を開始させる音頭を取れば、すぐに酒を飲んだり御節を食ったりし始める刀剣たち。チビたちや飛燕たちも御節や餅、酒に頬を緩ませているな。今年の御節もまた上手くいったようだな。


「んむ? おい天月。なんか庭の池が光ってるぞ?」

『へ? ……ホントだな』


菊一さん所と飛燕のところの御節に舌鼓を打っていれば、突然飛燕が庭の池を指差して来た。一応昼間ではあるが、太陽の光だけであんなに眩い光を発するなんてことはありえねえ。

これは……もしかして母さん?


「ほほほ、良き時に来たようじゃな。皆の衆、明けましておめでとう。今年も良き年になるよう祈っておるぞ」

『母さん!? なんでまたこんな所に!?』

「ぶはっ!? か、母さん!?」

「おや?」


やっぱりというか予測通り、先代の龍神様でもある母さんだった。ほんと、突拍子もなく来るから飛燕たちが驚いているじゃねえか。


『……こっち来る時連絡くらいください』

「なに、お主のこと故、堅苦しくなると思うてな。奇襲をかけてみたのじゃ」

『奇襲て……』


ホント、鶴丸以外で驚きが大好きなんじゃねえかってくらいアクティブだ……。まあ、堅苦しいのが嫌だってのはよくわかるが。


「ばーしゃま!」

「おお、リルではないか。大きくなったのぉ。小さき友も一緒かえ?」

「にゃ!」

「そうかそうか。リルの小さき友も近う寄れ。名はなんというんじゃ?」

「ラメっていいます!」


ほほほ、と笑いながらリルを抱き上げれば、ラメに来い来いと手招きをする母さん。リルが懐いていることもあってラメも警戒せずに、母さんに抱きついたりと懐いた。


「ちょっ、ラメちゃん!? お師匠さん良いの!?」

『ああ、問題はねえよ。母さん、子供が好きらしいからな』


ここに来たと思ったらリルを構うって光景が見られているし、短刀たちと話をする光景も見られているからな。俺の刀剣たちも、気にする様子もないし。


「ほほほ、小さき子は愛いのぉ。天月や、そなた、祝いの舞はやったのかえ?」

『いや、まだですが……』

「ならば妾と共に舞おうぞ。親子初の龍神の舞じゃ」


ほれ、早うせぬか、と、リルとラメを降ろして手招きをする母さん。一緒に舞う気満々だ。

どうすっかな……。


「天月、母である龍神様と親子水入らずで舞ってはどうだ?」

「俺も龍神様と天月が舞ってるのを見たい。先代と今代の龍神の舞って、かなりご利益ありそうじゃん」

「僕も見たいです!」

「私も! お姉ちゃんの舞見たいです!」

「ラメも!」

「にゃ!」

「主、俺たちも見たい!」


是非とも見たい! と全員が賛成の声を上げる。まあ、滅多にないことだしやるか。


『あいつらも所望しているみたいなので、舞ましょうか』

「そう来なくてはの」


予めに用意していたんだろう、神楽用の鈴を持った母さんの隣に凪扇を持って立てば舞を始める。母さんと初めて一緒に踊るが、初めてじゃない気もして楽しく思っている俺がいる。


「今年も良き年になるよう、妾は祈ろうぞ」


神楽を踊り終われば、そよ風が本丸全体を包むように吹き込む。たぶん、これで今年も何事もなく過ごせるだろう。


「ほほほ、今の風で我ら龍の加護がついた。これでそなたらには悪意あるものは来ぬじゃろう。さて、元旦はまだまだ終わらぬゆえ、楽しもうぞ」


俺が座っていた席の隣に腰掛ける母さん。今日は一日ここにいる気満々のようで、刀剣たちに混ざってどんちゃん騒ぎをし始めた。


『今年も、充実した良い一年になれば良いな』


そう呟いて、俺は菊一さんたちや刀剣たちと飲んだり食ったりと宴を楽しんだのだった。



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