クリスマス・正月企画 2018 | ナノ
異世界からの来訪者



これはとある日の朝に起こった出来事。

早朝に、いつものように山伏と同田貫とで鍛錬と言う名の修行をしていた時、ふと空気が割れるような感じがした。今までないことで、3人で道場から出て空を見てみれば空に穴が開いていた。

アレは……なんだ?


『山伏、同田貫、なにがあっても良いように油断するな』

「あいわかった!」

「おう」


木刀を持ったまま空いた穴らしきものを見つめる。すると、何やらばちばちと穴に稲妻が走り始めた。

……これ、何か来そうだ。なんて思っていれば、でっかい雷が俺たちのすぐ前に落ちて、衝撃波で吹っ飛ばされた。


「主殿! 無事であるか!?」

『問題ねえ。お前らは?』

「大丈夫だ」


なんとか受け身をとったから怪我はないが、まさか雷が落ちてくるとは思わなかった。つか、よくこっちに雷が来なかったな。


『……ん?』


ふと雷が落ちて土煙がもうもうと上がっているところから、何やら人の気配がする。それも複数人。とりあえず、今のアレで刀剣たちも集まってきたしこのまま様子を見るか。



「先輩、大丈夫ですか?」

「ああ、大丈夫」

「ここは一体……?」

「見たことないところだな?」

「なんか、屯所に似ている感じがします」

「しかし、落とされるなんて思わなかったな」


徐々に土煙が消えて来て、ここに突然現れた奴らの姿が見えてきた。どっかの学校かなんかの制服を着た男に、でかい盾のようなものを持ったかなり際どい格好をした少女、青いドレスを着た女性に赤いドレスを着た女性、ピンクと袴を着た女性、真っ黒な外套を着た男。この6人がそこにいた。

服装が和と洋とジャンルがごちゃまぜだな。


「おい、お前らは何者だ? 急に現れたようだが?」

「!?」

「お、俺たちは怪しいものでは……」

「ふむ……主殿、如何いたす?」

『まあ、これもなんかの縁だ。話くらい聞こう』


ということで、人数が人数だったこともあって俺の自室じゃなくて広間で話を聞くことにした。事実だと重要な書類とかがあるし、相手がどんなのかわからねえからな。

で、話を聞くと、どうやら俺たちと同じような存在らしく、ズレた歴史を修正しに行こうとしていたところ、なんかの弾みでここに来ちまったらしい。


『随分と災難だな?』

「まあ、トラブルには慣れてるから大丈夫」


あはは、と苦笑をこぼすのは女性や男性たちからマスターと呼ばれている男で、名を翔駒というらしい。で、翔駒をマスターと呼んでいた女性や男性たちはサーヴァントという存在らしく、過去の英霊なんだとか。

そのサーヴァントとかの説明は翔駒からではなく、サポートとして回っているロマニという男からだ。彼も刀剣男士や審神者のことに興味を持ったようだが、審神者のことについては企業秘密ということにさせてもらった。


『英霊と一緒に戦えるなんて、光栄なことだな?』

「はい、とっても頼りになります」

「私もです。……サーヴァントとしては未熟ですので、色々と勉強になります」

「そう言ってもらえて嬉しく思います。しかし、天月殿の方も有名な刀の付喪神と戦っていらっしゃるとか。とても素晴らしく思います」

『そうだな。……あいつらも、なんだか楽しそうだしな』


そう言って見つめるのは翔駒のところの沖田総司と土方歳三、俺のところの沖田組と土方組だ。清光と安定は、沖田総司が女性なのが衝撃的で色々とぎこちねえが、和泉守と堀川の方はかなり打ち解けているようで談笑に花を咲かせている。

他の刀剣たちもこいつらのことが気になるみたいだし、俺の部屋に入る以外は自由にしてもらうか。


『なあ、翔駒たちは帰る方法はあるのか?』

〔原因がわかればすぐに帰還できるようにするよ〕

『そうか。なら、それまでここに滞在すると良い。うちの奴らもあんたたちに興味津々のようだしな』

「ありがとうございます! 俺たちも少し気になっていたからありがたいです」


意見が一致したということで握手を交わし、彼らは自由にしてもらうことにして、俺は一旦自室に戻る。理由はもちろん情報収集のためだ。向こうだけが探すよりも、こっちでも探す方が手っ取り早いだろうしな。


*****


〜翔駒side〜


俺たちが投げ出されるように(というよりも落とされた)来てしまったのは、過去の時代ではなく遥か未来の異次元の世界で、俺たちと似たような使命を持った人たちの拠点だった。なんで俺たちがここに来てしまったのかは、俺やマシュたちにもわからない。一応、ロマンが調べてくれているけれど……。……無事に戻れるんだろうか?


「先輩、心配ですか?」

「まあね。……俺たちの世界の変動も気になるし、早く帰りたいという気持ちもある。けど……」

「……ここにいる付喪神が気になる、と?」

「うん」


天月の拠点である本丸の縁側に座って、ネロたちが小さい子たちと混ざって遊ぶ様子を眺めながら、マシュの言葉に頷く。

サーヴァントとは違う刀の付喪神という存在が、すごく気になってしょうがない。審神者という存在も気になるし……。……天月に聞きに行こうかな。


「おや? こんなところで黄昏て如何した?」


天月さんのところに行こう、そう思って立ち上がろうとしたら、俺の横に青い着物を着た優男が立っていた。この人も刀の付喪神、なんだろうか?


「え、ええと、審神者のこととか付喪神のこととか気になって……」

「おお、そうかそうか。ならば、刀剣男士のことはこの俺が教えてやろう。俺は天下五剣が一振、三日月宗近だ」


この優男は三日月宗近という刀らしい。……天下五剣がなんなのかはわからないけれど、こんなイケメンが側にいたら女の子はみんな恋に落ちるんじゃないんだろうか?


「ご丁寧にどうも。俺は翔駒です」

「ふむ、では、翔駒殿。俺たちのことで何が聞きたい?」

「ええと、じゃあ刀剣男士とサーヴァント、英霊の違いについて教えてください」

「ふむ、さぁばんとやらがなんなのかはよくはわからんが、俺たちは長い年月を生きた付喪神」


その名の通り神の端くれだ。そう言って三日月宗近はほけほけと笑う。その後も刀剣男士のことを教えてもらって、サーヴァントと刀剣男士の違いがなんとなくわかった。サーヴァントは、過去の英雄を俺の魔力と聖杯の力によって本体から召喚した分体で、刀剣男士は現在もある刀から召喚された付喪神だということだ。

似ているのは、人間の魔力を使って本体から召喚されたこと、過去の歴史を守ることだ。異世界でも、過去の世界を変えようとする奴らっているんだな。この世界では日本の歴史だけみたいだけど。

それからネロとアルトリア、小さい子たちが俺のところに来て談笑に花を咲かせた。


*****


〜天月side〜


あれからこんのすけからもらった情報をまとめ上げれば、一つの結論が出た。それは、検非違使だ。どうやらこの本丸に来ようとしたようだが、途中で消失してあいつらが来たような感じだ。

……検非違使に何があったんだ?


『この情報からすると、検非違使のここに来る力とあいつらが過去の世界に渡る力が交差した、って考えても良さそうだな』

「はい、そのようです。次元の方は私にはどうすることもできませんが……どうします?」

『そうだな……』


次元を超える力となると、龍神の力も使うことになるだろう。けど、この力は使ったことがないし成功する試しもない。故に不安がでかい。が、とりあえず報告だけはしておこう。もしかしたら、向こうも何かしらの対策を練っているかも知れねえしな。

そう考えを纏め、翔駒から借りた通信機を操作してロマンに事のあらましを伝えれば、向こうは向こうで検非違使の反応を正体不明反応として捉えていたらしい。そこまで情報が掴めていたのなら、解決まであと一歩。あとは次元をどう繋げるかだ。


『俺としての考えは、こちらの時間を遡るゲートを開いて、そっちの転送装置を発動させればいけるんじゃねえか?』

〔なるほど、そう言った方法もありか……〕


ふんふんと納得した様子のロマン。この様子だと今すぐに試そうと考えているだろう。が、俺もサーヴァントとかのことが気になるし、あいつとも話がしたいからな。


『ロマン、今の時刻は何時だ?』

〔今かい? ええと……ちょうど15時だよ?〕

『そっちの時間と同じ時間帯か。なら、20時を回ってから試そう。俺も翔駒たちと話をしたいからな』

〔わかった。ボクはこちらの準備を整えておくよ〕

『ああ、頼む。……終わったら少し休めよ? 声量に覇気がねえぜ?』

〔……お気遣い感謝するよ〕


通信機の電源を切り、翔駒の元へこんのすけとともに向かえば、刀剣たちと談笑して盛り上がっている翔駒たちがいた。この様子から打ち解けられたようだな。


『翔駒、通信機貸してくれてありがとう。お陰で有力な情報を得られた』

「それは良かったです。……俺たちは帰れるんでしょうか?」

『原因が掴めたからな、類似したことをすれば帰れるはずだ』


まだ憶測に過ぎねえけど。それも付け加えて伝えれば、安堵した表情を見せるがどこか寂しそうにも見えた。……まあ、こればかりは仕方ねえな。


『準備には時間が必要だ。およその時間として20時頃と思っていてくれ。それまで、お前の話を聞かせてくれよ』

「わかりました。えっと、天月さんの話も聞かせてください」

『良いぜ? ああ、あとそんな堅苦しくしなくていい。普通に話して構わねえよ。名も呼び捨てで良い』

「わかった」


縁側に座り、刀剣たちや英霊たちを交えながら俺の審神者としての仕事や時間遡行軍との戦い、向こうの世界での戦いの話をしたり、私生活でのハプニングなどの話をして盛り上がった。夕飯の時もまた同じで、食ったことねえものを前にして英霊たちが驚いたり、飲兵衛どもが英霊たちに絡んだりしたりと騒がしかった。

それから時は経過して20時。


『……ゲートを解放、っと』


ゲートのパネルを操作して、時代は設定せずにゲートを開く。すると、どの世界にも該当しない空気を感じた。


〔異次元に空間が開いた。これで帰ってこれるはずだよ!〕


通信機から聞こえた音声からすると、向こうもこちらの反応を感知したようだ。よし、成功したな。


「天月、今日はありがとう。色々とタメになったよ」

『俺の方もな』

「別次元の沖田くんもこれから頑張ってね」

「清光と安定もね!」

「トシさんっ! 俺、あんたをずっと誇りに思ってる! 誠の魂をこの胸に宿してる!」

「僕もです!」

「そうか。……今の主とともに、誠の魂を絶やすなよ」

「色々と楽しかったぞ!」

「また何時ぞやお会いしましょう」

「うん! 会えたらまた遊ぼうね!」

「はっはっはっ、そなたらの武運を祈っておるぞ」


それぞれに言葉を交わして翔駒たちはゲートを潜っていき、ゲートが閉じればそこにはもう誰もいなかった。


「行かれましたね」

『ああ』


かなりイレギュラーなことではあるが、それもまた良い経験だ。そう思う1日で、刀剣たちにとっても良い思い出となるような1日だった。

それから数日後、ゲート前に翔駒たちから無事を知らせる手紙が届き、全員で安堵したのだった。



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