ツイッターなどでつぶやいたコネタ置き場。
基本夢主のデフォ名で、変換はないのでご注意ください。


||| plus alpha

【甘い時間】



放課後、誰もいない教室で、一組のカップルが寄り添っていた。


「ほら、朧」
「うう……」
「ほしくないのか、ポッキー」
「……ほしい、けど」


なんでこんな体勢なの、と朧は涙が滲んだ瞳で三郎をにらんだ。



「たまにはいいだろ?」
「……お菓子はふつうに食べたい」
「じゃあ今日の夕飯の鍋は俺の“あーん”つきで……」
「………たべる」



最近は暑さもひっこみ、冴えた空気が朝晩周囲を満たし始めている。
絶好の鍋の季節に突入していたため、本日の夕飯は今年初の鍋である、と三郎は朧に伝えていたのだ。

そして彼は、それを逆手に彼女にあることを迫っていた。

曰く「ポッキーゲームしながらポッキー食べよう」。



「さ、三郎、なんでこんな、」
「まーまー。ちょっとはこういうカップルぽいことしてみたくてさ」

だめ?
と苦笑しながら微笑めば、朧は頬を染めて俯いた。


「っ……だ、めじゃ、ないけど……」
「じゃあ、こっち」


ぽん、と三郎が手で示したのは自分の膝の上。
今彼は空き教室であるこの部屋に放置されていた椅子の上に座っている。
その上に、乗れ、と。

笑顔で言っている。


「私重いよ……?」
「いや、重くない。むしろ軽いからな。今日は鍋だし、今度またうまいものつくるからちゃんと食べろよ」


急に真面目な顔になった三郎の勢いに、朧は押されながら僅かに小さく頷いた。


そして、



「う、……」
「ほら、やっぱり軽いじゃねえか」


俯きながら、朧は三郎の膝の上に腰を少しだけ下ろすが、すぐにぐい、と三郎に引き寄せられてしまう。


「ううう……」
「今日の鍋は俺特性の鳥団子鍋だぞー」


今にも恥ずかしくて死んでしまいそうな顔をする朧を宥めるように背中をさすり、囁く。
朧はついに、耳まで赤くなった。


「……三郎、わかったから、」
「ん。そうだな」


もうさっさと終わらせたい、という心持で朧はちらりと上機嫌な三郎の顔を見上げる。
にこやかに彼は、ようやく本題になる“もの”を取り出した。


「はい、じゃー朧はチョコのほうな」
「……食べたら、帰るからね」


わかってるよ、というように三郎は微笑んで、あるもの――ポッキーをチョコがかかっていないほうを咥えた。


「っん……」


そして朧はゆっくりと、その端から食べ始める。


甘めのプリッツと、それを覆う少し苦めのチョコレート。
絶妙な甘さと苦みのそのお菓子を、少しずつ、ぽきん、と音を鳴らしながら食べ進める。

徐々に近くなるその距離に、朧は心臓が爆ぜてしまいそうだった。

もうままよ、とばかりに、三郎の視線を受けた瞬間に目を閉じる。


瞬間、ぱきん、とことさら大きな音がきこえて、



「んんっ」



そのまま、三郎は朧の唇に喰らいついていた。



「んっ、あ、さぶろ、」
「やっぱりうまいな」


一瞬だけ唇が離されたと思ったらまた塞がれる。
もうお菓子はないのに、今度は朧に口内に残っているチョコを舐めとる勢いで、三郎はその舌を這わせる。


「ふぁ、ん、ひぁっ」


三郎の膝の上にちょこんと座ったはずだったのに、いつのまにか朧は三郎の制服を必死、すがるように掴んでいた。
ぎゅう、と握られた手は震えており、握られた肩口は皺を作る。


「……ん」
「はぁ、……」


ようやく長い口づけが終わると、二人の間には銀糸が繋がっていた。



「なあ、朧」
「っん、」



再び三郎は囁く。
それにびくりと朧は身体を震わせた。

瞳は長い口づけで酸欠になったせいか、今にも零れそうなほどうるんでいる。

それにぞくりと煽られながら、三郎はつとめてゆっくりと、冷静に言葉を選ぶ。


「帰って鍋、食った後、……どうする?」


誘いの言葉は、赤くなった彼女の顔を俯かせるのに十分で。


小さく告げられた「ばか」という言葉は、今でも三郎の制服を離さない彼女の、精一杯の抵抗だった。





Nov 11, 2015 23:41
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