ツイッターなどでつぶやいたコネタ置き場。
基本夢主のデフォ名で、変換はないのでご注意ください。


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【髪に鼻先を埋めた】鉢屋夢


「ちょっと……」
「んー?」
「……いい加減離して」
「嫌だ」


笑顔できっぱりと私の言葉を拒否する三郎。
その強硬な姿勢に、私は次の言葉を詰まらせる。

というか、今のこの体勢もなんとかしたい。

「…せめてこの体勢はやめたいんだけど」
「だめ」

ぎゅう、と。
私を膝の上で横抱きにしたまま、より密着度をあげる。

それに顔に熱が集まるのを感じて、なんとか離そうとするも、両手を取られているのでそれもできなくなる。

「朧」

耳元で囁かれる。
うう、と泣きごとを内心漏らしてしまうが、仕方ない。

「言っただろ、これは罰だ」

そう。
この前の実習で無茶をした、私への罰がこれだ。
「少しは反省しなさいな」という、くのたま筆頭直々に申し渡された罰。

ひたすら三郎と一緒にいる。
これだけなのだが、下手な課題よりも心臓に悪い。

彼女はきっと、ここまで計算したに違いない。

「っ、ちょ……!」
「ん」


べろりと耳を舐められる。
そのまま三郎の唇がこめかみを伝うのも感じて、私は身をよじった。
しかしもともとの体格差、そして“罰”を負っているということからそこまで動けない。

ちゅ、と水音が頭頂部あたりから聞こえた。

「……三郎は、嫌じゃないの」
「とってもいい罰だと思ってる」
「……ソウデスカ」

呆れた声でそう漏らせば、苦笑の声が降ってくる。
それにむっとすれば、宥めるように三郎の右手が背中をさすり、また引き寄せられて私は彼の胸に顔を埋めることになった。

「朧。あんまり無茶をするなよ」
「……うん」

ぎゅう、とこれまた強く抱きしめられた。
その言葉に、不安や恐怖が混じっていることをようやく私は悟った。

「しかしまあ、これは罰だからな」

でもすぐに機嫌よくにっこりと笑う。


「いつもはあんまりくっつけないからな。存分に楽しませてもらうからな?」


覚悟しろよ、と今度は私の髪に鼻先を埋めた。









【移り香は如何ですか】潮江夢


「文次郎!」
「お? ……柊か」

忍術学園正門前にて、外出届を事務の小松田に渡している最中のこと。
潮江は名を呼ばれ、その声のした方へ目を向けると、見知った顔。

「外出なのね、どこまで?」
「隣町までだ」
「じゃあ一緒にいいかしら?」

柊、と呼ばれた少女は微笑みながらそう問いかける。
かまわない、と幾分そっけなく潮江が答えるものの、その返答に彼女は嬉しそうに笑みを深くした。

「じゃあ小松田さん、私の外出届です」
「はい〜!」

てきぱきと流れるように柊は外出の手続きを済ませてしまう。
機嫌がいいな、と潮江はなんとなくそう思う。
そこまで楽しみな外出なのだろうか。


「それでは小松田さん、行って参ります」
「二人とも気を付けてねえ〜」


のんびりとした声が二人を送りだす。
その間も、彼女は嬉しそうな表情を崩さない。


二人揃って、隣町までの道を歩く。
そして、忍術学園が見えなくなるところまできたところだった。


「!? お、おい!?」
「そんなに驚くこと?」


ぎゅ、と柊が潮江の腕に抱きついた。

慌てる潮江に、かまわず柊はより身体を密着させた。



「お前な……!」
「こんな道端で、ってこと? それなら心配いらないわよ」


今どこからも気配ないし、と。
彼女は軽やかに笑う。

その表情は、彼女が最上級に機嫌がいい、ということを潮江は知っていたので、はあ、と一つため息をついた。


「……町までだからな」
「わかってるわよ」


彼女が、学園の内側にいるときはいつも潮江に気を使ってくれていることは知っていた。
そして今も、学園が離れた所まできたこと、それに気配がないことを気にしてからの行動。

……いつものことながら、本当に細かいよな。

彼女の気遣いはいつもありがたかった。
こういった色恋沙汰に潮江はまず慣れていないし、それによって向けられる好奇の目も好きではない。

それを彼女はちゃんとわかっていて、このように人前でくっついたりはまずしない。


だから、これはその反動なのだろうか、と潮江は頭の隅で思う。



「町にあたらしくお団子屋さんができたらしい」
「あそこの小間物屋の紅の色はなかなか人気がある」
「後輩達といっしょに買物に行った」
「妙な格好の行商人だと思ったら後輩達の変装の実習だった」


などなど。つらつらと。
とりとめない、ささいな出来事を話題に道を行く。

この時間が潮江は嫌いではなかったし、何より、柊自身の表情も明るいことが、潮江の機嫌も上昇させていた。


そして町が近づくと、彼女はいつの間にか離れている。


「……なあ」
「なあに」


そして、いつもの、くのたま筆頭である顔に戻っている。


それをなんとなくつまらない、と思いながら「なんでもない」、とこれまた妙に子供じみた声を上げてしまう。


「じゃあ、私はここで。そっちも頑張ってね」
「……おう」


彼女には、今日、実は実習がある、ということは話していなかった。
それでも何かしら感じ取ったのか、けれど明言は避けた表現での言葉。

しかも、“そっちも”、ということは彼女も、なのだろう。


「気を付けて行けよ」
「ええ、もちろん」


世の男が見惚れるような笑顔を浮かべて、立ち去る彼女。
その背中が消えるまで潮江は眺めていた。





――自分の着物に、彼女の付けていた白粉の香りが移っていること。

そのことを別の道を来た、実習のペアである立花仙蔵に指摘されるまで、潮江は気づいていなかった。



(このくらいの独占欲は、出してもかまわないわよね?)



慌てる潮江を想像し、別れた柊はまた、楽しそうに笑っていた。







【君の手の大きさに慣れた私の手】七松夢


「いっけいけどんどーん!」
「わあ!? ちょっと待って小平太ー!!」

勢いよく忍術学園から飛び出す七松小平太に、手を引かれたカナメはつんのめりながら制止の声をかける。

「えー? どうしたんだよー」
「ど、どうしたっていうかね……!」

二人は今から実習であった。
そのために隣町を経由し、違う土地へ赴く。
ということで、町でも不自然でないように私服姿である。
そして私服姿ということは、くノ一教室のくのたまであるカナメの動きは、学園にいるときよりも鈍くなる、ということなのである。

「ああ、そういえばいつもと違う格好なんだったな!」
「うん、そうなんだよ……」

だから手を離して、とやんわり伝えるつもりだった。
が、一度止まってにっこりと笑った小平太はたしかに歩調を緩めてくれた。

しかし、ぎゅ、と握られた手首は、今度は掌を伝い、指が絡まる。

「え、ええ!?」
「じゃあこうして行くか。これなら置いていかないだろうし!」

機嫌よく、小平太は笑う。
その目は確かに純粋で、いつもの小平太と何も変わらない。

「(うう……この、なんの下心もなさそうな目……! 意識してる私が恥ずかしいみたいじゃない!)」

顔が赤くなるのを自覚したので、「わ、わかった……」とどもりがちに答えるしかない。


しかしまあ、これももう、何度目だ、という話なので。


「町に新しい団子屋ができたらしいぞー」
「くのたまの間でも評判になってたわ」

とか

「後輩の変装の実習のアドバイスをこの前してみたの」
「くのたまの変装は見破れないとこちらが酷い目に合うからなあ」

とか

「長次が最近、やけにそわそわしてるかと思ったら、欲しかった本をしんべヱのお父上経由で手に入れることができたらしい」
「さすが福富さんねえ……」

などなど。
同級生、下級生、委員会の後輩、日常の話。

とりとめない、他愛無い話。

そんな会話をすることも、大分慣れてきた。

――そう、たとえ手が繋がれたままでも。

「(意識しちゃうと、それをなかったようにするのってホント大変だわ……!)」


それでも、カナメもくのたまの六年生だ。
表面上は“なんでもないように”することはできている。

内心は、どきどきがとまらなかったりもするが。

でも、と。
彼女は思う。


「(こうやって手を繋いで、とか。今だからできることよね)」


彼には出会ってから、本当に世話になっている。
その過程で、こうやって何度も手を繋がれ、引っ張られ……

彼の大きな手がこうやってカナメの手を握ってくれることに、彼女の手は慣れてきている。


「カナメ!」
「え、あ、なに小平太……?」


しかしながら。



「今回は、早めに片づけて帰りに一緒に団子を食べに寄ろう!」


その向けられる満面の笑みには、そうそう慣れてくれないようで。

はちきれそうな心臓の鼓動に、「う、うん……!」とこれまたどもった返事をするしかなかった。



Jun 29, 2014 03:15
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