||| plus alpha 『親指の爪を齧る』 「ふふふ〜♪」 昼休み。午前の授業をようやく終えた雷蔵は機嫌よく弁当箱のふたを開けました。 そこに現れたのは、焦げ目の強い卵焼き、煮崩れした野菜、脂っぽいエビフライにタコになりきれてないタコさんウインナー。 あきらかに栄養が偏るお弁当ですが、それを嬉々としてぱくぱくもぐもぐと食べていきます。 「おいしいなあ!」 「ソウデスカー……」 「ヨカッタデスネー……」 それを横目に、売店で買ったおにぎりやラーメンを片手に竹谷が、そして自分で作ってきたせつないお弁当を片手に三郎が。 「「(くっそ、彼女の手作り弁当とかうらやましいいいいいい!!!)」」 ギリギリしながら、それでも自分の昼食を食べていきます。 「やっぱり手作りって嬉しいね!」 そして更に追い打ちをかけるかのように雷蔵が微笑むと、 「「ウン、ソウダヨネー……」」 その微笑みを羨ましく思うことしかできない二人が、乾いた笑みで返しました。 『どこにいても気にしてる』 「げ、雨か」 本日の講義は2限目からだったので、1限目からの蓮よりも後になって住んでいるアパートをでた。 そのタイミングで雨が降り始めるものだから、今日はついてねえなあと思ってしまった。 ただまだ家を出たばかりだったし、時間にも余裕があるので急いで部屋にもどって傘を持ちだすことにした。 そしてそのときになって気付いた。傘を置く場所に、傘は2本。一本は俺の、もう一本は、いつの間にか増えてきている彼女の私物だ。 ここにあるということは、つまりあいつは傘を持たずに大学へ向かったということだ。 時間を見れば、まだ講義の時間帯。電話をするわけにはいかないが、メールを打っておこう。 『雨降ってきた。そっちに行ったら渡すから、講義終わったら連絡くれ』 学部が違うから、同じ大学でも会うことはなかなかないし、彼氏彼女なのに一緒に昼飯とかそういうこともさせてくれないので、これは大学で会ういい口実になる。 どこで落ちあうことになるだろうか。教室か、食堂か、学生ホールか。 兎にも角にも、そのときの彼女の顔を思い浮かべるだけでにやけてしまう俺の顔は、大分締まりがなくなっているに違いない。 (誰もいない通りでよかった!) 『置き忘れた仮面』 「朧ー!」 学園に帰ってくると、さっそく彼女の姿が見えたので呼びかけた。 すると彼女からは、 「誰」 警戒心剥きだしの声が届きました。 「っ、ああ! ごめん、今変装解くから!!」 そうだった今は彼女とはなんの面識もない人間に変装してたんだった! ということを思い出し、慌てて俺はべりっと仮面を引き剥がした。 「……三郎」 「おう、ただいま、朧」 笑いかけると、少しばかり落ち込んだ声で「おかえりなさい」と聞こえた。 その様子にぎょっとする。 「え、どうかしたか?」 「……ごめんなさい、あなただってわからなくて」 あからさまに気落ちする朧。滅多にないことなので驚いたが、けれどその様子にきゅんときた。 「……今度からは、間違えないようにがんばる」 「そ、そうか」 きゅ、と唇を噛んでまっすぐに俺を見つめる彼女。 これまたきゅんときた。 「じゃあ、とりあえず」 「とりあえず?」 ただいま!と俺は勢いよくかわいい恋仲に抱きついて、次の瞬間鳩尾に一発喰らいました。 May 06, 2014 23:54 browser-back please. |