「忘れ物、ありませんね?」


八戒のこの台詞も久しぶりに聞いた気がする。
ジープが人になって一週間経った今日、目を覚ますとまるで昨日までの事が嘘だったみたいにジープは元の白い竜に戻っていた。
私はあれは何か夢だったんじゃないかとも思ったけれど…


「っつーかよ、今朝のルートってアレ大丈夫なのかよ…宿屋のネーチャンがあの橋はアブねーから止めとけつってたぜ?」
「なら貴様は一人で走って来るか?」
「いえ、エンリョしまっす…」
「ぷぷ、言われてやんの」
「うるせ、このチビ猿ッ!!」


日にちはちゃんと一週間経っているし、確かにもう一人誰かが居た痕跡がある…
ならあれは現実だったのだろう
今思えばまるで夢の様な出来事だったけれど…


「うるせえ!!静にしやがれ!!!」
「「ぎゃああ!!」」
「あはは、騒ぐのもいいですが落ちないで下さいね ねぇ、翠花」
「……」
「翠花、どうかしましたか?」
「え、あ…ううん、何でもない!」


心配そうに私を見た八戒に小さく首を振って、ジープの車体を撫でる
目を閉じれば最後の夜にジープが言った『だいすき』という言葉が浮かんで、ゆっくりと消えて行った…






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