「……なんだよ、それ 那託……那託が生きてるって事?」


少し動揺してそう問うた悟空に李塔天は『そう』と小さく呟く


「お前の望み通り これからは『友達』とともに生きてゆけるのだ」
「――聞くな、悟空!!その男はただ、お前と那託を私怨の為に利用したいだけ……がはッ!!」
「金蝉ッ……!!」
「これはまた…よいお姿ですな 金蝉童子」


捕らえられていた男に床へと倒された金蝉を見て、李塔天が楽しそうに声を上げてゆっくりと近づいて来る


「…私は以前から貴殿を存じておりましたよ 生まれながらにしてすべてに恵まれても尚、退屈そうな顔を絶やさない 身分と気位ばかりがお高い貴族官僚―――私が最も忌むべき存在だ」
「―――ッ!!」
「〜〜〜金蝉ッ…!!?」


李塔天はそう言って、持っていた杖を振り下ろす
それを見た悟空は金蝉の元へと駆け寄ろうとしたが、直ぐに男達によって引き止められてしまう
それを見て李塔天は悟空に『よいか「斎天大聖」』と声をかけ


「抵抗すれば金蝉童子の命はないものと思え」
「………!!」


それはつまり、拒否権など端からない事を示していた
すると、言葉を失った悟空の後ろから『李塔天様!!』と一人の男が走り寄って『ご報告申し上げます!!』と声を上げた


「ここ天帝城地下実験房および地下三十階東棟にて謀反人・天蓬元帥、翡翠童子、捲簾大将 三名の討伐任務を完了した模様!!討伐に当たった賀孟元帥・抄雨大将を含む第四部隊は壊滅状態との事です!!」
「…………え?ケン兄、翠花姉ちゃんと天ちゃんが ――――どうしたの?」
「………」


静かになった空間に悟空のそんな言葉が落ちて、消えてゆく
金蝉は何も言えずに黙り込み、李塔天は聞かされた事実に杖をグッと握ると『……賀孟、抄雨までもが……』と呟いて、それを再び金蝉へと振り下ろした


「たかだか小鼠三匹の卑しい命ごときが 我が朋友を次々と道連れにしおって…!!」


李塔天のヒステリックな声が響く中で、悟空の能力に浮かぶのは昨日の夜の言葉


『……コレはな「指きり」ってんだ』


「――――…そだ」


『大丈夫ですよ悟空 僕らはずっと傍にいますから』


「―――うそだ」


『『約束』よ』


「この下賤者どもがあああ!!」


“この次はきっと、下界の桜の下で会おう”



「うそだあああああ!!!」


悟空の叫び声と共にまるで地響きの様な音が鳴る
弓矢を持って威嚇していた兵達が不意にその発信源であろう天井を見上げた刹那…


「―――な……」


まるで耐えかねた様にヒビの入った天井が崩れ落ちて行く
兵達が自分の身さえ守れずに次々と瓦礫の下敷きになって行く中で金蝉は懸命に悟空へと駆け寄ろうと試みるが、ついにはの姿さえも瓦礫に遮られ


「悟空……!!!」


金蝉の声もまた、かき消されてしまった……





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