“名前”なんてその個体を判断する材料に過ぎない、と今までそう思っていた。


「やっほー♪こんにちは。」
「………うわぁ…」


桃源郷の妖怪の暴走、その元凶である牛魔王蘇生実験を阻止するために西へと向かう三蔵一行
彼らの中に異世界からやって来た少女が加わったのは、もう随分と前のこと。
そして、僕は今まさにこの彼女にとても興味がある。


「相変わらずストレートに嫌な顔するよね、君って」
「…また今日は何しに来たんですか、用が無いなら帰って貰えますか」
「用ならあるよ、君をデートに誘おうと思って来たんだけどネ」
「………」


どうして彼女はそうやってすぐに胡散臭そうな、信用ならないって眼で僕を見るのかが分からない。
僕はめちゃくちゃ本気なのに
けれど相変わらず疑いの眼差しで僕を見てくる彼女に、僕はそんな眼で見ないでよと呟いた


「デートなんて胡散臭い」
「胡散臭くなんかないって、ホラ前にも言ったでしょ?僕とラボまで駆け落」
「しません。」
「えぇー」
「誰がアンタみたいなヤツの実験台になんかなるか」
「ねー、翠花ちゃん。アンタじゃなく名前で呼んでくれない?」
「ニイジェンイー」
「いや、そっちじゃなくってさ」


もう一つの方、と言うと彼女は少しだけうーんと何やら考えてから、こう呟いた。


「名前……なんだっけ」





(そんなのってないんじゃない?)





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