ある日、妖怪達の暴走を止めるために西へ向かえと言われ、男四人と少女一人で旅に出た。
少女は途中で別れてしまい、花のない旅路が幾日か続いたが、変な男に出会い、ソイツから少女が死ぬとわけのわからない予言を受けた翌日

空から少女が降って来た。

年は四人の中の最年少である悟空に近いが、身長は最年長の三蔵に近い
なかなか美人でスタイルもいいが、辛辣な所は自分の同居人である友人の八戒に良く似ている
おまけに自分と同じくらい目立つホワイトブルーの髪は、どうやら少女の居た世界では異色のソレだったらしい。
つまり、その少女―――翠花は俺達と何処か似ている(内面も)処があった
それが何時からだったろうか?
翠花が仲間であるアイツに好意を持っている、と気が付いたのは。




「――――何してんの?」
「………………喧嘩、した」




ちょっと煙草が切れたからと買いに行って戻って来ると、自室には何故か翠花の姿があった。
一瞬、自分が部屋を間違えたのかと思ったが、残念ながら今日は俺は一人部屋でそこは確かに一人用のベッドしかなかった。
因みに翠花は八戒と悟空は三蔵と二人部屋だ…こういう配置の時に限って何故か運が最強に良く大抵一人部屋になるのだが、最近は何だか上手く騙されている様な気もする

まぁ、早い話がつまりは此処は自分の部屋で此処に翠花が居るのはおかしいのだ
だから何をしているのか…と思いきや、彼女はただムスッとした表情で小さく答えるとそれ以上は何も言わなかった。
いや、この場合別に言わなくてもわかるだろうとあえて省いたのかもしれないが。
翠花と良く喧嘩する人物は二人居て一人は三蔵だが、三蔵と喧嘩した時には大抵、翠花は八戒の元へ避難する。
しかも今日はその八戒と同室なのだから喧嘩の相手が三蔵だとは思いにくい
ではもう一人は…それは少し以外かもしれないが八戒だ。
普段はお互いに気を使ったりしてるくせにこの二人は一度喧嘩になるとなかなか和解しようとしない…八戒も頑固だが、翠花も負けず劣らず頑固だからだと悟空が前に呆れた様に言っていたが、それは少しだけ違う。
何故なら…




「で、また何で喧嘩なんかしたんよ」
「……買い物…」
「買い物ぉ?」
「そう、買い忘れしたモノがあるって言うから…じゃあ私が行って来てあげるって言ったら『ダメです』って。」
「……まぁ、もう夜も遅いしなぁ」
「で、でも!すぐそこのお店なんだよ!?」
「それでも心配なんだろ?過保護だからな、アイツ」
「そんなの、知ってるもん」




俺の処へこうして来る時は大抵が自分が悪いんだと思って、どう謝ろうかと悩んでいる時だ。
別に三蔵や悟空でもいいんだろうけれど、それでも何故か俺の処へ来るのはアイツとの付き合いが一番長いと知っているからか…
とまぁ、こんな話をすれば大抵のヤツが感づくが、翠花が好意を向ける相手は八戒だ。
当の八戒もまんざらではない様だが、どうもこの二人お互いに不器用過ぎる(俺だって人の事は言えないが)
俺と後の二人もどうやらその事に気づいてる様だが、別にどうこうする気はない
何故なら、俺達もまた彼女に少なからず好意を持っているからだ




「知っててなんで喧嘩するかねぇ」
「……だって…」
「―――んじゃ、今夜は俺ンとこで泊まる?」
「それはいい。」
「即答かよ…」
「でも…うん、そうだよね これは慣れるしかないよね」
「そーそ、それに多分な今頃アイツもすっげーサエねぇツラしてんだろーからよ、さっさと仲直りして来いよ」
「うん、そうする」




また厄介なモンに惚れ込んでしまったものだとたまに自分自身に呆れたりする。
彼女の純粋さに触れる度に傷つけてしまわないだろうかとビクビクしたりもする。
今までなら絶対に味わえなかった感覚、これが恋をするという事ならば、俺は多分。




「じゃーな」
「うん、悟浄」
「…あ?」
「おやすみ、また明日ね」
「―――……ッ」




この、無邪気な笑顔一つで救われてしまうんだろう。





(なんてお安い幸福感!)




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