湯気の向こうに見えたのは、とても綺麗な白で
俺は一瞬、自分が何をみているのか判らなくなった。
まるで雪みたいに白い肌が熱を持っているからかほんのりと赤いくて…鎖骨がやけに綺麗だと思った




「―――う?」




誰かが自分を呼んでる。
視線を逸らしたいのに、何故かそらせなくて…
怖くなって思いっ切り目を瞑った。
視界に広がる黒。
でも目の中は先程の映像を鮮明に映し出していて離れない
一つ頭をふったら、少し上から声がした。




「大丈夫?悟空」




あぁ、そうだ…自分は確か風呂に入りに来たんだ。
鼻に付くのは声の主である翠花が何時も使ってるバラの石鹸の香り
恐る恐る顔を上げれば、少し困惑した風に此方を見る翠花の姿があって、改めてびっくりした。
だって、翠花のその姿は、バスタオル一枚を巻いただけで…ホワイトブルーの髪からはまだポタリポタリと雫が落ちてるし、普段見えない真っ白な太腿がキレイで何だか変な気分になる。




「体調でも悪い?」
「う、ううん!ただちょっと、びっくりして…」
「ああ…ごめんね、こんなカッコで」




翠花は何か理解したように自分の姿を見ると少しだけ照れた様に言って、浴室から出ると『ちょっと待ってね』と告げて背を向けるとバスタオルを解こうとしたので、俺は慌てて後ろを向いた。
なんていうか…翠花は時々凄く鈍感、というか常識ハズレな所がある。
多分、こういう事は八戒や三蔵から注意されてるからか大部屋とかの時はしないけど、俺と二人での同室の時とかは結構多かったりする。
下着姿で服を取りに来るのなんか、もう慣れっこになってたけど、流石にコレはダメだと俺も思う。




「あ、あのさ、翠花」
「んー?」
「えっと…今のはさ、俺がまだ入ってるって知らなくて開けちゃったのが悪ィんだけど…なんていうか、その…」
「?」
「ふ、フツーにさ!そうやって男…の前で着替えたりとか、止めたほうがいいと思う。」
「へ…何で?」




告白したって言っても俺が翠花にまだ男として見られてないってのは薄々わかってた。
気の合う友達……いや、もしかしたら手間のかかる弟として見られてるんじゃないかとも時々思うけど、それでもやっぱり俺だって男は男だし…悟浄や八戒とかからすれば、まだまだ青いガキかもしれないけど、やっぱり好きなコのそういう姿とか見ちゃえばドキッとするし、触りたいって思う

でもだからって無理矢理とか嫌だし、やっぱりちゃんと俺の事好きになって欲しいし。
第一、翠花の泣き顔なんか見たくないから。




「だっ、だって悟浄とか居るしさッ…そーゆー癖って普段から直しとかなきゃつい出ちゃうんだって、八戒も言ってたから…」
「…それも、そう…ね。」




八戒という名前を出したのが良かったのか、翠花は少しだけ声色を固くして意見に同意してくれた。
いや、もしかすると八戒にも何度か注意された事があるのかもしれないけれど。
とにかくまぁ、わかってくれたならいいやと思って、そっと振り返ると丁度翠花がキャミソールを着る処で、見えた白い背中にドキリとさせられた。
ぼうっと眼を奪われていると、翠花が不意に振り返って『ありがとうね』と笑った




「え?」
「だって私のために注意してくれたんでしょ?」
「あ…う、うん」
「だから、ありがと これからはちゃんと気をつけるね」
「――うん」




少しだけ、お節介かもしれないなんて思っていたから。
ふわりと笑った顔が何だかとても嬉しくって、俺はまるでつられる様に笑うと
やっぱり翠花は笑った方が一番可愛いと心の中で密かに思った。





(だから、その為なら俺は何だって出来る気がするんだ。)


お題:レイラの初恋



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