ずっと、手に入れたいものがあった…――――




「触らないでっ」




それは酷く綺麗で儚くて美しい…
まるでケガレを知らないみたいに。




「そんなに暴れると綺麗な肌に傷が残っちゃうよ?」
「……っ!」
「相変わらず強情だねぇ」




そんな筈はない
だって、あれからもう何十回と僕は彼女と肌を合わせてる
それなのに、どうしてだろうか。

普通の人間よりいちだんと白い雪の様な肌が震えている




「どうしたの?怖い?僕が?」
「怖くなんかな、…んん…」
「――――…うそつき。」




本当は怖いくせに。
怖くて怖くてたまらないくせに、合わせた唇から漏れるのはいつも強気な言葉ばかり。

だから、僕は君を壊したくなる。
白い絹肌に指を這わせて、鎖で繋がれた腕を撫で伝って細くて繊細な指に僕の指を絡めると耳元で囁いた




「ねぇ、助けてって言ってみたら?泣いて懇願すれば何か変わるかもしれないよ?」
「誰が……っ、アンタなんかに…」
「いやいや、別に僕じゃあなくてもいいの 君が頼りにしてる玄奘三蔵でも孫悟空でも沙悟浄でも猪八戒でも…誰でも構わないんだよ?」
「―――っ」
「まぁ、懇願した処で彼らが来る筈もないんだけどさ」




ジーと何処かで電子音が響く
それにピチャンと滴が落ちる音が重なった。
天竺 吠登城、本来ならば牛魔王蘇生実験が行われているだろう城内は死んだ様に静かだった…
それもそうだろう、事実そこには彼と彼女しか居なかったのだから。

城だけを残して、全てが消えてしまった…―――否、消してしまった。




「……だ」
「さあ、どうする?」
「……やだ」
「君は誰を呼ぶ?」
「い、やだ…いやだ、いやだ、いやだ、いやだ、いやだ!!!助けて!三蔵、悟空、悟浄、八戒っ!!!」
「ふふっ…可哀想にねぇ 彼らは君の存在すら忘れたっていうのに」
「助けて……いや…もうやだよ……はっ、かいっ…」




“牛魔王蘇生実験”の事実が無くなれば、彼らの“旅の意味”はない。
彼らは最初から旅なんかして居なかった…それが今の事実。
そう、つまり
三蔵一行は白青院 翠花に出会わなかったのだ。




「大丈夫、僕はずーっと側に居てあげるよ ずっと、ね?」




光を欲していた。
でもそれは伸ばせば逃げて行くばかりで、僕はそれが今度こそ逃げない様に…ただただ見ている事しか出来なかった。
けれど、それさえ出来なくなった
唯一の光さえ失って……そこで漸く僕は気がついた。


『失ったなら取り戻せばいい』


そう、早い話が僕は賭けから降りた。
ゴメンね、光明。
でも引き換えにこんなにいいモノを手に入れたんだ。
ずっと望んでいたもの。


眩いばかりの、一筋の光を…―――






(一度でいいんだ、僕の名を呼んでくれ)





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