その日、久々の宿屋での安眠から目を覚ますと既に朝食が出来ていた。
パンとコーヒーにハムエッグ、おまけに何時もなかなか起きてこない悟空や悟浄まできっちり起きておはようなんて言うものだから、少しばかり驚いた。
今日は一体どうしたんですか、なんて言いながらも朝食をとるために椅子に座れば、何時も一ミリたりと手伝いなんかしない三蔵が珍しくも砂糖を差し出した。
本当に今日は一体どうしたんだ…もしかして昨夜の夕飯に何か変なものでも入っていたんじゃないかと少しばかり疑いつつ、砂糖を受け取ってコーヒーに入れる。
一口飲んだその液体は、何時もより心なしか薄い気がした。

そして、そんな事があってから数時間後のこと。
隣の翠花の部屋から何やらぎゃいぎゃいと煩い声が聞こえた
朝から朝食は出来ているは、洗濯物も済まされて、洗い物さえされてしまえば後は特にする事がなくなった僕に、翠花はちょっとの間隣の部屋は絶対覗かないでね!と僕に念を押して隣の部屋へ入って行ったのだけれど、そんな彼女の努力虚しくもぎゃいぎゃい騒ぐその声は此方に筒抜けで、もう既に何故彼らが今日にかぎってこんなにも行動がおかしいのか、その理由に気づいてしまっていた。
そう、今日は母の日だ。
確か自分は男だった気はするのだけれど、まぁ…日頃の生活ペースややってる事はきっと世の母親と変わりないのかもしれない。(実際の方が数倍忙しそうだけど)
そんな自分に感謝をしてくれると言うならば、断然こんな行事よりも日頃の各々の行いを振り返って少しは改める反省をして頂きたい所なのだが…


「まぁ、無理…なんでしょうねぇ」


規則正しい彼らを思い浮かべて苦笑を漏らす
ぎゃいぎゃい騒ぐ声にキレたのだろう、三蔵の怒声とスパーンというハリセンのいい音が、皐月の空に響いていた。




Mother's Day
(何時もとは少し違う一日)

- 1/1 -


[*前] | [次#]



×
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -