それは、爽やかな朝の朝食の席での事。
少しばかり用意に手間取っている翠花を待っていると、不意に八戒が『あのー』と口を開いた




「あ?どーかしたか?」
「ええ、実は皆さんに報告をしなければいけない事がありまして。」
「報告?」
「何だ」
「翠花の事、なんですけどね」
「翠花チャンがどーかしたか?」
「子供ができたんですよ」




さらりと、まるで日常会話の様に言われた言葉に、三人は一瞬聞き逃しかけたのだが、頭で何度か反芻して漸く聞き流すべき事じゃないと判断したのか、悟空は『えッ!?』と声を上げて立ち上がり、悟浄は冗談だろという風に顔を引きつらせる。
そして三蔵は、飲んでいた茶があらぬ所にはいったのか激しく咽せた。




「お、オイオイ…冗談だろ?」
「そ、そうだよ!だって八戒が…そんなん」
「ええ、まぁ…気をつけてはいたん、ですけどね?」
「………」




三人が三人とも信じられないという表情を八戒へと向ける。
それもそうかもしれない、悟浄ならもしかしたら…なんて思うが、まさか八戒が…
呆然とする三人の前に、その時『お待たせ』と用意を終えたらしい翠花がやってきた。
つい、三人はまじまじとそれを見てしまう。
確かに…言われてみれば、此処最近雰囲気が違う気がするし少しお腹がポコリと出てる気がする…

そんな彼らの視線に気づく事なく、翠花は何時もの様に席に着くと、八戒と共に食事を始める
一方の三人はというと、何時もならうるさいくらい食べ物の取り合いをする悟空も悟浄も静かで、その上にあれもこれもと頼んでないものまで小皿に載せてくれる。
そんな奇妙な食事に翠花は漸く何かおかしいと気づいたのだろう、まじまじと彼らを見ると口を開いた




「皆どうしたの?何か今日はヘンだよ?」
「何、って…なぁ?」
「う、うん…だってあんま騒いだらお腹に良くねーだろーし…」
「お腹、って…何が?」
「妊娠」
「へ?」
「してるんじゃねぇのか」
「………誰が?」




悟空達のやり取りに違和感を覚えて三蔵が呟けば、翠花は困惑したような呆れた様な顔で首を傾げる。
ここまでくればもう明白だ。
翠花がとぼけてるとは思えない、そうなれば必然的に嘘を吐いたのは八戒という事になる。
未だ困惑する悟空は置いて三蔵と悟浄がその主へ視線を投げれば、彼はただ何時もの様にあははと笑ってこう言った




「皆さん、今日は何月何日ですか?」
「「…あ。」」
「………」
「?」




四月一日。
日付を思い出して意味を悟った彼らはいいが、翠花にはイマイチ意味が分からない。
一体どういう事かと問い詰める翠花と、それをのらりくらりかわす八戒を見ながら、三人は彼女に深く同情をしたのだった。





(好きなコほどイジメたくなるんです。)




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