今日、三年付き合っていた女性にフラれた。
同じ職場の上司で、長いダークブラウンの髪を綺麗に結い上げて、パンツスーツに本人曰わく苦手なピンヒールのパンプスで颯爽と歩く姿がとてもサマになる人だった。

フラれた理由は至極簡単、ただ仕事に差し障るから。
仕事終わりに呼び出されて、急に今日の食事は行けないなんて言われたから、じゃあ明日にしましょうかと言った僕に彼女は表情を変える事なく言ったのだ
明日も明後日もダメなの、だから悪いけど他を当たってもらえる?
私なんかじゃやっぱり君とは釣り合わないと思うし…

社内で彼女はロボットみたいだとか噂してる人はよく居るが、今日ほど彼女をロボットみたいだと思ったのは初めてだった。
だって、あんな言葉を顔色一つ変えずに面と向かって言うのだから。
そして僕の方はといえば、心の中に蟠りを抱えたままで、そうですかと頷く他になかった…
折角予約していたレストランは勿体無いからと、同僚の悟浄が付き合ってくれて
結構豪華な食事だった筈なのに、ほとんど味がしなかった。
しかも、赤ワインをグラスに一杯呑んだだけなのに意識は朦朧、悟浄に自宅まで連れ帰って貰うなんて失態を晒した挙げ句に今も廊下で寝転がって天井を眺めている。
こんな事ごときで情けないと怒られるかもしれないけれど、僕にとっては一大事で、考えてもいなかったこと。




「無駄になっちゃったなぁ…」




投げ出した鞄から書類と共にこぼれていたのは、本当なら今日彼女に渡す筈だった指輪で。
この日の為にレストランの予約を取り、こっそり彼女の薬指のサイズと好きなデザインを調べ、告白の決心まで決めたというのに…
薄灰色のケースを手に取ってから、一瞬どうしょうと悩む
捨ててしまおうかとも思ったのだけれど、なんだかそれも勿体無い気がして…
ぼんやりそんな事を考えているうちにゆっくりゆっくりと意識は薄れて、遂にその日はそこでぐっすりと眠ってしまったのだった。





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