私は別に今の生活に何一つ不満なんて持ってはいなかった。
いや、確かに何かと私を構いたがるお父さんとか、勉強勉強って口うるさいお母さんとか、プレッシャーになるくらい頭が良すぎるお兄ちゃんとか、顔を合わす度に喧嘩ばっかりの弟とか、何故か私にだけ強気の愛猫だとか…不満を上げたら確かにキリはないけれど、それでも私は友達と話したり可愛い服を見たり、漫画やテレビの話をして盛り上がったりするそんな平凡な世界が嫌いじゃなかった。


それは何時もと同じ夕暮れの帰り道だった。
少しだけ違ったのはその日、学校は夕方から害虫駆除の薬散布があるから授業が終わったら生徒は残らず下校させられていた事と、私が家の近くに着いてから現文の教科書を教室に忘れてしまった事だった。
現文といえば明日までの課題もある教科だから、まぁいいかなんて事も思えない。そんなわけで私は仕方なく学校へ引き返して、まだギリギリ開いていた校門を抜けてクラスの教室へと向かったのだ


「あった、あった…これで課題は大丈…」


ポツリと漏らした一人言と共に顔を上げて、私はビクリと身を引いた。
何故ならそこに人が立っていたから…


「八久保、お前まだ残ってたのか」
「先生…いえ、課題の教科書持って帰るの忘れてたんです」
「そうか、兎に角さっさと帰れよ 校門閉まると面倒だぞ」
「はーい」


一瞬、何か他の人の気配もしたのだが、気のせいだったのだろう
私は先生の忠告通りに急いで校門を抜けると帰路に着いた。

そして…







20.『おかえり』と言ったのは誰?





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