しかし、ほっと安堵したのも束の間だった…
カチャリと金属が擦れる様な音がしたと思ったら、助手席から金髪に紫の眼をした女性――いや、男の人か…運転席の人や私の隣りの人と年は同じくらいだろうけれど、何か違う…というか怖い。
そんな人が私に向かって銃を突きつけていたのだ
一瞬、一体何の冗談かと思ったが目の前の鋭い視線に何故かコレは本物だと確信して、ついつい両手を上げてしまった。


「貴様、何者だ」
「何って…」
「牛魔王の配下か?」
「牛…?」
「何故、俺たちの所へ来た」
「それは…観世音菩薩が勝手に」
「観世音菩薩…って、あのエラそうなスケスケの服着た?」
「はい」
「………」
「う、嘘じゃないです」
「………チッ」


どうやら観世音菩薩と彼らは知り合いだったようだ(どんな知り合いかは知らないが)
とにかくそれで私の疑いはひとまず晴れた様で、金髪の美人さんは銃をしまって少し乱暴にシートに座り直した。
それを見届けてから、運転席のお兄さんが『それで、何故此処に?』と話の先を促そうとした…のだけれど。


「どうせ貴様を連れて行け、とかいう事だろう…悪いがそれは断る」
「え?」
「素性も知れねえヤツと旅なんざ出来ねえ…第一、足手纏いは必要ない」
「……っ!」
「三蔵」
「事実だろう 次の街までなら送ってやる、そっから先は自分でなんとかしろ」


前にもこんな事があったのだろうか…それともただ単に彼自身が冷たいだけなのか…
分からないが、その言い方には流石に温厚な自分でもかなりカチンと来た
私は知らず知らず制服のスカートを握り締めていた手に力を込めて勢い良くシートから立ち上がると、無言で車から飛び下りた

そんな私の行動に紅髪のお兄さんが『おい』と引き止めたけれど、私はそのまま知らん顔で助手席の脇をすり抜けて行く
そんな私の背に先ほどの低い声が、ぶっきらぼうに『何処へ行く?』と訪ねて来て…


「アンタに、関係ないでしょっ」


振り返ればきっと感情が高ぶり過ぎて泣いてしまいそうだったから、空に向かって大声でそう返す
街が一体どっちの方角かなんて知らないけど、あんな嫌味なヤツと一時間でも一緒にいたくはなかった。
暫くマイペースに歩いていると、不意に後ろからエンジン音が聞こえて、今度は車が私を追い抜いた
紅髪のお兄さんと茶髪の男の子が少し心配そうに私を見ていたけど、私は直ぐに視線を空へと引き剥がして小さく『チクショウ』と呟いた。





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