『そうですが…何か不都合が?』
そう言った奴の言葉がどうにも不愉快だった
昔から馬は合わないと思っていたが、まさか此処までだったとは…
人間界…天上界や式世界から下界と呼ばれるそこへ帰る為に作られた扉の前に立つと、後ろからパタパタと走って来る足音が聞こえた


「昌ちゃん…」
「…さっきは怒鳴ったりして悪かった」
「――…ううん、いいの だって私も悪いもん…昌ちゃんが反対するだろうって分かってて行かせちゃったんだから」


『ごめんなさい』と言った白亜を振り返って頭を撫でてやる
すると彼女は『それからね』と言葉を繋いでこう言った


「翠花ちゃんの身体、今は“吠登城”にあるよ」
「吠登城…?何でそんな処に…」
「白亜には分からない…でも、もしかすると翠花ちゃんの持ってる何かが実験に必要…だからなんじゃないかな」
「実験に必要なもの……」


そんなものを彼女が持っているとは聞いた事が無かった、翡翠童子が持っていた力も普通の人間へと転生しただろう過程で既に大半が失われているのだ…
ならば、一体何が?

そう思ってからふと、ある事を思い出した
翡翠童子がその昔『祈りの巫女』と呼ばれたいわれ…


「願い…か……?」
「え?」
「翡翠童子は自らが滅ぼしかけた世界を祈る事で…願う力で支えていた」
「もしかして翠花ちゃんにもその力が…?」


分からない…けれど相手の目的がそうならば、翠花の身が危険だ……






『オアシス〜〜』





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