空は晴れ渡っていた。
それはもう、憎らしいくらいに。
気温は熱くもなく寒くもない筈なのに、鳥肌が立つ。
そんな私達の前に


「遂に見つけたぞ、お尋ね者の三蔵一行!!その首と経文、もらい受け……あれ?」


相も変わらずワンパターンな妖怪の群。
しかし、その先頭に立っていた妖怪は私達を見るなり少し調子っぱずれた声を上げた…まぁ、それもわからなくはないだろう。
何故ならば…


「…タイミング最悪だな オイ」
「う"ーのどいだいー」
「デカイ声出すんじゃねーよ 頭に響く…」
へッ くしょい!!
「…すみませんが 今日はお引き取り願えませんか」


一目見ればそれとわかる程に体調が最悪だからだ。
五人とも揃いも揃ってマスクで鼻から口元を覆っていて、悟浄は何時もと違ってジャケット掻き合わせてお腹を抱えてるし、三蔵はずっとこめかみ辺りを抑えている
悟空はずっとくしゃみ連発だし、八戒も咳で喋りづらそう。
因みに私は喉が腫れている上にリンパ腺辺りが痛くて、ろくに声も出ない
こんな状態なのだから、最悪と言わず何と言うべきか。

しかし、遠回しに『空気を読んでくれ』と言った八戒の言葉は呆気なく無視されてしまった。
まぁ、此処ではいそうですかと帰る様な妖怪なんてそうそういないんだろうけれど


「天下の三蔵一行が風邪とは好都合!!全員まとめて地獄に―――」


戦わなきゃいけないのかぁ…とまだ何もしていないうちから広がる疲労感にうなだれかけた時だった。
不意に隣にいた三蔵が低い声で『だから』とイラついた様に声を吐き出した。
眉間には何時も以上にシワが寄り、オマケにマスクで鼻と口元が隠れているから普段以上に双眸が恐ろしい。


「…でけェ声を出すなっつってんだろうが。


まるで怒りに呼応した様に三蔵の魔天経文が妖怪達を一気に薙払い、かき消す。
大量にいた筈の妖怪はものの見事に悲鳴だけを残して半数が消滅した。
それに対して周りは特に何も言わない。
無意味な労働の数が減ったのだから、今回ばかりは感謝したいくらいだ。
そんな事を頭の片隅に起きながら、翠花は残りの妖怪を倒す為に扇子へと手を掛けた。





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