「…それまで!!お兄ちゃんの勝ち〜〜〜!!」


天竺・吠登城内に李厘の元気な声が響く。
その声に、紅孩児がぴたりと動きを止めた。


「大丈夫か?」
「だいぶ調子が戻ってきたじゃねえか 前より動きが軽いかもしれんぞ」
「……いや……まだ全然だ あいつらを……三蔵一行を倒すには今の俺の力では足りな過ぎる」


『もっと強く』と言う紅孩児に独角は『焦る事はない』と告げて……


「何にせよこの間の一件以来、俺達は玉面公主からもカヤの外扱いだからな 気楽なもんさ」


『じっくり行こうや』と笑うと、紅孩児は『わかっている』と笑い返す……


が、


「お兄ちゃんが行くよりも先に サンゾー一行がこっちに着いちゃったりしてね!!」
「…………。」
「妹の言葉に負けてどーする」


無邪気に言って退けた妹の言葉の重い事……
そんな沈む空気の中『こちらにいらしたんですか』と声を掛けて入って来たのは、八百鼡で……


「どうした」
「ええ…今し方城内でおかしな噂を耳にしたもので 一応御報告をと思いまして…」
「おかしな噂?」
「なんでもここ最近 桃源郷内でかなりの数の妖怪が殺されているそうで」
「それってサンゾー一行の話じゃないの?」


李厘の言葉に八百鼡は小さく首を振ると『それが』と告げる


「西の大陸訛りの男と銃を持った大男の二人組らしいんです」
「西の大陸……人間か?」
「ええおそらく ……しかもその二人組が三蔵一行と行動を共にしていたという目撃例もあるみたいで……」
「……確かなのか」
「サンゾー達に仲間が増えたって事?」
「そんな団体行動取るような連中かぁ?」
「ともかく妖怪サイドも かなりの猛者達が三蔵一行討伐に名乗りを上げているようです」


そう言って彼女は『あ…それと』と、思い出した様に……


「何だ」
「幻術使いの雀呂も三蔵一行に寝返ったという情報があります」
「……それは…」


伝える


が……


「何か問題があるのか?」
「いえ 特に。」


哀れ雀呂、問題にすらならなかった……





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