短夜の頃は貴方と長くは一緒に居られない。ぼくは男だから子供を産めないのに、貴方とまたこの行為を繰り返す。けれども何時か貴方が女の人と身体を重ね、その人を孕ませて仕舞うのではないかと気が気で無いぼくは、行為の最中自分が女で無いことに吐き気を催す事が多々ある。その度にぼくは白い花を咲かすあの半夏を思い出す。ぼくは今日も、まるで目眩のように脳内をちらつく疑念に自分の浅ましさを恥じています。

でもあの時、貴方の首元へすがって居たあの腕の白さは認めざるを得ない。一層認めて仕舞えば、ぼくのこの心の凍てつきも治まってくれるのかもしれない。だってそうでしょう、貴方が幸せならばぼくはそれでいいのだから。

世界が真っ白く染まる頃、先端を溢れる白に舌を通わせる。黒ずんでゆく想いを隠して、貴方の気が離れてゆく迄は、ぼくは労働(はたら)きます。

でも…もうこれでお仕舞い。あの夏、貴方の側にずっと居られたら、ずっと貴方とこうして居られたら、なんて、叶わぬ幻想を抱いていた自分を其こそ浅ましく思いました。現在(いま)は、貴方が少しでも永く幸せに過ごせるのなら、娑羅双樹の葉の様に枯れてゆく事も、悪くは無いと思えます。…この天井を仰ぐのも、これで最期、

貴方以外と関係を持って仕舞えば、貴方と過ごした記憶を奪盗(ぬす)まれて仕舞いそうで恐ろしいです。ぼくが喉を遣うのは、貴方だけ、貴方だけなのに、

もうこれ以上何も知りたくなどない。一層このまま貴方の夢を見て眠り続けることが出来たらいいのに。ぼくがいくら貴方を自分だけのものにしたくとも、ぼくの付けた独占欲の証は、もう昔のこと。ああ!貴方の首筋はきっと現在(いま)はもう真っ白く透き徹って居る。もう貴方に触れられないと言うのに、ぼくは、どうしたら、どうしたらいいの!










20101130

東京事変
『修羅場』
より。

後書き





 












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