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お坊ちゃんなゲームワタル。
スペワタルは出ません。
続きは多分書かない。






「ワタル様!何をされておりますか!」

使用人の突如として上がった大声に驚いた。
思いのほか早く気づいたな。残念に思うよりも早く、使用人がこちらへ大股で近づくとオレが持っていたものを奪い取った。オレの手からそれはあっさりと離れ、使用人は動揺で乱れた息を整える。ああ、そんなに顔を真っ赤にして、まあどやされるのは自分だしなぁ。そんな反応をするのは当然と言えば当然か。
俺がこんな場所に入れば、それを止める事が出来なかった使用人の責任になってしまう。それから上に何を言われるかなど、容易に想像できた。それでもここに入ってみたかった。彼女には悪いとも思っていたが、好奇心と言うものは簡単には押し殺せないものだ。


「お怪我でもされたらどうしますか!」
「しないよ、大丈夫。貸してくれないか」
「だ・め・で・す」

念を押すように使用人は一言一言ハッキリと言った。その眼は、もう二度とするんじゃないという意思が込められている。その一回だけで、もう何を言っても無理だなと少し諦めすら見えた。オレの押し殺せなかった好奇心と言うものは、一度強く言われたら諦められる簡単なものだったらしい。
彼女たち使用人は立場上、オレに意見は出来ないのだけどこればかりは別らしい。あーあ、もう少しで出来たんだけどな、と彼女の見えない所でオレは肩を落とした。


ここは基本的に入る事の許されていない台所。
使用人がオレから奪い取ったのは、包丁。
オレは生れて初めての包丁で、野菜を切ろうとした。





「男子たるもの、台所に入るものではありません」

なんて、今時昭和みたいな堅苦しい考えを持ち合わせた古い家に生まれ育って二十年。数年前までこれが当然だと思っていたし、自分の生活にそれ程不満を感じた事など無かった。
だが友人を呼べば、オレの満たされすぎた生活に皆声を上げた。喉が乾けば使用人が飲み物を用意してくれるし、食べ物も同じ事。
当然学校の送り迎えは家の者が車を出す。
欲しいものがあれば、使用人に金を渡して買いに行ってもらえた。
友人の反応や言葉で、俺の生活が余所と違う事について知る事になったが、それほど気にしはしなかった。「余所は余所、うちはうち」という言葉があるのだから。この家では至極当然なことなんだ。そう思っていたさ。下手に逆らってみてみろ、後に面倒な事になるんだ。


ある男が現れた事で、そんな多くの事を知ったんだ。






―――――――

続き…書きたいけどね…。