彼はきっと私を愛してなんかいない、そして花の名前の私を愛しているの。
以前彼からの嘯く愛に惑わされた時間もあったけれど、もうそんなことはない。
だって私は今からクリアになるんだから!
現代日本、首都東京、踏切前、クリアになるまで30秒。
かりそめ:01
あの星もこの星ももう無くなっているのかもしれない、私の闇の中に光幾百もの星。嗚呼、なんて憂鬱なことなの?
見なきゃよかったわ
聞かなきゃよかったわ
私なんてとるに足らない存在で、ただの人間。
彼を受け止めるだけの器なんて、もうとっくに割れてしまったわ、嗚呼なんて悲劇なこと?
「かごめちゃん、どうしたの?」
教科書片手にぼんやりと座っていたら
珊瑚ちゃんが心配そうにこちらを覗きこんできた。
一瞬で思考を現実へと戻され思わず珊瑚ちゃんを見返した。
私の考えを見透かされたのかと思って少し驚いた。
なんでもないよ、と上手に笑い、珊瑚ちゃんに教科書を押し付ける、そして抱きつく。珊瑚ちゃんは吃驚して声をあげたけどくすりと優しく微笑みながら姉のように私の頭を撫でてくれた。
「相談できない?」
なにが、とぎゅうぅ、と珊瑚ちゃんを抱きしめながら問いかける。顔は彼女の着物へとうずめて。
きゃはは、と楽しそうに嘲えば珊瑚ちゃんは心配そうに私を呼ぶ声を落とす。
「犬夜叉と何かあったの?」
「犬夜叉?それ、誰?」
嘲いを含みながら言うとすごく驚かれた。うん、無理もないよね。だから冗談だよって言ってまた嘲った。
かりそめ
(珊瑚ちゃんは何かを察したように顔を曇らせた)
(かごめちゃんがおかしい)