緑間と共に暮らすことが決まったのはお互いの大学が決まってからだった。違う大学だが距離はそれほど遠くない。都内の大学だし大体お互いの大学生が住んでいる地域も近い。ルームシェアをすると言っても誰も怪しまないだろう。志望校にお互い合格してよかった。これでルームシェアができる。
 高尾は早速緑間にルームシェアを持ちかけた。まあ二人は付き合っているのだからルームシェアというよりは同棲だ。だが同棲なんて言ったら緑間は照れて話がややこしくなりそうだったのでルームシェアと言って話を持ちかけた。緑間は少し考えた後にわかった、と言ってくれた。
「うわあ、真ちゃん何やってんの?」
 同棲が始まってから数日が経った。緑間と暮らしてみて分かったのだが緑間は想像以上に不器用だ。今だって良く分からないが床に色々な物が散らばっているしガラスの何かが割れてガラス片が散らばっている。
「箱の中身を落としてしまったのだよ」
 緑間が不機嫌そうに足元に落ちている少し大きめの箱を拾う。恐らくラッキーアイテムの類なのだろう。散らばった様々な物を拾おうとしているがガラス片で怪我をしないか心配で高尾は緑間を制する。
「オレが拾うから。指、怪我したら大変だろ」
 困ったような顔をした緑間に笑いかけてそのまま落ちた物を拾い、ガラス片を片付ける。その間にも緑間は更なる事件を起こした。
 バン、と台所から爆発音のようなものがする。一体今度は何事かと思って台所へ急ぐ。電子レンジの前で緑間がおろおろしている。真ちゃん今日は厄日なのか、と思いながら高尾は問いかける。
「今度はどうした?」
「牛乳が爆発したのだよ……」
 電子レンジを開けてみればマグカップが二つ置いてあって、中に入っていただろう牛乳がほとんど零れていた。
「あー、温めすぎたんだな。真ちゃんって電子レンジ使ったことあるの?」
「……。バカにするな。それくらいあるのだよ」
「牛乳温めたことはないわけか。後で教えてやるよ」
 ケラケラと笑いながら高尾は電子レンジの中に零れた牛乳をせっせと拭く。全く緑間は次々と事件を起こしてくれる。目を離すと何をしでかすか分からない。普段緑間から目が離せないと言って憚らない高尾であるがいつもの意味とはまた別の意味で目が離せない。
 緑間はきっと家では家事の類はやったことがないのだろう。もっとも高尾も大学に進学が決まってから母親に家事を一通り習っただけなので拙いものだ。だが、緑間の家事のできなさ具合を見るに実家で習っておいて良かったと思う。緑間は不器用なのだ。これから一緒に暮らしていくのだし、少しずつ自分の家事能力をアップさせながら緑間にも教えていこうと高尾は考えている。何とかなるまではほとんど高尾一人で家事をすることになるだろうが、こうも頻繁に事件が起こるよりはいいだろう。
 別に事件が起こること自体は構わない。むしろ楽しい。緑間によって起こされる事件はどれも高尾を楽しませてくれる。いつもは押しても引いてもあまり動じない性質である緑間がおろおろしているところを見るのは楽しい。一緒に暮らしてみないと分からない事ってあるんだなあ、と高尾はしみじみ思う。これからもっともっと知っていこう。時間は十分あるのだから。
 今を十分楽しもう。厄介なことも全部楽しんで、毎日を輝かしいものとしていこう。それが高尾の決意である。




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 日常はウィスタリアヴァイオレット






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