緑間女体化・大学生設定


 朝が清々しいのは目が覚めた時に気分がすっきりしているからだ。気分が良くない緑間にしてみれば白く明るくなり始めた空は白々しくよそよそしかった。早朝の空気は冷え冷えしていて肺を鋭く刺してくる。気分的に窓を開けてみるがすぐにピシャリと閉めた。
 目がすっかり覚めてしまって不機嫌になる。二度寝できる気はしなかったし、二度寝する気はなかった。約束の時間までは数時間ほど時間がある。何をしてその時間を過ごすかを考え始める。
 とりあえずクローゼットを開ける。ロングスカートとシャツにニットを取り出して素早く着替える。洗面所に移動すると廊下の冷たさが襲ってくる。洗面所で顔を洗ってからブラシを取って髪をとかす。
 高尾が長い方が好きだと言ったからすっかり切るタイミングを逃してしまった髪は少々邪魔だが切ろうとは思わなかった。ハーフアップにまとめる。気を付けて手入れをしている髪はさらさらとした手触りを維持している。
 さっさと朝食を食べながら温かい飲み物を飲んで温まろうと思う。それなのに頭にチラつく夢の名残が食欲をどこかへ連れ去ってしまって食べる気がしない。ため息ひとつ、洗面台から部屋へと移動する。脳裏に留まる悪夢の残像が不愉快でしょうがない。
 よりにもよってデートの日に高尾が死ぬ夢を見るなんて最悪だ。あまりにもリアルで脳裏に焼き付いてしまった。緑間は忌々しそうに頭を振って悪夢を追い出そうとしたが無駄だった。

「真ちゃん今日も可愛いね」

そう言って嬉しそうにする高尾はそっと緑間の髪を撫でる。内心ドキッとするも顔には出さないでおく。顔に出したら高尾は調子に乗るということが分かっているからだ。調子に乗った高尾は少々厄介だ。だから調子になど乗らしてやらない。これは緑間が常々思っていることだ。
 体温が高いせいなのか高尾はこの寒い日にも薄着だ。コートをしっかり着込んでいる緑間と対照的に薄着でおしゃれな格好をしている。おしゃれは寒いと誰かが言っていた言葉が脳裏を駆けていく。男性のファッションなど知らないが高尾はおしゃれだと分かる。それを言ったらやっぱり高尾は調子に乗るので言わない。
 今日のデートは人通りの少ない穴場として口コミで広がっている場所である。以前よりは人が増えたらしいがそれでも混雑はしないらしい。人混みが苦手な緑間にもってこいの場所である。店が開き始めたばかりの少しザワザワした空気を吸い込む。静けさの中にも活気があって良い雰囲気だ。ウキウキしたのが伝わったようで高尾が嬉しそうな顔をしている。かといってテンション高く騒ぐわけではない。高校の頃ならそうしていただろう。大人になったのだと実感する。
 他愛ない会話をしながらブラブラと歩く。不意にあの悪夢が閃く。見たことのある風景。再生される音に続くようにやってくる大きな音。
 人事を尽くしているのは高尾も同じなのに。彼は運命に選ばれないのだろうか。夢では高尾だけが死んだ。でもこんな世界なら。何回繰り返そうと選択する答えは一つだけ。



 運命に選ばれないのならその運命を選ばない







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