シャボン玉飛んだ 屋根まで飛んだ
 屋根まで飛んで 壊れて消えた


 そんなふうに歌いながら高尾はふーっとシャボン玉を飛ばした。わらわらとシャボン玉ができて群れている。ふわっと風が吹いてはシャボン玉をてんでバラバラに飛ばしていった。キラキラと空を舞う姿は輝いていてとても綺麗だ。


「キレーだよな、シャボン玉って」
「わざわざ呼び出したと思ったらシャボン玉か」
「ダメ?」
「高校生にもなってやるとは思ってもみなかったのだよ」
「やるって、真ちゃん見てるだけじゃん」
「ならば帰ってもいいな」
「え、うそ。わーゴメンゴメン。帰らないでっ、一緒にやろうよっ」


 帰る、と踵を返した緑間の服を慌てて高尾が掴んだ。有言実行な緑間であるから帰ると言ったら本当に帰ってしまう。頑張って説得して家から連れ出した意味がない。またしても高尾は緑間を説得する羽目になったのだった。
 なんとか説得して留まってくれることになったが、緑間にもシャボン玉を勧めてもやってはくれなかった。それでも留まってくれただけいいか、と高尾は納得することにした。


「オレさー、今年の夏は真ちゃんとどっか遊びに行きたいな」
「遊びに…?そんなことより練習なのだよ」
「練習オフの時あるだろ。どっか遊びにいこーぜ」
「面倒くさい。それにオマエは宿題を早めに終わらせることが先決ではないのか。遊びに行っている場合か」
「うっ…。そういう真ちゃんはどうなのさ」
「オレは夏休みが始まってからすぐに終わらせるのだよ。早く終わらせてしまえばそれ以外の勉強ができるだろう」
「それはそうだけどさー」


 ふーっとまたシャボン玉をつくる。シャボン玉はすぐに離れていってしまった。


「オレは真ちゃんといろんな思い出をつくりたいんだよなー」


 部活動がある限り高尾は緑間の傍にいられるだろう。だが引退したときにクラスが違っていたらどれだけ緑間の傍にいられるのだろうか。大学生になった時に傍にいられる可能性はどれほどのものだろうか。そう考えると高尾は悲しくなるのだった。だったらそれまでに思い出をたくさんつくろうと思いついたのである。たくさん思い出をつくろう。いつか別れてしまう時に寂しくないように。
 しばらく無言が続いた。シャボン玉がキラキラと綺麗だった。




離れ離れになる前に
(せめて一緒に居させてください)



Title by Aコース






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