女体化注意
ふわふわとしてゆるくカールしている長い髪を小さく揺らしながら緑間は料理している。そんな光景を高尾は至福そうに眺めている。
高尾と緑間が付き合いだしたのは高校二年の夏からだ。膝丈のスカートに夏でも黒タイツといういかにも真面目な姿が懐かしく思える。ストイックな緑間に魅かれるまでに時間はそうかからなかった。ひたすらにシュート練習をし続ける緑間の姿は高尾の心を掴むのには十分だった。
緑間はとにかく奥手だ。付き合いだしてからもなかなか手すら握らせてくれなかった。なかなか進展しない状況にやきもきしたが何とか耐えてきた。キスを許してくれた時の感動は言葉にしても表現できないくらい嬉しかったし、それ以上を許してくれた時のことは一生忘れないだろう。辛抱強く緑間の心の準備ができるのを待ち続けた結果、大学生になっても二人の関係は良好なものとなっている。
背が高く、バスケをしていただけあって健康そうな見た目とは裏腹に彼女はとても脆いということを高尾は知っている。だからよけいに守ってあげたくなるのだ。たとえ本人が望まないにしろ、ひっそりと守りたいと思うのだ。
「そんなにジロジロ見るな高尾。鬱陶しいのだよ」
料理をする姿を眺めていたら棘を含んだ言葉が発せられる。それが照れ隠しであることくらい高尾は分かっている。
「えー、いいじゃん。真ちゃんが料理してるとこ見るの好きなんだ」
「気が散るのだよ」
「気にしなさんない」
「気にする」
こんなのはいつものお決まりのやり取りだ。高尾はヘラヘラと笑って答える。
「だったら手伝うのだよ。その方がマシだ。お皿の準備をするのだよ」
「はいよ」
緑間に言われて必要な食器を棚から出すともうテーブルに持って行ってもかまわないものだけテーブルに持って行く。仕事はすぐに終わってしまった。だからまた後ろから緑間を眺めていてもいいのだが、きっとまた照れてしまうだろうからと思って緑間の横に並ぶ。緑間は予想の範囲内の行動だったのか何も言わない。大学生にしては広めのキッチンは二人で並んでも窮屈ではない。
「そう言えば、先週黒子に会ったのだよ」
「へー、相変わらず火神と付き合ってるの?」
「そのようだ。二人で駅前に居たのだよ」
「ふーん。二人とも元気そうだった?」
「ああ」
昔のチームメイトを語る口調は心なしか穏やかだ。確執は色々あったようだが、それも昔の話。今ではすっかりしがらみもなくなって懐かしい友という関係になったようだ。高尾はそれを嬉しく思う。自分以外にも緑間には心許せる人が何人も必要だから。
「なー真ちゃん、明日遊びに行こうぜ」
唐突に話を変える。緑間の心が自分以外にも向くのは良いことだ。だが、嫉妬してしまうのもまぎれもない事実である。緑間を独り占めしたいと思うのはもはやしょうがないことだ。
「しょうがないから行ってやるのだよ」
高尾の気持ちに気が付いているのかいないのか、それでも承諾してくれるあたり緑間は優しかった。
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