体育館の点検だとかで部活が休みになった。これは良いチャンスである。高尾は喜んで緑間を遊びに誘った。予想した通り緑間の返事は「行かない」というものであった。
 緑間が二つ返事で高尾の誘いを承諾したことはない。ツンデレさんだから、と高尾は理解している。高尾がしつこく誘ってくるからしょうがないという状況になって初めて承諾してくれる。全く素直ではない。だがそこが可愛いと思ってしまうあたり高尾はどこか重症だと自分で思った。

「なー、遊ぼうぜ。場所は真ちゃんの好きなところでいいから」

 何回目かの誘いの話に返事はない。これは何と言って承諾しようか考えている印だ。高尾は嬉しくなって心の中で笑う。

「しょうがない。オマエの家にでも行ってやるのだよ」

 そう言われたとき、高尾は天にも昇るような気持ちになった。これはデレである。なかなか自分の家に入れてくれないし、高尾の家にも来てくれない緑間である。一体どんな風の吹き回しか分からないが高尾は嬉しかった。

 ピンポーン。チャイムが鳴って緑間がやって来たことを知らせる。高尾は大喜びで玄関に向かった。

「おはよ、真ちゃん」
「ああ」

 緑間を部屋に通した高尾はキッチンでお茶を用意してから部屋に戻った。戻ってみると緑間が何かに視線を向けている。

「真ちゃん?」
「な、なんでもないのだよ」

 訪ねてみれば誤魔化された気がする。緑間が見ていたのは机の向こう側だ。お茶を机に置くと机を回り込んで覗き込む。そこには音楽プレイヤーが落ちている。床に置きっぱなしにしていたことを思い出す。

「何?これが気になったの?」
「何を聞いていたのかと思ったのだよ」

 高尾は音楽プレイヤーを持ち上げて問いかける。興味があったのか緑間は素直に頷く。

「ほい、イヤホン」

 自分の右耳にイヤホンをつけると高尾は緑間の左耳にイヤホンをつける。緑間は驚いていたが気にしないで高尾は曲を再生させる。曲名が気になったのか緑間が体を寄せてきたのを感じる。振り向いたらきっと緑間は照れてしまうだろう。だから高尾はそのまま動かずに曲を聴いている。二人でこうして聴くことになるとは思ってもみなかった。高尾は内心ドキドキしている。ドキドキしながらこの曲を思い出の曲にしようと思う高尾であった。


共有イヤホン序曲






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