バダップはとても優秀である。士官学校でトップをとり続けているのだからその実力に関しては疑うものはいないだろう。
 そのバダップが現在困惑していた。理解不能な現実に突き当たって困惑する以外の行動を奪われていた。彼らしくもなく分からないが故に立ち尽くしていた。


「意味が分からない」
「え、だから、愛してるよ。バダップ」


 意味が分からないので正直に言ったところ、再度意味の分からない言葉を投げかけられてしまった。目の前の男、ミストレーネ・カルスによって。


「全く意味が分からない。分かるように話せ」
「いや、だから愛してる」


 意味の分からない言葉しか話さないミストレにバダップはほとほと困っていた。ここにエスカバがいれば何かしら分かる様に解説してくれたかもしれないと秘かに思った。
 女の子ならひとたまりもないような極上の笑みを浮かべながら愛してる、を繰り返すミストレとそれに無表情で返すバダップは見ていても滑稽としか言いようがない。


「分かる様に言えないのなら話は終わりだ。次からは分かる様にまとめてから話しかけてくれ」


 時間の無駄だと思ったのだろう、バダップは冷たく言い放って去って行った。


「愛してるよ、バダップ」


 去り際の背中にそうミストレが投げかければ、一瞬足が止まったが、振り返ることなく去って行った。


「いいんだよ、分からなくても。そのうちわかるさ。オレは焦らない。焦らず君の愛を手に入れてみせるさ」


 そうミストレは呟くと足取り軽く部屋を出て行った。



わからなくていいの






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