うさみみ
ウサギルドで私たちはうさみみのアタッチメントをもらった。エステルは可愛いと気に入ってたし、リタやジュディスも、もちろんわたしもたまにはってことで着けて遊んでる。フレンも恥ずかしがりながら着けてくれたりするのに、ただひとりだけ、絶対に着けないと頑なに拒む男がいる。
『ユーリぃうさみみつけてよー
この格好で戦闘しようよー
ぴょーンって感じで高く飛べた気になれるよー?』
「実際はかわらないだろ」
『冷たいっ!』
そう、頑なに拒む男とは私のリーダー的存在のユーリ。彼はこのうさみみを貰ったときあろうことかそのうさみみを床に投げつけた。
「ハイト、いいわよもっと押しなさい!」
「ハイト!ユーリを説得させてください!」
「仲間は多い方がいいわね」
「ユーリ、諦めたらどうだい?」
「お前らな、そんなこと言っても俺は絶対つけねえからな」
と、ユーリは皆の言葉を一蹴。
だが、こんなところで諦める私ではないのだ!今日こそはユーリにうさみみつけさせるまではいくらでも食いついてやるー!
「意気込んでも無駄だぞ」
『なぜばれた?!』
「お前はわかりやすいからな」
「僕から言わせてみればユーリもわかりやすいよ。ハイト、ちょっといいかい?」
『んー?』
「あ!おい待て、ハイト!!
って、行っちまったか…
やな予感しかしねえ」
ユーリから少し離れた場所へフレンは私を連れ、そして私の耳元に口を寄せる。もちろん今つけているうさみみの方ではなく私の自前の耳にだ。
フレンが小さい声で教えてくれたことはユーリにうさみみを絶対に着けさせる方法だ。
本当にそんなことで?と思う内容だったが、フレンの絶対と言う言葉を信じて実行を試みた。
私はユーリの前にうさみみ(紳士用)を持って立つ、フレンには上目遣いがいいとアドバイスされたから自分なりに上目遣いをしてみた。あ、それともうひとつフレンに云われたこと、うさみみ(紳士用)を胸の前で持つこと。
「なんだまたハイトか…って…は?」
『ユーリ…っ』
「な…なんだよ」
あれ、ユーリの反応がさっきと違う!なんか、顔赤い?
これは…?期待が…?できそう…?
ちらりとフレンを見れば親指をたててこっちに向けている、どうやらこれでいいみたいだ。
『お願いっ、これ…つけて?』
私はユーリのうさみみ(紳士用)を彼に差し出した。
フレンからのもうひとつの助言、それは自分をかわいくみせること、だった。果たしてこれでいいのか、とフレンに試してみたけど鼻血だしてグッジョブってしてきた。気持ち悪かった。でも、それでいいみたいだし、ユーリにも同じことしてみたけど…効いてるってことなのかなァ?
「フレンのやろう…!」
と、ユーリはフレンをにらみつけて、そっちに行ってしまいそうだ
『まって…!』
どうしてもうさみみ(紳士用)をつけてもらいたかった私はとっさにユーリの服をつかんで彼を引きとめた。
「ハイトっ」
『ユーリ、いかないで…』
「……ハイト、おまえ…」
『お願いだから、これつけて…!』
「あのなあ、ハイト…」
『ダメ?』
と、首をかしげてみた。さすがにこれはぶりっこ過ぎたかなあと思いながらもユーリはなぜか悶絶していた。
「ハイト…!わかった…!つける…!
おまえっ、うさみみでとか・・・わかってやってるだろ…!
(ったく、こんなかわいいハイトに言われたら断れねえだろ、フレンのやつわたってハイトに吹き込んだだろ)」
『つけてくれるんだね!やった〜!!!
みんなあ〜ユーリつけてくれるって!』
「おまえが喜んでくれんならなによりだよ」
『なんか言った?』
「夜覚悟しろよ」
『よ…る…』
「恨むならフレンを恨めよ」
私には乾いた笑いしか出てこなかった。
ユーリは約束通りいやいやにだったけどうさみみをつけて戦闘してたけどなんだかめちゃくちゃ滾ってた。とてもかわいらしいうさぎには、見えなかったけどそれでもうさみみつけてくれたし、それでよしとしよう!
そしてその日の夜、私という可愛らしい兎は兎の皮をかぶった狼にべられてしまいましたとさ。
もうユーリにうさみみつけてと頼むことはやめようと思った。
END
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