旅立つ
遠くへ行きたいといつも思っていた。
じゃあ旅に出ればいいじゃないかと思うが旅に出るということは容易なことではない。結界魔導器がない場所には魔物が平然と姿を現し、私たち人間に危害を加えるのだ。
力のないものは傭兵や騎士団に護衛を頼まなければならない。それにはお金がいる。あいにく私にはそんなお金がない。力もない。
それに、私の暮らす帝都ザーフィアスは結界魔導器がありその外に出て危険を冒す必要もない。
そんなある日、私の住む下町の有名人ユーリがなにやら騒ぎを起こしたらしい。ユーリと私の関係をいえば昔からのお友達といったところだ。会えば会話するし、一緒遊んだりもする。他にも二人で悪いことをたくさんしてきた。騎士団相手に喧嘩したり、勝手にフレンのところに忍び込んだり。
ユーリはこのまま結界の外に出て旅に出るらしい。うらやましい。しかもかわいらしい品のある女の子と一緒だ。ユーリはどこに行くんだろうか。この広い世界の何を見るんだろうか。
そんなことを思いながら私はぼけっとさっていくユーリを見ていた、しかし彼は何か探しているようであたりを見回している。
何を探しているのだろうと思っていると、彼の愛犬ラピードがいつの間にか私の隣にいてワンワンと吠えている。きっとかわいい女の子を連れたユーリを呼んでいるのだろうとすぐに分かったが…ここには私しかいない、ラピードはユーリに私がここにいることを知らせているようだった。
ラピードの声にこたえてユーリがこっちにきた
「ここにいたか」
『え?』
「この人は?」
「自己紹介はあとだ、いくぞハイト」
『行くって…?』
「おまえ、言ってたろ、外の世界を見たいって
だから、行こうぜ」
『でも私…』
「結界の外に出るならお前とって決めてたんだよ」
ユーリは有無をいわさず私の手を引いて「いくぞエステル」といって走って帝都の、結界の外に出てしまった。
そこには広く大きな大地、自然が広がっていて目に入るものがすべて初めて見るもので、世界はこんなに広かったのだと単純だけどとても素直な感動を覚えた。
騎士団の追ってくる姿も見えなくなった。なぜ彼らが騎士団に追われているのかはわからないでも、それはいつものことだけど、旅に出た理由まではわからないけど私を結界の外に出してくれたユーリに感謝の気持ちでいっぱいである。
『ユーリ、ありがとう』
「おう」
「ユーリ、誰なんです?」
「んー、将来のおれの嫁さん、かな、なあハイト?」
『ちょ?!はあ?』
「まあ!素敵です!婚約者なんですね!」
「っつーわけだこれからよろしくな、ハイト」
それってどっちの意味のよろしくですか、ローウェルさん?
「よろしくです」
『よろしく、おねがいします』
私は二人に手を差し出した
君と旅立つのは
同じものを見たいから
(君とならどんな道も歩ける)
(どんな覚悟もきみとなら)
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