うばいあい


「ユーリィ〜〜!!!」

「しつこい野郎だな!」


ユーリ・ローウェルはたびたびザギという暗殺者に狙われる。理由は簡単で、ザギがユーリを気に入っているというだけだ。だから旅の最中に彼が殺しにくる。

だが、それも今日は違った。


「なんだァその女」


ザギの目に留まったのはハイトだった。

ハイトとは最近仲間に加わったばかりの少女でザギと対面するのははじめてだ。


「こいつに用かよ」


そういったユーリはハイトをかばうように彼女の前に立つ。


「ユーリ、おまえはいいモノ持ってるなァ?」

「なんのことだかさっぱりだな」

「その女をよこせ
よこせば今日のところは引き揚げてやる」

「残念だったな、こいつは俺らの大事な仲間だそう簡単に渡すかよ」

『なに・・・こいつ・・・?』

「俺になぜか付きまとってる変態やろーだよ」


剣を構えたままユーリはザギをにらみつけている。


「女、名前はなんだ」


ザギはハイトに直接声をかけた。


『あなたに…名乗る名前は、ない…』

「くく…いいな、その反抗的な態度、気に入った」

「おまえの狙いは俺じゃねえのかよ」

「そうだ、だが、いまはその女がほしい」

「だめだって言ってんだろ」

「なら力ずくで奪うまでだ!」


その言葉とともにザギは一直線にハイトをめがけて走ってきた。それを阻止したのはユーリ、続いてジュディス。

こうして戦闘が始まる。もちろんハイトも参加。

今日のザギの狙いはただ一人ハイトである。ザギは先ほどからハイトばかりをねらっている


「ハイト!お前はさがってろ」

『でも!』

「ハイトか、いい名前だな」

『ユーリの命を狙ってるやつに気安く呼ばれたくない』

「ハイト俺と来い」

「誰が行くかよ!」

『ユーリ!』


ユーリはザギを吹き飛ばしハイトとの距離をとらせた。ハイトの周りには仲間たち。


「ハイトは渡しません」

「あなたじゃ、ハイトがかわいそうだわ」

「ハイトは僕たちの仲間んだよ!」

「あんたなんかに渡すわけないじゃない」

「こんなかわいい子に惹かれるのもわかるけどね」

「ハイトは渡せんのじゃ!」

「じゃんで急にハイトに乗り換えたのかは知らねえけど、とっとと帰りやがれ」

「俺はあきらめないぞハイト!おまえの泣きわめく姿が楽しみだなァ」

『私はあなたに屈しない』

「いつか、壊してやる、まってろよハイト」


ザギはハイトの目を見てそれだけ言い残しこの場から立ち去った。いつもなら決着がつくまでしつこく襲いかかってくるのに今回は珍しくどちらも倒れてはいないのにザギは去った。これは、彼に何かしらの変化があったということなのだろうか?


「ハイト、大丈夫か?」

『え、うん、大丈夫』

「お前をあいつに渡そうなんて思ってるやつここにはいねえよ」


と、ユーリが言えば仲間たちはハイトに笑顔を向ける


『ありがとう』


ハイトがみんなに言う。

ユーリは突然ハイトの近くに寄って彼女をやさしく抱きしめた。


「たとえ誰かが差し出したとしても、俺がさせねえよ」

『ユーリ…』


ユーリが耳元で囁いた言葉はハイトにしか聞こえなかったがそれで十分。ハイトにはその言葉だけで曇りのない安心が訪れ、さっきまでの不安はすべてなくなる。


『またくるのかな』

「そんときゃまた守るよ」

『うん、』

「お前が近くにいないなんて俺が無理」

『珍しく素直だね』

「うっせ」


ユーリはハイトから顔をそらしてはみたが、彼女にはユーリが照れていたのがすぐにわかった。


「その雰囲気の中申し訳ないのだけれど、そろそろ出発しないかしら?」

「そうだな、んじゃまあ、行くか」


奪い合いを
するまでもねえ

(お前は絶対手放さない)


.


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