「亜紀もコードネーム決めないとだよね」
「そうだな」
「つっても難しくねぇ?」
「これといって特徴とかないぞ?」

パレスの入り口で全員の視線が亜紀に集まる。じっと見られるというよりは観察されていようで、それが恥ずかしいな、と亜紀は後ずさる。

「あの、なんかすみません…」

白い仮面の目元には大きな花とリボンの装飾、怪盗服は白い襟に黒いフリルのワンピース、首元の大きなリボンが目立つ。うーん、と頭を捻らせているとパンサーが思いついた様に声をあげる。

「あ!ロリィタとかどう!?」
「は?ロリータ?…いやこいつは別にそういう感じじゃねぇだろ」
「違う!ロリィタファッションとかのロリィタ!」
「同じじゃねぇの…」
「違うし!あ、わかった、じゃあゴスロリは?ゴスロリ!」
「ロリって感じじゃないな」
「だから違うっつの!あーもう!じゃあわかった!ゴシック!これでどう!?」
「ゴシック………確かに衣装………?怪盗服……………?そんな感じ、ありますね………」

スカートを広げて見たり、後ろを見てみたり。パンサーが言う通り確かに、と亜紀は納得した。それに呼びやすい。

「よっし、決まりだな!今日からよろしく頼むぞ、ゴシック!」
「う、うん!よろしくお願いしますっ、」

無事に決まった所で5人は再びパレスに足を踏み入れる。ゴシック以外はもう随分慣れたものだった。







どれくらいまで進んできたのか良くわからないけれどモナが言うにはもうオタカラまですぐらしい。途中の本棚に、隠された様にあった鈴井の写真が貼られた部屋。どれも見るに耐えないものだった。歪んだ欲望。それがどういう意味を表しているかわからないほど子供じゃない。ジョーカーやスカルがどうして連れて行きたがらなかったのか、ゴシックは今になって理解する事ができた。

「お、ついたぞ!」
「え?」

お城の外を抜けて屋根から塔に入る。相変わらず仕掛けがしてあってどうしたものかと思ったけれど、なんとか鍵を持っているシャドウをみつけ仕掛けを解くと、その先にある王座にカモシダがいた。随分憤慨しているようだ。それを傍目にジョーカー達は更にその奥に進む。そこにオタカラがあった。

「オタカラ………??」
「まだ実体化してないな」
「どういうことですか……?」

全員が気になっていた事だ。オタカラと言うくらいだから何かこう、大事な物なのかと思ったら目の前にあるのは変なモヤだ。これがオタカラだとは到底思えない。

「予告状が必要なんだよ」
「予告状?」
「予告状を出すことによって、お前の大事な物を奪うぞって相手に思わせる必要がある」
「なるほど………?」
「オイオイ、本当にわかってるのか?」
「だ、だいじょぶ……」
「まぁ良い、後でゆっくり説明してやる。とりあえずルートは確保出来たし一旦パレスからでようぜ」
「わかった」

今はこれで良いらしい。とりあえずの目的は達成、という事で一度またパレスから出ることになった。










屋上。乱雑に置かれた机の上にモルガナがのると説明をしてくれた。予告状を出すことによってオタカラに変化が起こる事が幾つかあるらしい。オタカラが実体化して盗めるようになること。実体化しているのは持って1日で、チャンスは一度だけ。つまりは翌日までに盗まないと二度と手に入らない。そしてオタカラを奪えばパレスは消滅してそれ以上入る事が出来ないということ。

「失敗は出来ない…って事か」
「そういう事だ」
「それで、その予告状だけど誰が用意する?」
「俺に任せとけ!」
「え…竜司………辞めた方が良いって」
「まぁ安心しろって。アテがあんだ」
「本当に……?」
「竜司一人じゃ心配だから亜紀も一緒についてやってくれないか」
「おい!暁までんな事言うなよ!?」
「え………」

竜司と一緒は、嬉しい気もするけど今は少し複雑だと亜紀は思った。嫌な訳じゃない。でも二人になるの気まずいきもする。ちらっと竜司をみると竜司はあまり気にしていなさそうだった。みんながいるからそういう風に装ってくれているだけかも知れないけど。

「柳原が良いなら付き合ってくんね?それならまぁ暁も杏もモルガナも納得すんだろ?」
「竜司一人よりかは全然良い」
「そう!暁の言う通り」
「うっ………わ、わかりました…それじゃあ、その、一緒に…あの、お願いします…」
「おう!んじゃまた予告状出す時連絡するわ」
「うんっ、」

大丈夫かな、と亜紀は心配になる。失敗出来ないっていうのはもちろん、普通に接する事が出来るのかも。不安そうな亜紀は暁と目が合う。すると暁は口パクでがんばれ、と伝える。

「暁くん…」
「なんだ?」
「なんていうか、その…良い性格、してます、ね……」
「ありがとう」
「ほ、褒めてないです…!」



2016.12.23
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