純血の魔法族の名門たるマルフォイ家の長女であるエミリアのもとへホグワーツへの入学案内がくるのは当然のことだった。エミリアの兄のルシウスもホグワーツの生徒だ。11になったエミリアは、ホグワーツに入学する。だからダイアゴン横丁で学用品を揃え、入学するためにエミリア達はキングスクロス駅に来ていた。 「ホグズミード駅からホグワーツまでは段差が多いから足元に気をつけるのよ。あと、ホグワーツの中も階段が沢山あるから、きちんと気を張って。寮へ向かうにも寮の中にもあるし‥‥ああ、あと、箒に乗る時は本当に気をつけて。貴方は注意力が散漫で‥‥魔法薬学も、下手をすれば怪我をするから気をつけるのよ。あと、本当に、足元に気をつけなさい」 「え、ええと、そんなに足元のことばかり‥‥」 駅のホームでそう忠告する母に戸惑うエミリアだったがそれなりにもっともなのでなんとも言えなかった。エミリアは、鈍臭い。運動神経が致命的に悪いのだ。両親は魔法で補えるからいいと言うが、魔法で補えるかも疑問だとエミリアは自分でも思う。ただ、運動神経が悪いこと以外を他人に劣ることは許されなかったから、エミリアは魔法の知識を自力でいくらか身につけていた。ホグワーツでも、主席次席あたりをとらないと怒られそうだ。そもそも、スリザリンに入らなければならない。エミリアは自分で自分を狡猾だとはとうてい思えないが、代々スリザリンに入っているのだから自分もスリザリンに入るしかないのだ。 「どの寮に入るかはわかっているな」 父が言った。エミリアはええお父様、と頷いた。 「ルシウス、エミリアを任せたぞ」 父は兄にそう言い。兄はわかっています、と頷いてエミリアの頭を撫でた。 「エミリアは狡猾ではないかもしれませんが‥‥優秀ですから、きっと」 エミリアをみて微笑んだ兄にエミリアはいくらかほっとした。学校に兄がいるのは心強かった。 「そろそろだわ。エミリア、レガリアやエリザベスは?」 母がエミリアの友人の名を出した。コンパートメントでエミリアが1人にならないよう連れ立って行けたら、というはからいなのだろうが、生憎エミリアは駅のホームでまだ友達に出会えていなかった。 「見かけてないんです」 「そう‥‥探してる時間はなさそうね。しょうがないわ、ルシウス、エミリアをコンパートメントへ送ってあげて」 ルシウスは頷いた。エミリアは母親と別れのハグをする。 「行ってきますお母様、お父様」 エミリアは2人へ笑顔を向ける。両親は満足そうに笑った。ルシウスも両親ふたりへ挨拶をして、エミリアの前を歩き始める。エミリアはそれに続いて列車に乗った。空いているコンパートメントはなかったが、スリザリンの上級生が2人でいたコンパートメントにルシウスが顔をのぞかせると2人は退いた。 「一緒でもよかったのに」 「あの2人は半純血だ。相応しくない」 エミリアの呟きにそう返したルシウスはエミリアにコンパートメントに入るよう促した。 「ありがとうお兄様。あとでまた」 エミリアは兄に笑顔でそう言った。ルシウスも笑顔で妹にああ、と返すと自分の友人の待つコンパートメントへ向かっていった。 |