第6話
煌々と燃え盛る。なにもかも連れていってしまう。膝をついて無力に吠えることの情けなさと言ったら無い。

高杉晋助と桂小太郎も松陽の門下に加わり、元とは違う場所で松下村塾を開き直していくらかたった頃だった。それはどうにも終わるらしいのだ。
その時が来てしまったらしいと酷く恐ろしかった。ああ結局、貴方はどこにも、行けなかったのだ。貴方はどこへ行ってしまうのだろう。彼に約束を呪いのように押し付けて、私には言葉の一つもくれないまま、宵闇に燃え盛る家屋をぼうと眺めていた。
苦しかったろうか悲しかったろうか。彼にそもそもそういう機能はあるのだろうか。彼のことを何も知らない。けれど誰よりも彼のことを知っているような気もする。それはきっと、体の構造がいくらか彼に似通ったものになっているからかもしれないし、共にいた時間が誰よりも長いからなのかもしれない。
けれどそれが何かということもなくて、私以外はどこまでも彼を追いかけるつもりらしいのだ。
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