愛の言葉を知らないふたり2018年10月サンプル

・こぼれ話まとめ1

康介から見た話にするために作中に入りきらずにこぼれているエピソードなどがあります。
本編との地続き感があるので「愛の言葉を知らないふたり」がお好きでしたら、読んでもらえると嬉しいと思ったりします。



いつもうるさい奴が黙っていると落ち着かない、ということがないby弘文
※本編、海問題(ハロウィンも?)でそこそこ触れている、とある出来事のその後の弘文視点。簡易版。

弘文にとっては飲み会後(飲み会中?)にマンションに拉致られたと思ったら、
その部屋を久道が放火した(助けに来た)という事件。

康介にとっては飲み会で帰りが遅くなる弘文にみそ汁と一緒に出迎えるという、
ものすごく妻っぽいことをしようとしたのに台無しになった日のこと。

奥様的行動をして「オレがいてよかったでしょう?」と言い放つ機会だと思ったのに不発。
自分がいることを弘文に喜んでもらいたがってうずうずしている康介とそんな康介の心情に気づかない弘文。

これはこのエピソードだけで独立した短編として掲載するのではなく、
どこかの話の中に入れる予定です。

加筆修正というか、文章の流用を予定しています。ご了承ください。
(あるいはここだけの話)

この説明でいつの話かピンと来ない方は読まずにページを飛ばしてしまったほうがいいかもしれません。

ハロウィンで触れましたが弘文のアレルギー症状は意識混濁(意識障害、昏睡状態)と握力の低下や全身の倦怠感っていうわりと重度なものですが、危機回避能力がそこそこ高いので酷いことになることは少ないです。

久道が味見(毒見)してから、弘文が食べるってことが学生時代の癖みたいな行動としてあったりします。
ちなみに、じんましんとか、皮膚の湿疹は起こりません。


◆◆◆


 何か口を開こうとする前に「ヒロは悪くない」と久道がつぶやいた。これが言葉とは逆に俺を責めているのなら嫌悪感を覚えるところだ。
が、本気で言っているのだからどうしようもない。
久道は以前から何一つ変わりない。
ただ、俺に嫌われたとか、見限られたといった妄想にとりつかれている。これ自体は、今に始まったことじゃない。昔からずっと、あと一歩の自信や勇気がないヤツだ。

 分かりやすくて分かりにくいから、久道のことを義理の兄貴が背中を押しているつもりで崖の下に突き落とすのだろう。

 あいつの考えがどうであっても、俺にも久道にも結局はプラスになると踏んで、今回の状況を設定した。
その結果が、今にも死にそうな久道だ。それでもあいつは満足だと言うんだろうか。想像してみると言いそうだから笑えない。結果が全てではなかったとしても、一定の水準に達していれば、あいつは満足する。願いのすべてが叶わなくても構わない。ほんのすこしでいいから、自分の希望が叶うなら成功だと思うのだ。

 割に合わないと普通なら思う憎まれ役すら喜んで買って出る。
 自分の理想の世界を実現するための努力だと思っているからだ。
 久道を追いつめたり傷つけたとしても、あいつは久道の兄貴であることから降りない。血が繋がっていないからこそ、自分が久道に関わろうとしなければ繋がりが断ち切れると思っている。

 事実、書類上の繋がり以上のものはない。

 久道は実家に帰ることはないので、二人は顔を合わせない。
 それを思えば、あいつを従業員として会社に入れている俺が久道にとって間違っている気もするのだが、久道とあいつの話と俺とあいつの関係は直接イコールではない。

 人数がいるので、統率する人間がいなければ、トラブルが起きてしまう。今回、率先してあいつにトラブルを起こされた気もするが、久道が理由ならそれも仕方がない。

 あいつの中での優先順位として、弟のための行動は何より優先すべきものになっている。
 その結果として、これ以上になく嫌われていくのだから、いっそ笑えるほどに哀れなので責める気持ちにもなれない。
 それも含めてあいつの想定通りかもしれないが、俺の状況はある意味で自己責任だ。

 ヒナがペットボトルの水とお茶とジュースを並べる。

 久道に口の中に手を突っ込まれて、無理やり吐かせられたので、飲み物は助かるが、準備が良すぎる。ヒナを見ると表情は動かないものの、汗をかいていて、いつも通りなはずもないと笑えた。

 人間不信に陥っていたのか、瞬間的にヒナも一枚噛んでいたのかと疑ってしまった。こういう早合点は恥ずかしい。
 康介に注意をするくせに俺の中にもどうしようもない先入観が存在していた。
 水を半分飲んで、半分頭から浴びる。
 
 口の中の気持ち悪さが軽減する。依然として、体に力が入らない。このまま帰るわけにはいかないので、帰りが遅くなるのではなく帰れないと連絡を入れないといけない。

 康介は馬鹿なので律儀に起きていそうな気がする。帰りが遅くなるので先に寝ていろと言っても聞かない。
 このまま帰って今回のことが露見したら、確実に関わった人間、関わった可能性のある人間を根こそぎ潰すだろう。下鴨康介はそういう人間だ。綺麗で静かな見た目を裏切るように苛烈で過激。

 感情の起伏がおそろしく激しいくせに他人を攻撃するときはゾッとするほど、冷静に突き刺す。

 今回のように健康被害が俺に出てしまった、その状況を許すわけがない。
 自分に何かあっても気にしないくせに俺に危害を加える相手に対して康介は攻撃性が強すぎる。
 過剰防衛はいらない恨みを買うだけだ。そう言っても馬鹿なので聞いていない。
 後々、どこかで損をする。
 俺が割を食うならいいが、康介がやり玉に挙げられる可能性が強い。
 考えずに突っ走って、大怪我されたらたまらない。

 水では足りないと思ったのか、久道がお茶のフタを外して渡しきた。ありがたく飲みながら、サイレンの音を聞く。
 死人が居ないことを祈っていると久道は「みんな死ねばいい」と毒づく。昔から何も変わってない幼なじみと腐れ縁は切れない。
それは何だかんだで嬉しいものだ。
昔からの時間の流れをしみじみと感じる。
こんな状況で場違いな感想だが、久道の兄貴であるあいつがオレに、こう思って欲しいと願っている気がする。
 久道はやばい女に手を出して家の中に引きこもっていると言っていた。実際はヤバイ男にも手を出して逃げている最中だとあいつは言っていた。というよりも、久道のやりかたではきっと逃げ切れないか、あらたなヤバイ人間を発掘するだけだ。
 どこに行っても人間を見る目がないので、貧乏くじばかり引く。

 幼なじみは伊達じゃない。久道の口から説明されなくてもわかる。

「久道、うち来るか?」





・長男中心まとめ1

ちなみに未来編みたいな感じで『長男の幸福』のあとには『次男の納得』『長女の不安』『次女の絶望』『彼らの日常』と続けようと思っていますが次女の心情を書くと作品としてエンドマークな感覚になるかと思って『次男の納得』までしか掲載していません。

今はあまりこだわりがなくなったので、そのうち『長女の不安』『次女の絶望』『彼らの日常』も掲載しようと思います。


長男の幸福【初恋?】


 下鴨鈴之介という俺を構成する要素はきっと下鴨家と呼ばれる場所が八割だ。
 十割だと言えないのは跡取りである人間として恥ずかしいのかもしれないけれど、コウちゃんが俺のことをヒロくんに似ていると言うので、下鴨が主成分であっても全部ではない。それは不思議と誇らしい。継続して守らなければならない習わしを無意識に俺は壊してしまっているかもしれない。
 
 だとしても、コウちゃんが笑っているのなら何も間違いではない気がしてくる。
 俺の中に完全なる指針があるとしたなら、それは下鴨から教えられたあれこれではなくコウちゃんそのものだ。
 コウちゃんが幸せでないのなら俺が生きている意味すらないと思える。下鴨という家を維持しなければならないというモチベーションが持てない。分家や関連企業も含めて膨大な人の人生を背負っていくのだが、俺は彼らのことを自分の家族とは思えない。血のつながりの浅い深いなど関係なく、俺の行動はコウちゃんのためにあると思えないと頑張れない。
 
 ヒロくんのように社員のことを考える人間にはどうもなれない。コウちゃんや兄弟たちを犠牲にしなければ下鴨家が立ちいかないというなら、家として滅ぶべきだと思う。弘子が女の子だから下鴨家のためにお見合い結婚した方がいいのかと聞いてきたが、ゾッとした。
 
 弘子が好きになった相手が下鴨にとって有用な人物なら協力体制を申し出ることがあるかもしれないが、下鴨のために弘子が望まない相手と結婚するなど本末転倒だ。自分のことを考えればお見合い結婚を悪いとは言わないけれど、弘子は型にハマる生活がストレスになるだろう。我慢が出来たとしても我慢などさせたくない。
 
 これはコウちゃんに対する気持ちと同じだ。
 幸せであって欲しい。
 我慢などせず、苦しむことなどなく。
 ただただ、幸せであって欲しい。





愛の言葉を知らないふたり 2018年10月【6つ記事分】
・こぼれ話1   (24350文字)
・下鴨家まとめ2 (11615文字)
・長女中心まとめ2(11090文字)
・2018年10月 書き下ろし (13336文字)
・下鴨家まとめ3 (11169文字)
・長男中心まとめ1 (10502文字)
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