愛の言葉を知らないふたり2018年9月サンプル

・康介中心まとめ1

個人的に一番書きたかったものが【IF:木鳴弘文と下鴨康介が出会わなかった世界】だったりします。

タイトルの内容だけの短いSSなのでサンプルはありません。
これは読みたい人だけにソッと発表したかった話になります。
二人が出会わなかったIFを念頭に置いて、二人が出会った本編やおまけSSを読むと味わいが違うかなあと思っております。


サンプルとしての抜粋は以下


弘文と康介【康介○○歳、事後】

「三十のおっさんを抱くとか弘文、変態じゃねえかっ」
「おっさんな見た目になってからもう一度言ってみろ。抱いてやるよ」

 
 なんてことを弘文に言われていたオレもわりと年齢を感じさせるところまできた気がする。
 でも、男の精力って特に落ちない。弘文だけじゃなくて、オレのほうも、べつに勃ちが悪くなるということもない。
 子宮と一緒で精巣も元気なのが下鴨なんだろうか。
 
 ベッドの中で物思いにふけっているオレは、弘文にからかわれそうなところだ。
 それなのに心構えをしている時は意外と弘文は触れてこない。
 今は何も言えないっていう時に「なに考えてんだ」と聞いてくる。そのくせ、オレが答えを用意している時は無言。
 根本的にオレと弘文は噛み合ってない。でも、だからこそ必要なんだと思う。
 オレはきっとオレ自身をわざわざ必要としない。
 オレと同じ姿の人間。
 オレと同じ考え方の人間。
 そういうのは、オレだけで十分だ。
 
 こういうことは、弘文に昔何度となく言われた気がする。





・康介中心まとめ2


弓鷹視点【次男は見た下鴨康介の真実】

 息子の目から見てもコウちゃんは贔屓目じゃなくスゴイ。
 時間つぶしに入った飴細工教室で涼しい顔で次々と美しく躍動的な動物たちを作って見せた。
 その教室の先生が作り方の説明をしているのをまるっと無視して独自の方法で。
 もちろん、一同騒然となるのだがコウちゃんはもう淡々とイルカにペンギンにアシカという水族館の人気者を作り上げた。
 誰でも簡単に出来ますなんていう金魚にはまったく興味がない。
 
 もともとコウちゃんは実家に池があるせいで金魚よりも鯉が好きだ。
 公園でも深弘とずっと鯉を見ていた。
 必ず金魚を作ると知っていたらそもそも飴細工教室に入ったりしなかった。
 受け付けではお好きなものを作れますなんて売り文句を口にしていたから、それならちょうどいい時間つぶしだと参加したのだ。
 
 
 ちなみにヒロくんは深弘と陶芸教室に行っており、兄貴と弘子はガラス細工の教室だ。
 
 こうなった原因はテレビで流れるそば打ちを見て「土いじりしに行きたい」とヒロくんが言ったから。





弓鷹視点【次男は見た下鴨康介の真実2】

 息子の目から見て冗談じゃなくヒロくんは酷い。でも、俺が間違っている気がして、酷いと声を上げるタイミングが難しい。たとえ俺が間違った批判をしたとしてもヒロくんはこちらを責め返したりはしない。コウちゃんに対しては感情的に言い返したり、頬っぺたをつねったりする暴力に訴えても俺には少し困った顔をするだけだ。





・弘文×康介中心1
康介と弘文のそれぞれの視点で地の文ありの短編2作。
本編では控えめにしている暗くなっている時期の康介の話なので、個人的に好きです。


【加筆修正】わがまま康介の戸惑いと空回り
※弘子妊娠中のじめじめ康介。


 鈴之介と弓鷹がつらいのかと聞くようにオレを見る。
 顔立ちが弘文に似ているからか、和む部分がある。それと同時に居た堪れなくなる。つい、先日すべてを捨てて逃げようとしたからだろうか。
 
 久道さんに相談してどこかに行こうと思っていたオレを弘文は迎えに来てくれた。
 弘文の反応がどこかで分かっていたのかもしれない。
 オレのお腹の中にいるのは弘文の子だ。
 勝手に連れ去ることを弘文が許すわけがない。
 オレを迎えに来たわけじゃない。
 
 喜びすぎないようにと心にブレーキをかける。
 
 
 子供たちに対して何も思わないわけじゃない。
 ただオレが居なくても育つし、困ることはないだろうと思っている。
 下鴨が、木鳴が、オレが居る居ないに関わらず、きちんと面倒を見てくれるだろう。
 オレが居る意味が分からない。
 弘文に負担をかける以外の意味が自分に見つけられない。
 本当はお腹の子を弘文が喜ぶのは分かっていた。
 弘文は弘文であるのだから、自分が作った子供を喜ばないわけがない。
 
 箸からお皿、コップもすべて、家の中にある日常的に使うものは弘文が作っている。正確には作っていたものを持ってきた。
 
 木彫りからガラスから陶器から、様々な技法によって生活に密着する品物を作り上げては人知れず溜めこんでいた。弘文の考えは分からない。オレが居なければ木鳴の蔵の中で置き去りにされていたとおばあさまが言っていた。弘文にとってオレを含めていらないもので家の中はあふれているんだろうか。
 
 蔵の中にあったのなら、自分の手元になくても構わない、どうでもいいものということだ。
 弘文が作ったものだから、弘文の温度を感じて嬉しいはずなのにさびしい。
 贅沢になったのかもしれない。弘文が木を削って作った動物園を眺めているだけで時間を潰せた昔が遠すぎる。





【加筆修正】わがまま康介の戸惑いと空回りなど知らない弘文
※弘子妊娠中の康介に対する弘文。


 康介のことを理解しようと思うのは時間の無駄だ。意地悪でもなく、これは事実。
 俺がいくら気を回そうとも、それとは関係のない部分で機嫌を良くしたり逆に機嫌を悪くする。
 最終的に康介が何を言おうと、何をしようと、俺が居ればいいのだろう。
 俺のことなどいらないと口にする言葉が嘘でしかないのは行動が証明している。
 
「おかえり、弘文」
 
 気に入らない人間を出迎えるような真似を康介がするはずない。
 俺が手洗いうがいをして着替えるまで大人しく待っている。
 こういうことも俺が嫌いならするわけがないことだ。



愛の言葉を知らないふたり 2018年9月【6つ記事分】
・長女中心まとめ1 (12500文字)
・康介中心まとめ1 (13397文字)
・康介中心まとめ2 (12559文字)
・康介中心まとめ3 (15021文字)
・弘文×康介中心1 (11634文字)
・下鴨家まとめ1  (15948文字)
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