愛を届けに来ました | ナノ



愛を届けに来ました


 愛を箱に詰めて、貴方に届けましょう。


 もうすぐ日が変わる深夜。
 しんとしたマンションに響く自分の足音を気にしながら、とある部屋に急ぐ僕。

 目当ての部屋の前に着いて、手に持った小さな紙袋の中身を確かめ、おそるおそるチャイムを鳴らす。

 確か今日は、お姉さんは彼氏と旅行で今日から居ないと言っていたから、家に居るのは彼だけの筈だ。


 しばらく待っているとカチャリとドアが開かれる。
 ドアの向こうにはおもいっきり不機嫌な顔。


「何の用だ」


 ああ、声まで不機嫌。

 深夜っていうのもあるのだろうけど、今日置いてきぼりして帰ったのをまだ根に持ってるんだろうな〜

 そう思いながら、彼、美鶴を見やる。


「何の用だと聞いてるんだ、亘」


 なかなか用件を言わない僕に苛々していく美鶴。
 僕は携帯のディスプレイの時計を見て、日付が変わった事を確認する。
 そして美鶴にニッコリ笑いかけ、


「愛を届けに来ました」


と、持ってた紙袋を押し付けた。


「…愛?」


「そ、愛。だって今日はバレンタインだろ?」


 さっき日付が変わったから、今日は2月14日。


「中身はチョコだよ。しかも僕の手作り」


 中身を確かめる美鶴を見てそう言えば、美鶴は惚けた様な顔をして僕を見た。


「あ、もしかして、もうチョコはいらない?女子からチョコ攻めあってたし」


 今日が土曜日で学校休みだから、1日早く渡そうと女子達が我先にと美鶴の所に押し掛けてたもんな。


「いや、チョコは全部断った。」


「へー、よく女子達諦めたな」


「…まあな。ここじゃ何だから、部屋に入れ」


 そう言って美鶴は僕を部屋に入れてくれた。


 部屋に入りソファーに座れば、美鶴は僕に抱き付いてきた。


「もしかしてこれ作るために僕を置いて帰ったのか?」


「あー…まあ、うん。お前待ってたら、間に合わないなぁって思って」


 下拵えは出来てたとはいえ、仕上がりまで時間がかかりそうだったし。
 実際出来上がったのは、ここに来る一時間前だったけど。


「やっぱり、好きな人には誰よりも一番に愛を伝えたいじゃん」


「っ」


「美鶴?」


 顔を見ようとすれば、更に強まる腕の力。


「照れてる?」


「…てない!」


 視界に入る、耳は赤い。

 おもいっきり照れてるじゃん。


「…じゃあ、嬉しい?」


「…ああ」


「そか」


 質問を変えれば、美鶴は頬を擦り寄せて、答えてくれた。
 嬉しいって思ってくれるなら、作ったかいがあったな。


 僕もギュッと背中に回した腕に力を込める。
 そしたらうっとりした様に美鶴が僕の髪に顔を寄せた。


「亘の髪、チョコの匂いがする」


「あ、匂いついてる?もう台所、チョコの匂いが充満しててさーいちお換気したけど」


「美味しそう」


「は?」


「食べて良いか?」


「え?」


 とさりとソファーに押し倒される。


「え?え?」


「いただきます」


 そうして僕は訳が分からぬまま、美鶴に食べられました。


 もう金輪際するもんかっ!って思ったけど、次の日、僕の作ったチョコを食べて美味しいって言ってくれたから、また来年もやろうかな?と思ったのは美鶴には秘密だ。


 end




貰いもの






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