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記憶の刷込
(美形×平凡/ヤンデレ)

22

何気ない動作から記憶が戻っている事に気付かれた。
何を言い訳しようと、きっと、恭君には通用しない。俺は素直に戻ったよと伝えた。

「そうか、それは良かったな」

ただ一言、そう返してきた。
恭君にペンを返して俺は今までの事を聞こうか悩んだ。それに、記憶を失くした後と同じ様にこれからも接してくれるのかも気になった。だって、俺達は接点がなかったんだ。なのに、どうして恋人なんて嘘を、いや、聞かなくても、分かるけれども。

「色々、聞きたい事があるんだろう。・・・俺は嘘をついてでも、お前に認識して貰いたかったと言えばいいのだろうか。このまま、記憶が戻らなければずっと傍にいれると思ったんだ」
「記憶が戻ったら、離れると思った?」
「ああ・・・俺達は友達未満の、関係だったからな。気持ち悪いだろう。男から恋人だと言われ、信じて過ごした筈が、蓋を開けてみればお互い名前すら認識しているかも分からない他人同士だったってな」
「そう思っていたら、記憶が戻ったその日から離れてるよ」

恭君の服の裾を掴み、見つめた。俺はあの人の事が大好きなのに、恭君のことが頭の中から離れない。どうしても、チラついてしまう。恭君は、俺の中で大きな存在になっていたんだ。

俺は記憶を失くす前に、あの人と会う約束をしていた。そして、告白しようと思っていた。
あの日、あの場所で。あの人の元に行こうと向かっていた最中、事故に巻き込まれた。耳を劈くようなクラクションの音に一瞬、反応が遅れた。目の前には、大きなトラック、そして、その後方にはーーーーー。

「あ、あれ、俺、そうだ。もっと、大事なことを、わ、忘れて・・・っ」
「お、おい!青葉、しっかりしろ!青葉っ!!」

体が震えた。吐気もして、思わず口元をおさえた。
事故の内容が脳裏に、鮮明に蘇ってきていた。

あれは、左へハンドルを切ったトラックに運悪く巻き込まれた事故だった。俺が事故に遭う前に、事故に遭った人が居たんだ。トラックが目の前に来ていたのに、反応が遅くなったのはクラクションの音だけじゃない。トラックの傍で、宙に待っていた人に視線が行っていたからだ。



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