MAIN | ナノ
※現パロ

 白い息がきりりと澄み渡る夜空に伸びていく。 寒くなったなあ。少し前を歩く寒々とした坊主頭。この時期になると着膨れして、ずんぐりむっくりしている。小柄でぱつぱつ。なんだかちょっと面白い。ポケットに手を突っ込んで歩く、彼の腕の隙間にずぼっと手を差し入れると、ちらと目線だけ寄越した。

「はじめくんはクリスマスプレゼントは何が欲しいのかな」
「休み」
「夢がない!有給申請してくださぁい」
「通らんだろ」
「たしかに、第七課は忙しそうですしね」

 彼の部署は年末はプロジェクトも大詰めなので「クリスマスなので休みます」なんてふざけたことは言っていられないだろう。彼の上司のことだし、もしかしたら面白がって承認されるかもしれないが、休み明けに出勤した際どんな恐ろしい目に合うことやら……。クリスマスに外食するくらいは許されるだろうかとも考えたが、世のカップルが楽しそうに食事している中彼の残業が終わるのをひとりレストランで待てる強い精神力は私にはない。

「ビーフシチューとか作っといたらいいですか」
「ああ、」
「帰ってきたらチキンステーキ焼きますよ。胸肉で」
「もも肉でいいだろ、クリスマスくらい」
「最近忙しくて筋トレできてないってしょんぼりしてたくせに」
「しょんぼりはしてない。筋トレに限らず体を動かした方がストレス発散になるだけだ」

 自分のお腹とかお尻を撫でながら「運動不足だな……」ってどんよりしてたのを、私は知っている。十分ムキムキだと思うのだけど、彼の中では満足いかないようだった。プレゼントはランニングウェアとかスマートトラッカーとかがいいんだろうか。地味にタオルマフラーとか五本指ソックスとかもいいかもしれない。なんだかおじさんくさいな。

「街路樹が綺麗ですね」
「電飾巻いたりして木にダメージはないのか」
「どうなんでしょう。最近のLEDだとあんまり影響ないんじゃないですか。それにしても風情ないですね」
「光ってるから街の防犯には役立つ」
「カップルの気分を盛り上げるのにも役に立ちますよ!」
「特に盛り上がりはしないな。役に立ってない」

 私も誰かさんの何気ない疑問を聞いたら、うわついた気分も鎮静化されました。普段はなんてことない街路樹もこの時期になると電飾を身に纏ってきらめく。子供の頃はクリスマスが近づくとウキウキワクワクしていたなと懐かしく思う。

「転ぶなよ」

 彼の腕に指先だけをちょんと添えてぼんやり街路樹を見上げながら歩いて行く。軽く手を払われたかと思えば手をつかまれて「自転車」とだけ言って引き寄せられた。危うく前方不注意でぶつかるところだった、と「ありがとうございます」と街路樹から彼に視線をうつす。すると思ったよりも近くに顔がある。とんっと少しカサついた熱を帯びた唇が一瞬くっついてすぐに離れていった。

「盛り上がっちゃったんですか」
「そんなことはない」
「ふうん」
「違う」

 違わないと思う。ニマニマしていたら「違う」とまた念押しされた。